オーストリア旅行

ご案内
完成テーマ「オーストリア旅行」をお読みいただく場合、設定は「古い順」でお読みください。
ウィーンの思い出

最後に、ウィーンでの思い出を書きたいと思います。


往路はウィーンで2泊し、王宮ケルントナー通りなどをぶらぶら歩き、シュテファン大聖堂の礼拝を見学しました。

美術史美術館でブリューゲルの『バベルの塔』をはじめとするバロック期の名画や、ベルヴェデーレ宮殿でクリムトやエゴン・シーレの19世紀末の名画を見ました。

シェーンブルン宮殿では、オーケストラの野外コンサートにちょうど行き当たり、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」のテーマ曲を聴きました。


ウィーンの街中を歩いていると、あちこちでコンサートの看板が目に入ります。

1日目の夜は、ウィーンで最も古いカトリック教会の一つ、Michaelerkirche(ミヒャエル教会)でオルガンのコンサートを聴きました。

コンサートの後に、Wiener Rathaus(ウィーン市庁舎)まで歩くと、フィルムフェスティバルが行われていました。市庁舎前に巨大スクリーンが設置され、たくさんの人々が野外で映画を楽しんでいました。


2日目の夜はケルントナー通りにある、Malteserkirche(マルタ教会)でオルガンとトランペットのコンサートを聴きました。



マルタ教会は、カトリックの騎士修道会であるマルタ騎士団の教会です。

赤地に白い十字の旗が、マルタ騎士団の団旗です。

1205年から1217年に、貧しい人々と十字軍を支援する目的で建てられ、15世紀半ばに現在のゴシック様式の礼拝堂が再建されたそうです。

祭壇画は、オーストリアのバロック画家ヨハン・ゲオルク・シュミットによって1730年に描かれました。洗礼者ヨハネによるイエスの洗礼を描いていますね。



壁にはマルタ騎士団の団章が掲げられています。

ぶらっと立ち寄った教会が、これほど歴史ある建物だとは驚きでした。



オルガンは1750年頃に制作され、この歴史的な外装とパイプをそのまま活かして、1950年に修復されたそうです。


コンサートの後、プラーター公園まで足を延ばし、映画『第三の男』にも登場した大観覧車に乗りました。

この年、オーストリア・バロック・アカデミーに参加する日本人はわたしを含め5人で、日本から同行したメンバーと、ウィーンで合流予定のメンバーがいました。2日目にザッハートルテで有名なホテル・ザッハーで待ち合わせて、無事に全員集合することができました。あの頃、携帯電話はあったけれど、まだスマホはなく、待ち合わせに成功したのは奇跡だな、と今となっては思います。



翌朝、ウィーンからグムンデンまで電車で移動します。

ウィーンから西に約200km、ザルツブルクの近くにグムンデンは位置します。

車窓から田園風景を眺めていると、車掌さんが検札に来て、わたしたちが乗っている車両が間違っているから、次の駅で