このアルバムに言葉はいらない

Sigur Rós(シガー・ロス)はアイスランドを代表するバンドです。

1994年、レイキャヴィークにて結成。




わたしが一番好きなアルバムは、こちらの『 (  ) 』

Untitled(無題)などと呼ばれています。

2002年にリリースされた、三番目のアルバムです。

なんと昨年の2022年、このアルバムが20周年記念としてリマスター盤がリリースされました!!



『(  )』は、8つの無題のトラックによって構成されています。

8つの楽曲は36秒間の無音によって前半と後半に分けられ、レコードの表面・裏面をイメージさせます。


前半4つはより明るく、後半4つはより憂鬱。

全体にギターよりもキーボードに重点が置かれ、ヴォーカルであるJónsi(ヨンシー)の中性的な歌声がサンプリングされています。


歌詞が聴き取れないからって、臆病になる必要はありません。

ヨンシーは、意味のない単語と音節で構成された人工言語"Vonlenska"(Hopelandic)で歌っているのです!!

アイスランド国内のファンにとっても、日本人のファンにとっても、全く同じ意味不明の歌なんです。

シガー・ロスの公式発表によると、「You xylo。You xylo no fi lo。You so ..」という11音節で1つのフレーズから構成されていて、このフレーズの繰り返しやアレンジが歌われているそうです。

この言語は「音楽にフィットする意味不明なボーカルの形」だそうで、ヴォカリーズと同じと考えれば分かりやすいでしょう。

アルバム『Von』と『Takk ...』の一部でもこの言語で歌われています。



シガー・ロスの音楽的特色は、このヨンシーの歌声と、ヴァイオリンの弓でエレキギターを弾く独特な奏法、幻想的なキーボード。

さらに、シガー・ロスの音楽には欠かせないのは、弦楽アンサンブルであるAmiina(アミナ)の存在です。


アミナの演奏者は、María Huld Markan(ヴァイオリン)、Edda Rún Ólafsdóttirviolin(ヴァイオリン)、Ólöf Júlía Kjartansdóttir(ヴィオラ)、Sólrún Sumarliðadóttir(チェロ)。 

(現在は男性2人が加わり男女混成6人組となっていますが、2002年当時は女性だけでした)


男性バンドであるシガー・ロスと、女性アンサンブルであるアミナの合奏によって、彼らの奥深い調和的な音楽が成り立っているのです。



このアルバムでわたしが最も好きな曲は、最初のUntitled #1("Vaka")です。 

澄んだ美しいピアノのメロディーに、静謐な弦楽器とオルガンの通奏低音が重なり、電子音とギターのノイズが浮遊感を与え、ヨンシーの煌めくような高音が調和します。


この楽曲のミュージックビデオは、2003年にMTVヨーロッパ・ミュージック・アワードの最優秀ビデオ賞を受賞しました。 



『 (  ) 』は無題のアルバムであり、トラックも全て無題で、聴き手が自分で曲名を思い浮かべることが出来ます。 

このような手法は、モンドリアンのコンポジションなど抽象絵画を思い起こさせますね。 

またアルバムの前半と後半を分ける36秒間の無音は、ジョン・ケージの「4分33秒」を思い起こさせます。

本盤はグラミー賞にノミネートされるなど、その芸術性を高く評価されました。



『(  )』の楽曲は、映画やドラマ、舞台のBGMとしてたびたび使われているので、思いがけないところで耳にすると嬉しくなりますね!


2023/01/30 20:57

成瀬川さんへ

成瀬川さん、こんにちは!


うわー、ミッシェルのインディーズ盤のお写真を見せてくださり、どうもありがとうございます!!

ギタリストがアベさんじゃない!? ということにまずびっくりしました。

こういうのって、本当にうらやましいですよ^^

後追いのファンにとっては、時間というのは越えられない壁ですからね。


成瀬川さんがバンド活動されていたころの下北沢での貴重なエピソードも分かち合ってくださり、とてもうれしいです!

『ぼっち・ざ・ろっく』については夫が見ていましたので、どんな場面だったのか聞いてみますね。


ご紹介いただいたフィッシュマンズ、全部聴いてみましたよ♪

初めて聴いたのですが、特に「MELODY」と「LONG SEASON」が好きです。

「LONG SEASON」は実験的な曲と言いますか、芸術性を追求した曲ですよね。

キラキラした音や水の音が印象的です。

個人的には、20:54あたりから最後までのメロディが良いなぁと思いました^^


「LONG SEASON」を聴いていて思い出したのが、Sigur Rósのアルバム『 ( ) 』(←無題)です。

わたしはもともとSigur Rósの音楽が大好きなんですよ。

美しいピアノや弦楽器のメロディーに、電子音とギターのノイズが独特な浮遊感を与えていて、ヨンシーの中性的な高音がきらきら輝いていて……。


Sigur Rós - Untitled #1("Vaka")


成瀬川さんがシガーロスをお好きかどうかわからないですが、フィッシュマンズの「LONG SEASON」をお好きなら、気に入ってくださるかなぁと思ったので、リンクを貼っておきますね。


そうそう、The Birthdayと言えば、「ピアノ」が一番好きですよ。

この楽曲もシガーロスの「無題」やフィッシュマンズの「LONG SEASON」と雰囲気が似ているかなぁ。

自分が好きになる曲なので、どこかしらに共通するものがあるのかも。


The Birthday - ピアノ


この「ピアノ」を初めて耳にした時、ミッシェルの最後のアルバム『SABRINA NO HEAVEN』のフィナーレを飾る曲「夜が終わる」を思い出して、涙が出ました。


「夜が終わる」は、ひとつ前のアルバム『SABRINA HEAVEN』の「NIGHT IS OVER」のピアノ編曲版なんですよね。

ちなみに、「NIGHT IS OVER」に歌を入れたバージョンが「Girl Friend」ですが、この曲を若き日の成瀬川さんが女性にプレゼントしたというエピソードを伺って、初々しいなぁ素敵だなぁと、ほれぼれしたのでした^^


話戻って、「夜が終わる」という曲は、メンバーがひとりひとり舞台から退場していって、最後は誰もいなくなるような感じがします。

ああ解散しちゃったんだなぁとしみじみ思えて、わたしにとっては今あらためて聴いても、泣けてくる曲なのです。



解散後にチバさんがブランキーの照井さんらと結成したバンド「ROSSO」の曲では、「1000のタンバリン」が好きでした。

でも、聴いていてやはり物足りなさと言いますか、どうしても違和感があって、やはりアベさんのギターが聴きたいと思ってしまったのでした。

アベさんが2009年に亡くなってしまって、その当時は本当に悲しかったです。



成瀬川さん、思い出深い、なつかしい音楽についてたくさんお話してくださり、どうもありがとうございます^^

とっても楽しかったです!!

今度は、「相対性理論」とやくしまるえつこさんについてお話しましょうね!!!


2023/01/28 19:45

夜分遅くに失礼いたします!! 成瀬川るるせです。

mikaさんがミッシェルガンエレファントや椎名林檎を好きということで。

もしよろしければ、フィッシュマンズのこのよっつの曲(長いので時間があるときに)聴いていただけたら、フィッシュマンズの永遠のファンである僕が嬉しいのでリンクを張りました。

椎名林檎が好きなら(というか林檎ちゃんが好きだとどこかに書いていました)、きっと好きなんじゃないかな、と。



Fishmans いかれたBaby

https://youtu.be/h_yaDmw_9rg



Fishmans WALKING IN THE RHYTHM

https://youtu.be/Bt9V_aQ07Xw



Fishmans MELODY

https://youtu.be/1SB1xU0qtLI



Fishmans - Long Season | LIVE 1998.12.28 @赤坂BLITZ

https://youtu.be/wEGR_PHKK9g



ジャンルは『ダブ・ミュージック』と呼ばれるものです。もともとダブミュージックという言葉を使い始めたのはサイバーパンクSF作家のウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』が最初じゃなかったかな、と僕は思うのですが、そのダブミュージックの、最高峰のバンドがフィッシュマンズでした。

歌詞だと特に『いかれたBaby』と『MELODY』は、(男性だと、かもしれませんが)泣き出したくなるような叙情的でいて、簡潔な言葉で成り立っています。サウンドは、ブリリアントグリーンあたりが引き継いだかな、という感じではありますが、それでも唯一無二です!!


本当は僕の『早退届』あたりに埋め込んだ方が良いのですが、なにぶん公式の動画というわけでもないし、mikaさんはじめ、しゃべログで交流している方たちには刺さる音楽なのではないかな、と思い、mikaさんのしゃべログにリンクを張ることにしました。フィッシュマンズは世田谷区を代表するバンドです!!

と、言っても好き嫌いってありますので、途中で止めてもオーケーです。格好良いかというと、「たよりない」感じですが、そこも含め、聴いていただければな、と。でわでわ。


追記:アニメ『ゆるキャン』のOPでテントが空中を浮いてるのはたぶんフィッシュマンズの代表アルバムの一枚のタイトルが『空中キャンプ』だからです。

2023/01/27 03:00

本当にあったかも? 巨大猫の伝説

アイスランドに伝わるユール猫(クリスマス猫)の話題のつづきとして、ロシアに伝わるバユン猫の民話について書きました。


巨大猫の民話①(バユン猫)

巨大猫の民話②(学者猫)


話題があちこちに飛ぶと分かりにくくなるかなと思って書かなかったのですが、巨大猫伝説と言えば欠かせないのがキャスパリーグ!!


中世のアーサー王や大魔術師マーリン(メルラン)の伝説に登場する巨大な猫、Cath Palug(キャスパリーグ)です。

Chapalu(シャパリュ)とも呼ばれています。


アーサー王たちがこの悪魔猫と死闘を繰り広げるんですよ。

え、伝説の騎士が倒すのってドラゴンじゃないのって思いますよね?


ドラゴン退治伝説と同じように、巨大猫退治伝説が伝承されているのが面白いです。

現代のライトノベルやゲームなどでも、ドランゴンスレイヤーは数多く登場しますが、猫殺しの英雄はまずいないですよね。


フランスには怪猫退治伝説が残る土地があり、そこでは「猫山」や「猫首峠」、「猫牙峰」などの地名が今も使われているそうです。



古代の神話には人身獅子頭の神々が登場するので、その神々が格下げされ、悪魔化したものとも考えられますよね。



また、各地の民話に登場する人食いの巨大猫は、オオヤマネコ(Eurasian lynx)や、1世紀頃に絶滅したとされるヨーロッパライオンがモデルなのではないかと推測します。


チャンパーワットの人食いトラ(1900年頃~1907年に1頭のベンガルトラによって436人が犠牲となった事件)

ツァボの人食いライオン(1898年に2頭のライオンによって9カ月で約35人が犠牲となった事件)

パナールの人食いヒョウ(1900年頃~1910年に1頭のヒョウによって400人以上が犠牲になったと言われる事件で、チャンパーワットのトラを討伐したのと同じ狩猟家がパナールのヒョウの討伐にも成功した)


ネコ科の大型動物による獣害事件というのは、19世紀末から20世紀初頭に、すさまじい被害の記録が残されています。(いやな記録ですが、ギネスに登録されています)

これら実際の事件を基にして、小説や映画もつくられています。


植民地時代(三つの事件は全てイギリスの海外領土で起きたもの)に獣害事件が特に多く記録されているのは、開拓で森を焼いたり、切り拓いたりして、道路や鉄道建設を推し進めたことで、野生動物と人間が接触する機会が増えたからだと言われています。


伝説やおとぎ話が伝える人食い巨大猫の恐ろしさというのは、当時の人びとにとって、本物の恐怖だったのでしょうね。


2023/01/25 21:56

有隣堂のブックカバー

R.B.ブッコロー柄の限定文庫カバーをお目当てに、有隣堂へ行ってきました。

ブッコローちゃんのぬいぐるみ(16センチ)を発見!


ブッコローぬいぐるみを抱えて意気揚々とレジへ向かったわたしですが、本命のブッコロー柄の文庫カバーは品切れ!!!

どこからどう見ても、ブッコロー目当てで文庫本を買った女なのに……。



昨年、有隣堂に足を運んだときにキーチェーン付きぬいぐるみ(8センチ)をお迎えしていたので、今回のぬいぐるみと一緒に並べてみると、親子のミミズクみたいですね。


文庫カバーは「OKゴールデンリバー」なる紙を使っているそうで、たしかにしっとりとした良い手触りです。

中身は、村上春樹の『納屋を焼く』などが収録されている短編集で、夫にプレゼントしました。

読んでくれるかな……?



有隣堂と言えば、「【日本で買える】台湾食品の世界 」で紹介されていた「冬筍餅」、これはおいしいですよ!

ブッコローちゃんが「ハマる」味と言っていたのが、分かります。



「有隣堂しか知らない世界」の「台湾食品」回を見てから、誠品生活日本橋にちょくちょく行くようになったのですが、この冬筍餅は人気商品なのか、店頭に並んでいないことがしばしば。

先日は珍しく入荷していたので、買うことができました。


誠品生活日本橋が入っているコレド室町テラスの2階には「王德傳」という台湾茶のティーサロンもあります。

専門の茶芸師さんが目の前でお茶を淹れてくれて、とっても贅沢なひとときを味わえます。


お土産に凍頂烏龍を買って帰りました。

家で淹れてみましたが、お手軽なティーバッグでも華やかな香りをじゅうぶん楽しめました。


2023/01/21 22:10

木工家具

昨年7月頃に現在の住居に引っ越してから、ずっとレンタルのダイニングテーブルを使っていました。


最近は、家具・家電のレンタル(サブスク)が充実しているので、買おうかどうか迷った時など、実際に使ってから決めることができるので、便利な時代になったものです。


それで、レンタルしたものとほぼ同じモデルのテーブルを注文して、レンタル品は返却したのですが……。



注文したテーブルが届くまで、この状態で約2週間ほど暮らすことに。

いやー、イスしかないダイニングって、シュールですね。

このイスは、引っ越して真っ先に夫が購入したこだわりの品です。


そしてついに、新しいテーブルが届きました。



イスだけの生活があまりに不便だったので、ふつうにイスに座ってテーブルでごはんが食べられるというのは良いものだなぁとしみじみ思いました。


注文した夫の話によると、この無垢材のテーブルは国内の家具工房で作られたものだそうです。

受注生産で、注文が入ってから作るのだとか。

今どき珍しいですよね。



だいぶ前の話ですが、読書会の先輩が「木工家具職人に、俺はなる!」と突然言い出し、会社を辞めて、昔ながらの工房に弟子入りした出来事がありました。


当然のことながら、先輩の奥さんは大反対。

お子さんもまだ小さかったですし、奥さんのお気持ちも分からないではないです。

最後にお会いした時の、べろべろに酔っ払って号泣していた先輩の姿を、今でも鮮明に覚えています。

あのときは、ひたすらイスをみがいていると言っていたような。


イスというのは、「イス沼」というスラングがあるほど奥が深い、ファンが多い世界なので、イスを磨くというのも大事な職人のお仕事です。

(うちの夫もいつの間にか『Yチェアの秘密』なる本を読んでいるし、イス沼に片足突っ込もうとしているかも……)


その後、やはりと言いますか、先輩は離婚してしまったのでした。

自分の夢を追いかけるって難しいものですね。


職人さんがひとつひとつ手作りした木工家具を見ると、先輩は元気にやっているかな、と思い出したりします。


2023/01/11 23:47

2023年はうさぎ年!

#私の本棚



『ウサビッチ』(富岡聡監督)というアニメのキャラクター・グッズです。


お話の舞台は1961年8月のソ連

囚人であるプーチンとキレネンコが主人公のシチュエーション・コメディ。

1話あたり90秒というスピード展開で、台詞もほとんど無いサイレント・アニメーションです。


上の写真に撮ったプーチンとキレネンコのフィギュア、よく見てください。

二羽が手に持っている名前の看板に、違和感がありますよね。


キレネンコは「КИРЕНЕНКО」とキリル文字で書いているのに、プーチンは「PUTIN」と英語で書いています。

どうしてプーチンは「ПУТИН」と書かなかったのでしょうね?



シーズン1(2006年)ではプーチンとキレネンコの退屈なラーゲリ生活が描かれ、最終話でキレネンコが脱獄。プーチンもついて行くことに……!

キレネンコは元マフィアのボス、プーチンは善良な労働者という設定です。


シーズン2(2007年-08年)では脱獄したキレネンコとプーチンの逃避行が描かれ、二羽を追跡するミリツィア(民警)とのカーチェイスが見どころ。


この逃避行でプーチンとキレネンコが乗っている車は、モスクビッチ407をモデルとしています。

モスクビッチ407は、1958年から1964年までソ連のモスクビッチ社で製造されていた実在の車なのです!

モスクビッチはМосквич(ロシア語らしく発音するとマスクヴィチ)、「モスクワっ子」というような意味です。



日本のアニメなのですが、ソ連時代のカルチャーが随所に盛り込まれているのが面白くて、放映当時は夢中になって観ていました。

シーズン1開始から今年でもう17年になるんだなぁ、懐かしいですね。


マフィアのボスだったキレネンコを裏切り、組織を乗っ取った悪党と対決するシーズン3も面白いですよ。


2023/01/09 22:49

ホーリー・ニャイト

我が家のクリスマスらしいもの。



猫さんたちがクリスマス・パーティーをする絵柄がかわいいですよね!

これ、実はきものの帯(京袋帯)なのです。

「WA・KKA」というブランド名で活動している、京都の遊禅庵さんのお品です。


この帯は、お太鼓(背中側)の柄だけでなく、前柄(お腹側)も二種類あって、とても凝っているのです!

手先は二つ折りにして巻くので、右巻きにするか左巻きにするかで、出す柄を自分で選べる仕様です。



WA・KKAさんは、こういう普段づかい用の楽しい帯をたくさん作っておられます。



今日は、今年最後の主日礼拝を守ることができました。

日頃、あまり会えないかたのお顔も見ることができて、皆さんお元気そうで、よかったです。

2022/12/25 23:36

mikaさん、しゃべログで取り上げていただきありがとうございます。星新一と言えばアシモフ(ロボット三原則で有名ですよね)の大ファンなので、SFが好きならそこから語るべきなのでしょうが、本は持っていないし長くなるので、そのうちにまた語りたいです。語るべきで語らなかったことと言えば(こちらの方がmikaさんには興味があると思うのですが)、星新一は祖父の星一の伝記『人民は弱し 官吏は強し』を書いていて、星一は星製薬をつくったひとなんですね。このひとは福島の政治家でもあり、星新一はその繋がりから、いわき(第一原発のあるいわき市ですよー)の地元の同人雑誌に寄稿したことが何回かありました(いわき市図書館に寄贈されている実物を読みました)。

その関係で、僕の住む茨城との県境にあるいわき市勿来関文学歴史館(僕が現在働いている資料館とも繋がりがありますので、宣伝です、宣伝)で、星一展を開いたこともあります。勿来とは、「来ることなかれ」という意味で、東北は蝦夷地で、朝廷とは別の人々が住む土地で、勿来はその最前線の基地があった場所だったのです。

mikaさんが興味ありそうな話をしよう、と思ったら『本棚は、僕を描く』で書きたい内容が浮かび上がってきてしまいました。『人民は弱し 官吏は強し』は、電子書籍で読んだので、まだ書く余地があるな、なんて思いました。

星新一は、いつものショート・ショートの文体で長編小説『ブランコのむこうで』というタイトルの作品を書いており、この作品、僕は大好きなのです。生と死についてのことなど、ヘヴィーなことをストレートに、それもいつもの文体で描いていて、心が打たれます。

嬉しくなってついつい語りすぎてしまいました。ではでは。

2022/12/16 23:52

星 新一

#私の本棚



NOVEL DAYSで「私の本棚」という新しい自主企画が始まっています。

さっそく成瀬川さんが『本棚は、僕を描く』と題して参加されていて、その第1話が星新一の作品がずらりと並んだ棚でした。


わたしも持っている!! 

と、うれしくなり、思わず手持ちの星新一作品を並べてみました。

よくよく見ると、成瀬川さんとかぶってるのもあれば、かぶってないのもありますね。

子どもの頃に読んでいたものなので、ぼろぼろのぼろです。


『ごたごた気流』(角川文庫)に収録されている「門のある家」という短編が引き込まれる設定で、いまだにストーリーをよく覚えています。


村山さんも星新一をお好きだとおっしゃっていて、以前にわたしが「門のある家」が面白いよというお話をしたら、その後、わざわざ『ごたごた気流』を買って「門のある家」を読んだよというご報告をDMでくださり、村山さんのやさしさと律義なところに感動したのでした。


「門のある家」の紹介ではなく、村山さんとの思い出話になっていますね。


というか、星新一作品というのは、あらすじを説明するとネタバレになるので、説明できないのです。

今考えると、この「門のある家」というのは、遠野物語の「迷い家(マヨヒガ)」の伝承と似たものがあるなと思います。


2022/12/16 22:42

mikaさん、昨日は私の方へご訪問下さいまして、ありがとうございました!

台湾茶もお出しせず、大変失礼を致しました……(*^^*)


事件の続報を教えて下さり、ありがとうございます!

「実はエリート中のエリートであるリバタリアンたちに共和党支持者が多い」

というお話、目からウロコでした。

世間一般のイメージほど単純な話ではないんですね……。


それから、私の「台湾日記」の方も読んで下さり、本当にありがとうございます!


そうなんです、台湾において、中国との情報戦は非常に激烈、且つ重要です。

mikaさんが「政治的な思惑がある国家規模の情報戦とも言えるデマに対抗するのは、とても難しそう」と書いて下さいましたが、正に仰る通りだと思います。


それでも台湾はよく対応していると思います。すぐ「ファクトチェック」が入るので、ちゃんとしたソースから情報を取得していれば問題ないのですが、今回の台湾統一地方選で明らかになった問題は、「いい加減な情報を鵜呑みにしてしまう人」「自分にとって都合のいいイメージにあっさり影響を受けてしまう人」がいかに多いかだと思います。


そういう意味では、mikaさんの記事とも関わる部分があるのかもしれないですね……(*^^*)


あ、村上春樹のビールの話ですが、村上はアメリカ人同僚の忠告を無視して、バドワイザーを飲んでいたそうです(笑)


村上訳のレイモンド・カーヴァーの短編集『大聖堂』!


私も持っています。「村上春樹翻訳ライブラリー」の一冊ですよね。


いつもいい本が選ばれる素敵な読書会ですね!

有意義で、楽しい時間をお過ごしになられますように♪♪

2022/12/15 22:05

南ノさま
わぁ、南ノさん、こんにちは!

お忙しいなかでお読みいただき、どうもありがとうございます!!


事件の続報をお伝えしますと、昨日12/13にバハマ警察によってサムが逮捕されました。裁判所に出廷したサムは手錠をかけられておらず、両親と弁護士が付き添い、保釈を認めるよう求めました。裁判官は悩んだ末、保釈を拒否。来年2/8にアメリカへの身柄引き渡しの審問が行われるそうです。


新事実が次々と明らかになるにつれて、サムの「利他的な人柄」というイメージは、慎重に作り上げられたもので、実際は人徳をほとんど持ち合わせていなかったことが証明されつつありますね。


暗号資産の世界はリバタリアンが多いため、サムのように民主党陣営に大口の寄付をして、「リベラル」であるとアピールするのは、珍しかったんですよ。


現代のアメリカでは、リベラルは文字通りの意味ではなくて、社会民主主義的な福祉政策、所得の再分配による経済の平等などを意味しているので、「小さな政府」を求めるリバタリアンとは目指している社会が根本的に違います。


アメリカの選挙を日本で報道する場合、共和党=保守(低学歴低所得者層)、民主党=リベラル(高学歴高所得者層)という図式で紹介されがちですが、実はエリート中のエリートであるリバタリアンたちに共和党支持者が多いのです。

意外ですよね。


なので、高度な教育を受ければ人格が磨かれて、社会的公正を重んじるようになり、環境、人権などの意識が高く、社会福祉政策に共感するようなる、という「神話」は間違いだな、と最近思うようになりました……。



南ノさんに教えてもらって、「光クラブ事件」というのを初めて知りました! 

この事件で、東大生社長のかたが自死を選んだと知り、驚くとともに、すごく残念に思いました。

残りの人生を詐欺と倫理観の欠如の象徴として生きるのに耐えられなかったのかもしれませんが、生きてこそ償えるというものです。

いやー、三島がこの事件をどのように小説にしているのか、気になります!


一方のサムはと言えば、背任行為に対する罪の意識や顧客に申し訳ないという気持ちをまったく感じていないようです。

倒産を発表するツイートなんて、”Hi all”で始めてますからね。



実は今年5月に、シンガポールに本社を置くテラフォーム・ラボ(Terraform Labs)が発行する暗号通貨の一種であるTerraUSD(テラ)とLuna(ルナ)が暴落し、1週間で450億ドル近い時価総額が消え去る事件が起こりました。

このテラフォーム・ラボの創業者兼CEOであったドー・クォン(Do Kwon)は韓国出身で、スタンフォード大学を卒業しているんですよ。

テラ崩壊後、集団訴訟が提起されて、韓国の検察によって逮捕状が出されましたが、12月現在もドー・クォンの身柄は拘束されず、セルビア(韓国と犯罪人引渡条約を結んでいない)に潜伏しているという噂があります。



サムの両親はスタンフォード大学の教授で、アラメダの元CEOキャロライン・エリソンもスタンフォード大学卒、崩壊したテラの創業者もスタンフォード大学卒……。

というわけで、わたしのなかで有名大学ブランドは信用してはいけない、という気持ちがめちゃくちゃ強くなったのでした。



南ノさんの「台北市長選挙レポート(一)~(三)」と「台湾統一地方選挙翌日レポート」、拝読しました!

またあらためて、南ノさんのところにお邪魔させてくださいね^^

お心のこもったお便りを、どうもありがとうございます。

2022/12/14 20:48

mikaさん、こんばんは!


『五月に売れ』第4話~6話「世界を騙した男」拝読しました。

本当はファンレターの形でお出ししようかと思ったのですが、今「NOVEL DAYS」が妙な具合になっているので、この時期レターをお出しすると、かえってmikaさんにご迷惑がかかることになるかもしれないと思い、こちらにて失礼します。


経済雑誌に連載されている人気コラムを読むように、今回もタイムリーな話題を堪能させていただきました(*^^*)


サムの「セルフブランディングが見事であったと言うほかない」という部分が特に印象的でした。


一見セルフブランディングとは無縁のような人物が、実は計算しつくされたセルフブランディングをしていたわけですね!


この記事を読んで、この間の台湾統一地方選を思い出してしまいました。選挙期間中、民進党の陳時中は、国民党陣営からの激しい誹謗中傷に晒されたわけですが、その批判の内容はどう見てもエビデンスのない、殆ど幼稚としか言いようのないものだったにも拘らず、中間層にはかなり影響を与えていたという報道を見て、あっけに取られてしまいました。


ネットでわかり易いイメージだけを拾い読みして、自分では何も考えずに「わかったような」気になってしまう人がこんなに多いのかという恐ろしさでした。


「活動報告」も拝読したのですが、「学歴に対するバイアスというのは危ういもの」というmikaさんの言葉にも、深く首肯させられました。


特にアメリカのような国では、名門大学に対する「神話的」信頼が日本よりも根強いのかな、とも感じました。(日本でもかつて、三島由紀夫が『青の時代』で題材にしたように、東大学生による「光クラブ事件」がありましたが、その他はあまりないようですね…)


そう言えば、村上春樹のエッセイで、村上がアメリカの大学で教えていた時に、同僚の教授から、「うちの大学の教員がバドワイザーのビールなんか飲んではいけない」と言われたという話を書いていて、アメリカの大学はそんなに権威主義なのかと、ちょっと滑稽な感じがしたのを覚えています。(大学教師にふさわしいビールって、いったいどんなビールなんでしょうね?)


長々と書いてしまってすみません。


mikaさん、どうかお体にお気をつけて執筆活動をなさって下さいませ。

ゆっくりと、そして心から楽しみに、mikaさんの新作を待ちたいと思います(*^^*)

2022/12/13 20:34

老病猫ホーム

最近、叔母から相談を受けて、有料老猫ホームの存在を知りました。


有料老人ホームではなく、有料老猫ホームってなに?


叔母は今、二頭の猫さんと一緒にひとりで暮らしています。

夫はすでに亡くなっていて、子どもはいません。

姪であるわたしが唯一の相続人、叔母に何かあった時にすべての面倒をみる約束になっています。


その叔母が「自分が死んだら、猫たちはどうなるのか」ということを非常に心配して、思い悩んでいます。

叔母が急にそんなことを言い出したのは、わたしの母(叔母にとっては姉)の急死がきっかけです。


わたしの亡母は、遺伝性の病気が原因で腎不全となり、50歳から人工透析療法を受けていました。

この病気には心臓弁膜症と脳動脈瘤の合併症があります。

母は心臓の手術を乗り越え、脳の方も早期治療とリハビリのおかげで、支障なく日常生活ができるほど回復していました。

この遺伝性の病気とは別に、母の場合は40代の頃に乳がんの手術も受けていました。

本当に病気と闘い続けた人生だったと思います。


叔母も母と同じ遺伝性の病気が原因で、人工透析療法を受けています。

今年になって、わたし自身も母と叔母と同じ遺伝性の病気を発症していると分かりました。

なので、叔母が母の急死にすごくショックを受けて、「自分もいつ死ぬか」と不安になる気持ちはよく分かります。


もちろん、叔母の一番の願いは、自分が責任を持って最後まで猫たちの面倒をみることです。

しかし、叔母が入院するなどして、猫たちの世話ができなくなる事態というのは、突然訪れる可能性があります。

万が一のことを考えて、あらかじめ準備しておくというのは、悪いことではないと思います。


叔母が考えたのは、終生飼養(終生あずかり)をしてくれる有料老病猫ホームに費用を支払ってお願いするという案です。

今回、わたしも初めて知ったのですが、有料老人ホームのように、有料の老猫・老犬ホームというのがあります。

そのなかでも、特別なケアを必要とする猫を受け入れてくれる、老病猫ホームというのがあるのです。

資料を取り寄せたところ、入居時の費用が100万~200万ほどかかるそうです。

わたしは今まで一度も猫を飼ったことがないので、この金額が正当な対価なのか(あるいは安すぎるのか高すぎるのか)全く分かりません。



そこで、老病猫ホームにアポをとり、施設を見学させてもらえることになりました。

夫に運転してもらって教えられた住所に向かうと、自然に囲まれた郊外の住宅地の一角にある、ごく普通の一軒家でした。

大きな看板などもないので、職員さんが出迎えてくれなければ、素通りしてしまいそうです。

(落ち着いた環境で猫たちが暮らすことを目的とする施設なので、猫カフェのように一般公開していません)


実際に猫たちの暮らしぶりを見て、館長さんと職員さんから詳しいお話をお聞きし、ホームに入居するということの具体的なイメージが持てるようになりました。


まず、猫たちにはそれぞれの個室(床から天井までの縦長ケージ)があります。

足が悪いため、縦長ではなく横長のケージで暮らしている猫さんもいます。

ケージの扉は常時開放されていて、ケージ内でじっとしている猫さんもいれば、自由に歩き回ったり、お昼寝している猫さんたちもいました。

(じっとしていたのは、わたしたち見知らぬ人間が来たことで、警戒していたからかもしれませんね)

常駐するスタッフは、館長さんと職員さんの二人だけで、施設内の掃除・食器洗い・消毒などを手伝ってくれるボランティアスタッフさんが日替わりで来られるそうです。



わたしから館長さんたちに質問したことは、健康管理(主に食事)についてです。

叔母の猫たちは、獣医師さんの処方により、ヒルズ社の特別療法食を与えているそうなのです。

食物アレルギー(食物不耐性)対応の療法食でなければ、下痢がつづくのだとか。

ただ、この特別療法食なるものは、動物病院から買わなければいけないので、はっきり言ってお高いです。

叔母が心配していたのは、そんなお金のかかる食事をホーム入居後も与え続けてくれるかどうか、ということでした。



このホームを運営する団体は、飼い主のいない猫の保護と里親探しの活動を行っている認定NPOです。

譲渡につながりやすいのは、若くて健康な猫たち。

一方で、野良生活や飼育放棄の現場から保護されるのは、病気や障がいなどのハンディを背負った猫たちが多い。


そういった活動の積み重ねから、一時的なシェルターだけでなく、高齢の猫や病気の猫の終生飼養を目的とするホームができたのだそうです。

そのため、有料の「終生あずかり」で入居している猫というのは思っていたよりも少なく、里親を探している猫たちがほとんどでした。


わたしも見学して初めて知ったのですが、このホームではFIV(猫エイズ)キャリアの猫たちも同じ屋根の下で暮らしていて、キャリアの猫たちと、ノンキャリアの猫たちは、居住区を完全に分けて生活していました。


近年、団体の活動に賛同してくれる獣医師さんが見つかり、直営の診療所(スペイクリニック)の開設まで至ったのだそうです。

レスキュー対応も行うシェルター付き保護猫医療施設なのだとか。


ホームにも、獣医師さんと動物看護師さんが定期往診してくれるとのことで、入居後も継続した栄養指導や必要に応じた治療が受けられるというお話を聞き、叔母さんが心配していた食事問題はおまかせして大丈夫そうです。


そしてもし入居するとなれば、スムーズに治療の引継ぎができるよう、かかりつけ医から紹介状(診療情報提供書)を出してもらう必要があるということを教えてもらいました。




今回、老病猫ホームの見学をさせてもらい、館長さんと職員さんからお話をお聞きし、学ぶことがたくさんありました。

資料に提示されていた100万円という入居費は、決して高いものではないと感じます。

館長さんは、わたしと同世代(わたしよりちょっと年上)のかたで、労働時間を考えると、対価が見合わないのでは、思ってしまいました。

こういうボランティアのかたちもあるのだな、と初めて知ることばかりでした。


そして、わたし自身、もっと叔母と話をして、猫たちについて情報共有する必要があるな、と思いました。

これは叔母が元気なうちでなければ、できないことです。


もし母と同じように、叔母の容態が急変する事態になったら、わたしが猫たちの一時あずかりをすることになるはずです。

(さいわいにも、今年引っ越したマンションはペット可だそうです)

特別療法食を与えていることも、今回話し合って初めて知ったので、もし知らないままだったら、悪気なく市販のフードを与えて、猫たちの健康状態を悪化させていたに違いありません。

叔母の猫たちのかかりつけ医がどこなのかも、いずれ聞いておかなければいけないですね。


叔母には、母よりも長生きしてほしいと願っています。

「自分が死んだら」とばかり思いつめていないで、前向きになってほしいです。


2022/11/27 21:55

術後の話②

先週末、手術から2週間経ち、退院後初めての外来診察へ行ってきました。


今回の手術で執刀してくださった婦人科の主治医の先生の実況解説を聞きながら、実際の手術の動画を見ました。

(全部見ると3時間半かかるので、ダイジェストで)

本物の手術の映像を見たのは、初めてです!!

日頃から、医療ドラマなどそれほど見たことがなかったので、衝撃的でした。


まず最初に卵巣嚢腫の病理検査の結果を聞き……


婦人科の先生「脂肪や軟骨や髪の毛とかが入った腫瘍です」

わたし「は? 髪の毛??? どうして卵巣にそんなのがあるんですか??」

先生「卵は人の体になるものだからね」


核出した嚢腫の内部には、脂肪や軟骨や甲状腺や髪の毛などの細胞組織が含まれていたそうです。


これは卵巣嚢腫の中でも皮様嚢腫と呼ばれるものなのだとか。

原因はわかっていませんが、受精していないのになぜか卵子の細胞分裂が起きて途中で停止したため、中途半端にできた人の体の成分がたまって腫瘍化すると考えられているそうです。



今週、腎臓内科の外来診察にも行ってきました。

腎臓内科の主治医は、電子カルテで手術と病理検査の結果を見ながら……


腎臓内科の先生「手術おつかれさまでした」

わたし「髪の毛とかが入った腫瘍だったんですよ」

先生「ブラック・ジャックのピノコちゃんですよ。この病気を拡大解釈してファンタジーにしたのが、ピノコちゃん」

わたし「ピノコちゃんの元ネタってこれだったんですか!?」


実際の皮様嚢腫には人の体のすべての組織が入っているわけではないので、嚢腫から人体を組み立てるというのはファンタジーですが、ピノコのアイディアの元ネタとなった病気がわたしのお腹のなかにあったとは、本当に驚きです。


人体って精密すぎるから、こんな不思議な誤作動が起こるものなのでしょうか。




婦人科の先生の手術動画実況の話に戻ると、5センチ大の腫瘍だけを取り除いて(核出)、正常な卵巣を温存してくださいました。

映像で見ると、正常な部分が腫瘍に押しつぶされて、ぴろぴろのひものようになっていました。

先生によると、このひも状のものが時間をかけて正常な大きさ(2センチ程度の球状)に戻っていくのだそうです。

人体の回復力ってすごいですよね。


そして、鼠径ヘルニアではなく「謎の物体」と言われていた鼠径部のしこりは、病理検査の結果、子宮内膜症でした。

外科の先生の見立てが正しかったです。



今年7月頃、婦人科の先生からの紹介で、同じ病院の外科へ行くことになり、その最初の診察の時に……


外科の先生「(触診して)腸じゃないですね!」

わたし「ええ!?」

先生「腸はこんなにかたくないです」

わたし「腸じゃないなら、なんなんですか!?」

先生「謎の物体です」


わたしの外科の主治医は消化器外科の専門医だそうです。

触診しただけで即座に言い当てるとは、今まで10年以上、鼠径ヘルニアだと信じてきたのはなんだったんだという思いになります。




子宮内膜症は、本来子宮の内側にあるべき子宮内膜の細胞組織が、子宮の内側以外の臓器にできてしまい、増殖と炎症を繰り返す病気だそうです。


そう言われてみると、鼠径部のしこりが痛む時は月経周期と連動していました。

月経血が出る前、前日あたりから痛み始め、月経の間は痛み止めを服用していても、強い痛みを感じました。

これはおかしい、そんなわけないと、もっと疑いをもつべきでした。

月経痛はあって当たり前、生理は痛いもの、という間違った思い込みがあるせいで、自分が月経困難症である自覚が無い女性が少なくないのではないかと思います。



婦人科の先生の説明によると、子宮以外の臓器にできた子宮内膜症の組織は、自分が子宮だと勘違いしているため、月経の時に子宮と同じように出血するのだそうです。


わたしの場合は鼠径部に子宮内膜症ができていましたが、子宮内膜症は体のどの臓器にもできる可能性があり、肺にできた患者さんは月経のたびに血を吐くのだとか。


わたし「全身どこの臓器にもできるって、ガンじゃないんですか」

婦人科の先生「ガンみたいですけど、ガンじゃないです」

わたし「子宮内膜症の原因は何なんですか?」

先生「生理の血がお腹に逆流するためという説があります」


子宮内膜症の発症原因は、はっきりしていないそうですが、月経血がお腹のなかに逆流し、そこに子宮内膜組織がとどまるという説が有力なのだとか。


婦人科の先生「子宮内膜症が鼠径部だけでなく、子宮まわりにもありました」

わたし「子宮まわりにあるとどうなるんですか」

先生「(動画を一時停止しながら)子宮と卵巣と腸が癒着していました」

わたし「ええ!? ちょっとだけですか?」

先生「ちょっと以上ですね」


わたしの子宮内膜症は、外科の先生が切除してメッシュで修復してくださった場所だけでなく、子宮まわりのあちこちにあったそうです。


婦人科の先生は、「卵巣嚢腫と子宮内膜症は発症原因が異なる全く別々の病気」だと強調していましたが、結果的に子宮と卵巣と腸が癒着が起きてしまっていたのです。

映像を見ると、癒着した腸と子宮と卵巣を剥して、卵巣の嚢腫だけを核出したあと、全体を癒着防止シートで覆っていました。


子宮内膜症というのは完全に除去できるわけではなく、閉経までは月経のたびに悪化していくのだそうです。

また別の場所に同じようなしこりができる可能性が十分にあるとのことでした。


それで今後は、子宮内膜症を悪化させないためのホルモン療法を行うことにしました。

ジエノゲストという卵巣の機能や子宮内膜の増殖をおさえるホルモン剤を内服します。


わたし「このお薬はどんな効果があるんですか?」

婦人科の先生「排卵がなくなるので、生理が来なくなります。避妊薬ではないですよ」

わたし「妊娠を希望する時はどうするんですか?」

先生「その時はお薬をスパッとやめます」


わたしにとって、閉経とはもっとずっと先のことだと思っていました。

当面の間とは言え、こんなに早く閉経したような状態になるとは、思いもよりませんでした。

しかし、あの若い頃の誤診がなければ、もっと早期にホルモン療法を受けることができて、ここまで悪化することもなかったのではないかと思えてなりません。

返す返すも悔しいです。



もともとは、妊娠・出産したいという希望があって、腎臓内科の先生から今年6月頃に婦人科に紹介してもらったのでした。

婦人科と呼んでいますが、リプロダクティブセンターという今どきらしい名前がついていて、専門的な不妊治療を行っている科です。

それが、あれよあれよという間に手術することになり、今や排卵を止めるお薬まで飲むことになって、むしろ最初の目的から遠ざかっている気がします。



術後の外来検査では、腎機能が術前よりも低下していました。

手術の影響による一時的な低下であってほしいです。

そのため、今まで飲んでいたお薬から、腎臓保護効果のあるお薬に変えることになりましたが、このお薬も妊娠を希望する時には使えないそうです。


腎臓内科の主治医の先生とは、初診の時から妊娠を希望しているという話をしていました。

今週の外来診察で、先生は「妊娠するなと命令することは人道に反するので言えませんが、医学的見地から言って、妊娠はおすすめできません」とはっきり言いました。


妊娠を希望する場合、今使っているお薬を全部切って、妊娠中でも使えるお薬に変える必要があります。

現在のわたしのからだの状態では、仮に妊娠したとしても、出産まで耐えられないのだそうです。


せっかく妊娠できても、母体のいのちの危険があれば、母体優先の原則があるので、あかちゃんをあきらめなければいけなくなる可能性が高いのです。

あきらめないという選択をとり、自分が死んでもいいから産みたいと言っても、最終的に母子とも死んでしまうか、母体が生還しても重篤な後遺症が残り、あかちゃんは死んでしまう可能性の方が高い。

という話を主治医の先生は具体的に説明してくれて、わたしとしては薄々予想していたものの、あらためて言われてショックでした。


この問題については、これまで何度も夫と話し合っていて、40歳までは自分で産むという望みを捨てないでいようという結論(先送りとも言う)になっていました。

自分で産むことにこだわらなければ、養子という選択肢もありますし、代理母出産(1000万円~2000万円ほどらしい)という選択肢もあります。

一生、子どもを持たないという選択肢もあります。


来年、再来年のことを今ここで思い悩んでも意味がないのは分かっていますが、もやもや考えてしまいますね。


現在、術後3週間目に入り、着実に回復を感じています。

からだの内側の見えないところも回復していってほしいものです。

来週は、退院後初の外科の外来診察があります。

外科の主治医の先生には、子宮内膜症を見つけてもらって、本当に感謝しかないです。

早くお礼を言いたいです。


2022/11/19 16:54

術後の話①

13時に手術室へ入り、自分の病室へ戻ってきたのは18時半頃でした。

酸素マスクと点滴をしていて、意識はありましたが、まだ半分眠っているような状態でした。

看護師さんが「もうすぐ旦那さんが来ますからね」と声をかけてくれて、一瞬、夫が手を握ってくれたのが分かりました。


このときのわたしは、自分では目が覚めているつもりでしたが、夫から見ると、あまりに朦朧としていて、握り返す力も弱々しかったそうです。


夫は入退院の日と手術の日に休みをとって付き添ってくれたのでした。

手術が始まる1時間程から、夫は待機場所(病棟のラウンジ)でひたすら窓の外を眺めていたそうです。

時折、看護師さんが手術の経過を伝えに来たのだとか。

手術が終わった後に、外科の先生から詳しい説明を受けたそうです。

約7時間ほどラウンジで待って、ようやく顔を合わせることができたのでした。


感染症対策のため、家族でも基本的に病室には入室できず、病室での面会が許されたのはこのときだけでした。

ほとんど会えなかったのに、ずっと付き添ってくれた夫に感謝の気持ちでいっぱいです。


意識が戻ってから、まだ痛みはなく、のどの渇きだけがありました。

看護師さんに何か飲みたいとお願いすると、「まだダメですからねー」と言って、濡らしたガーゼでくちびるを湿らせてくれました。

目が覚めている気になっているだけで、実際には麻酔が抜けきっていないので、水を飲むとむせたりする恐れがあるため、飲水禁止なのでしょう。


本当にはっきり目が覚めて、水を飲む許可がでたのが22時半頃。

OS-1がめちゃくちゃおいしかったです。

自発呼吸が十分に戻ってきていたので、酸素マスクも外してもらいました。




術後1日目、痛みはありませんでしたが、吐き気に苦しめられました。

手術当日から翌朝まで絶食し、すっごくお腹が空いているのに、せっかく食べたお粥をほとんど吐いてしまい、つらかったです。

この吐き気は、点滴で入れているお薬(抗生剤と痛み止め)の副作用とのことでした。

午後になって看護師さんと一緒に立つ練習をし、ベッドから降りてほんの数歩の距離ですが、自分で歩いてトイレまで行くリハビリをしました。

自分で歩いてトイレまで行けるようになると、尿道カテーテルを抜いてもらえました。

自分でトイレに行けるって大事です。大げさな言い方かもしれませんが、人間としての尊厳が回復したような気になります。



術後2日目、点滴のお薬が終わり、内服薬の痛み止めに変わりました。

1日日に苦しめられた吐き気が嘘のように消えて、しっかり食事をとれるようになりましたが、今まで感じなかった痛みが出てきました。

日中にシャワー浴の許可が出て、術後初めてシャワーを浴びましたが、右足を少し上げようとすると、とんでもなく痛いのです。

パジャマを脱ぎ、シャワーを浴びて、下着を着がえて、再びパジャマを着て、髪を乾かすという日常の何気ない動作が、そのときのわたしには超大仕事でした。


手術部位が右卵巣と右鼠径部なので、右わき腹から下腹部、右足のつけ根にかけて痛むようでした。

お腹を壊したときや筋肉痛、月経痛とも違う、今まで一度も感じたことのない、からだの深い場所で痛みを感じました。

痛み止めを服用した上で、こんなに痛いのかとショックでした。

このときばかりは、もう足鍵盤のあるオルガン曲は弾けないかも……と弱気になっていました。



2日目の夕食後に婦人科の先生の診察があり、術後初めて透明なテープをはがして、自分の傷口を見ました。

傷口から出血したり、化膿したりということが無く、お腹の中に水が溜まっていたりすることもなかったそうで、術後3日目に退院する許可がでました!


2日目の夜中、咳きこんで目が覚めることが何度もあり、よく眠れませんでした。

これほど感染症対策をしている病棟にいて、風邪や何らかのウィルスとは思えず、なぜこれほど咳がひどいのか不思議でした。


術後3日目に夫が迎えに来てくれて、次回の外来診察の日などを約束し、退院しました。

退院当日の夜、自宅で寝ているときも咳がひどくて、なかなか寝つけません。

この咳は何なのか、加湿した方がいいのかと部屋の湿度計を見ると、特に乾燥しているわけではありません。


退院翌日に、手元の病状説明書をあれこれ読み返しながら、この咳の原因を考えてみました。

手術の前日、婦人科の先生と外科の先生と麻酔科の先生からそれぞれ説明を受け、手術に関連するたくさんの同意書に署名していたのです。

そのとき、麻酔科の先生が「風邪をひいたみたいにのどが痛くなりますが、いずれ治ります」と言っていたことを思い出しました。

これか!!

麻酔の説明書を読むと、「命には別状のない合併症」の項に「のどの痛みや声がかすれる」と確かに書いてありました。


全身麻酔で不可欠な気管挿管の影響でのどが痛くなるのだそうです。

のど風邪のような症状(咳、のどの痛み、声のかすれ)は、術後1週間経つ頃には自然に消えていました。




退院翌日は何もせず、自宅でゆっくり過ごしました。

退院翌々日(術後5日目)、デスクワークならできるだろうと思い、仕事を再開。

それが、ただイスに座ってデスクに向かっているだけで、右足が耐え難いほど痛くなってくるのです。

なぜか右足のつけ根だけでなく、右ひざが熱くなり、右ふくらはぎまでつりそうになります。


ふとももに力が入らないから、不自然に膝やふくらはぎの筋肉に力を入れることなって、連動して痛みが出るのでしょうね。

ただ座って、上体を起こした姿勢でいるだけでも、わたしたちは無意識にたくさんの筋肉を使って、バランスをとっているのだなぁと思いました。


1日3回痛み止めを内服していても、術後8日目頃までは痛みが強くて、2時間集中してデスクワークし、疲れを感じたら足を伸ばして休み、またデスクワークをするというように工夫し、日に4~5時間程度仕事をしていました。


術後2週間を過ぎると、足のつけねの痛みがだいぶ軽減し、歩行や階段の昇り降りもゆっくりとなら問題なくできるようになり、自分でも回復を感じてうれしかったです。

現在は、下腹部やわき腹の奥で痛みを感じるときだけ、その都度、痛み止めを服用するようにしています。


術後2週間が経って、退院後最初の外来診察に行ってきました。

大学病院の帰りに薬局に行き、ついでに郵便局とスーパーにも足を伸ばして、退院後では一番長い距離を歩き回って疲れたせいか、最近ではめったになかったほどの痛みが出てきて、帰る頃にはもう一歩も歩けないというほどの疲労困憊でした。


いやー、回復したからと油断して疲れすぎると、これほど痛みがぶり返すのだと痛感したので、日々の生活でもなるべく疲れをためないよう注意しなければ、と思いました。


2022/11/13 20:33

手術の話

手術が問題なく終わり、無事に退院できました!


いま、下腹部と鼠径部に1センチから1.5センチ程度の切開傷跡が計7か所あり、おへそからも器具を入れたので、おへその切開傷跡も目立ちます。



わたしが受けたのは、腹腔鏡下卵巣嚢腫摘出術と腹腔鏡下ヘルニア修復術という二つの手術で、婦人科と外科の合同チームで施術してくださいました。

まず婦人科の先生が右卵巣の5センチくらいの嚢腫を摘出(核出)します。

(正常な卵巣の大きさは2センチ程度らしく、わたし自身、病状説明のときにMRI画像を見てその大きさに仰天しました。)


卵巣の手術終了後、すぐに外科の先生へバトンタッチ。

外科の先生が右鼠径部の腫瘤を切除し、切除すると筋肉が弱くなるため、筋肉の内側にメッシュと呼ばれる医療用合成繊維を入れてふさぎます。

この人工物、メッシュは一生入れたままとなります。



鼠径部のしこりはずいぶん前から自覚症状があったもので、定期的に痛みも感じていました。

わたしはこれを鼠径ヘルニアだと信じて疑わなかったのですが、今年になって鼠径ヘルニアではない、全く違う病気だということが明らかになったのです。


初めてしこりに気づいた学生の頃のわたしは、小奇麗なレディースクリニックに行き、そこの院長から「鼠径ヘルニア、いわゆる脱腸ですね。押さえていればひっこみます」と言われ、以来ずっとその言葉を信じていたのでした。

あの時の医師、名前も覚えていませんが、実は完全な誤診だったのです!



今回の手術で執刀してくださった、大学病院の外科の先生によると、わたしの鼠径部のしこりは腸との連続性が無く、謎の物体なのだそうです。

考えられる仮説が三つあり、そのうち最有力なのは異所性子宮内膜症。

またまた思いもかけない病名が飛び出てきました。

外科の外来診察で病名を初めて聞いたとき、意味がわかりませんでした。

「異所性」って脳内で正しく漢字変換できませんでしたし。

本来の子宮とは全く関係ない場所(異所性)で、子宮内膜の細胞が炎症を起こしているって、どういうことなんでしょうか??


日本産婦人科学会の説明によると、子宮内膜症は「痛み」と「不妊」の原因となるそうです。

もし子宮内膜症だとすると、自覚症状が出てすぐレディースクリニックを受診した判断は正しかったのに、クリニックの医師の誤診によって、適切な治療を受ける機会を失ったわけです。

それで10年以上にわたって炎症を繰り返して、しこりが大きくなっていったと言えます。


本当に子宮内膜症かどうかは、手術後に病理検査をしてみなければ断定できないそうで、退院したばかりの現時点では、まだ謎の物体Xのままですね。




手術の話に戻ります。

ややこしい話ですが、わたしの場合、鼠径ヘルニアではないにもかかわらず、謎の物体Xを切除するとどうしても欠損が生じるので、脱腸部切除後の再建に準じる、メッシュ修復術が必要なのだそうです。


外科の先生からもらった腹腔鏡下ヘルニア手術の説明書に、「ヘルニアバンドなどによる保存的治療は効果がないことが証明されています」と書いてありました。

効果がないことが証明されてるんだ……。

じゃあ、もしわたしが本当に鼠径ヘルニアだったとしても、あのレディースクリニックの医師が言った、何かで押さえて脱腸部をひっこませるという治療法は正しくなかったわけですね。



手術前夜、三種類の下剤を内服し、お腹を空っぽにしました。

手術当日の朝から手術翌日の朝まで絶食。

手術開始の3時間前まではOS-1だけ飲んでもOKでした。

時間になり、婦人科の先生と看護師さんが病室まで迎えにきてくれ、一緒に歩いて手術室へ入りました。


そこではすでに手術室看護師さんと麻酔科の先生たちが待っていて、点滴でお薬を入れ始め、ちょっと血管がぴりぴりするなと感じているうちに意識がなくなっていました。

全身麻酔って、自然に眠りにつくのとは違い、まどろんでいる時間がなく、突然シャットダウンしたように意識がなくなるものなんですね。


腹腔鏡下手術では、炭酸ガスでお腹をふくらませて施術するそうです。


ここまで書くのに3日も費やしてしまいました。

次回、術後の話を振り返ってみようと思います。


2022/11/03 14:53

酵母を入れないパン 小麦vs.大麦

現在連載中の『バイブル・フード・レシピ』のために、過越の祭りのための酵母を入れないパンを作りました。


作中で紹介したレシピは、現代のカシュルート(ユダヤの食物規定)の厳格なルールに従ったもので、18分以内で焼き上げることにもチャレンジしました。


作中では、大麦を使った過越のパンのみを紹介しましたが、実際には小麦でも作りました。


材料はとてもシンプルです。


石臼挽き全粒粉(小麦または大麦) 1.5カップ

水 0.5カップ

オリーブオイル 大さじ1



北海道産小麦「キタノカオリ」石臼挽き全粒粉で作ったのがこちら。



なんか茶色いし、粒感がありますよね!

これは焦げているのではなく、全粒粉だからです。


味はですね、作中で書いたとおり、無味です。

パン作りの基本の材料は、粉・水・塩・油・酵母です。

このうち、塩と酵母を抜いて作っているのですから、味が無いのは当然ですね。


全粒粉100%のパンって、スーパーやコンビニでは見かけませんよね。

成城石井の「アーモンドと胡桃のフランス産全粒粉カンパーニュ」の全粒粉配合比率は15%以下だそうです。

商品名のわりに少ないですよね。

実際、全粒粉100%で作ると、上の写真の通りで色味が茶色くなるし、けっこう雑味があるので、精白粉で作ったパンの方が普通においしいです。



聖書の話題からそれますが、国の麦品種緊急開発プロジェクトというのがあってですね、北海道や東北、九州などの農業研究センターで育成に取り組んでいるのです。


その成果として、北海道産「キタノカオリ」「春よ恋」、岩手・宮城・福島県産「ゆきちから」、秋田県産「ハルイブキ」、九州産「ニシノカオリ」などの新品種の小麦が栽培されています。

研究報告を読んでみますと、今回使った「キタノカオリ」は、精白粉を製パンした際の色味が黄色っぽくなる特徴があるようです。

精白粉で作った食パンに黄色みが出る品種なんだから、全粒粉ではもっと茶色かったわけですね。

「春よ恋」と「ゆきちから」は白度が高いそうです。



本題に戻って、

福井県産六条大麦「ファイバースノウ」石臼挽き全粒粉で作ったパンがこちら。



え、白い! 本当に全粒粉なの? と疑いたくなる白さですね。


小麦粉と同じ分量で作りましたが、大麦粉で作ったパンの方が小さくなってしまいました。(小麦パンと同じ皿にのせて撮影しています)

大麦粉の方が粘り気が少ないので、麺棒で伸ばしても、あまり薄くできなかったから(無理に伸ばそうとすると真っ二つになりそう)です。


「ファイバースノウ」も麦品種緊急開発プロジェクトで育成された新品種です。

これも農水省の海外持出禁止種子(改正種苗法)に指定されていますね。


「ゆきちから」は白度が高い品種で、この「ファイバースノウ」も見ての通り、白度がとても高いです。

となると、雪的な名前がつけられた品種は、白度が高いのが特性ということなのかも?


全粒粉入りパンやライ麦入りパンは、健康志向のお店でちょくちょく売っていますが、大麦粉配合のパンって見たことないですよね。

ましてや大麦粉100%パンなんて、初めて食べました。

大麦粉自体、大きなスーパーでも製菓材料専門店でも取り扱っていないです。麦ごはん用の丸麦は健康食品の売り場で見かけますが……。

それで、自社製粉している大麦倶楽部さんから買いました。

注文を受けてから製粉するそうで、本物の挽きたての大麦粉が届き、生まれて初めて見た大麦粉の白さに感動したのでした。



聖書では、イエスが五千人に食べものを与えるエピソードで「五つのパンと二匹の魚」が登場します。

マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネと四つの福音書に共通して描かれる重要なお話です。

そのうち、ヨハネでは「大麦のパン」とはっきり書いているんですよね。


次は平たいパンではなく、酵母を入れた大麦パンを作ってみたいですね。

粘り気が少ない大麦粉100%で、ちゃんとふくらんだパンになるのでしょうか……?


2022/10/15 21:02

樹海ホーストレッキング

特急かいじ・富士回遊に乗って、河口湖駅まで。

山梨県鳴沢村の紅葉台木曽馬牧場へ行ってきました!


牧場の外へ出て、青木ヶ原樹海脇の林道をお散歩。

ススキがぼうぼうの道なき道を、一列になって進みます。



遠くに小さく見えている黄緑色の背中がわたしです。

夫が乗った「藤風」君はマイペースな性格らしく、頻繁に立ち止まって道草を食う(文字通りの意味)ので気づけば遠くに……。


お馬さんにとって、ふだんのごはんを十分に食べていても、お散歩のときの草は別腹なのだとか。


森の中ではアケビが実っていて、青紫色のトリカブトの花が咲いていました。

樹皮が剥がれた木々もよく見かけて、これは鹿が食べた跡なので、姿は見えなくても、鹿がたくさんいることが分かります。



時々やる気を出して、追いつく藤風君。


わたしが乗った「黒曜」君は、前の馬にぴったり着いて行く方が安心するタイプなのだそう。

先導するインストラクターさんの馬に追突しないよう、手綱を引いたりゆるめたり。


手綱を軽く引くことで、ブレーキの合図となります。

止まってくれたら、すぐに手綱をゆるめなければいけません。

止まった後も引きつづけると、バックの合図になってしまいます。


砂利道やぬかるんだ道も力強く進みました。


坂道では、馬が歩きやすいような姿勢をとる必要があります。

下り坂では踵を下げて体重を後ろに乗せ、上り坂では前傾姿勢に。

黒曜君は小柄な馬ですが、坂道も勢いよく登っていきました。


お馬さんたちはお散歩コースをすっかり覚えていて、走る場所に近づくと、早く走りたくてうずうずした様子に。

途中の林道を速歩で駆け抜けました。


少し開けた場所で、お馬さんたちのごほうびタイム。



藤風君は、道産子(北海道和種馬)と馬車を牽く馬ブルトンの血を引く、木曾馬牧場で一番大きなお馬さんでした。

大河ドラマ「天地人」で阿部寛さん演じる上杉謙信が騎乗したそうです。


ごほうびタイムを終え、再び速歩で林道を駆け抜け、アップダウンのある細い道をたどり、牧場まで帰ります。


帰り道、黒曜君が急に立ち止まって、進まなくなりました。

道草を食べるのでも、トイレタイムでもなく、なぜかと思っていたら、インストラクターさんが「耳をピンと立ててるから、警戒している」と教えてくれました。


黒曜君は、珍しいたれ耳なのです。その片耳が、ぴんと立っています。

近くの林の中から砕石を運ぶ重機が動いている音が聞こえてきました。

どうやらこの、ふだんの森には無い不審な音を警戒しているようでした。


そこに、道草をもさもさ食べて一行から遅れていた藤風君が追いつきました。

藤風君は、黒曜君のお尻を鼻先でトントンとつついて、進むようにうながします。

まるで「怖くないよー、早く行けよー」と話しかけているようでした。

藤風君につつかれて、黒曜君は歩き出し、無事に牧場まで帰りつきました。



黒曜君は木曽馬系の和種馬で、おばあちゃんが道産子。

やさしい目をしていますね。たれ耳がチャームポイント。

先日、松本潤さんがこの黒曜君にお乗りになったそうです。

松本潤さんと言えば、来年の大河ドラマ「どうする家康」ですね。


たしかに大河ドラマの時代考証を考えると、和種馬でなければおかしいですが、現在では希少な和種馬だけで撮影するのは難しそうですよね。


河口湖駅前で熱々のほうとうを食べ、特急富士回遊(途中から連結して特急あずさ)に乗って東京へ帰りました。



今月末に入院・手術を予定しているので、今のうちに好きなことをしておこうと思っていてですね。

木曾馬牧場行きは、もともと9月に予約していたのですが、台風で一旦延期となり、今回はお天気に恵まれて良かったです。


森の澄んだ空気を味わい、思い出深い一日となりました。

インストラクターさん、黒曜君、藤風君、一緒に歩いてくれてどうもありがとう!!

いつかまた会いに行きたいです。


2022/10/10 22:50

Stable Diffusion

昨日、8月23日にオープンソースで公開され、世界中で話題の画像生成AI「Stable Diffusion」をさっそく試してみました!


Stable Diffusionは任意の文章で指示を与えると、画像を生成してくれます。


わたしが与えた命令と生成された画像はこちら。


"Two girls reading the bible by Alfons Maria Mucha, matte painting trending on artstation HQ"



"Two girls reading the bible by Kitagawa Utamaro, matte painting trending on artstation HQ"


「聖書を読んでいる二人の少女」というお題で、ミュシャ風と歌麿風の画像を生成してみました。


ミュシャ風の方、かなりきれいに仕上がっています!

18世紀~19世紀の西洋絵画の学習サンプルが多いのでしょうね。

素晴らしい再現度です。

人物や光の描写が美しい一方、持っている本は微妙におかしいですね。


歌麿風の方は、浮世絵と言えなくもない、という感じです。

日本風の着方をしている女性と、中国風の着方をしている女性がいますね。

背景の文字も漢字風の謎の文字ですね。

日本画と中国画のサンプルを学習していても、着方や文字で国の違いを区別するまでは学習していないのでしょう。


試してみたところ、日本のアニメ絵は苦手としているようです。

抽象画や歴史的に著名な画家の模倣は得意のようですね。


画像を生成するためには、具体的に人物や風景を指定する文章力が必要。

小説の挿絵を生成するなどの使い方は、面白いのではないかと思います。


2022/08/24 20:57

プロフィール

ロシア文学が大好きです。 2012年2月からロシア語を勉強しています。

NOVEL DAYSで活動中です。
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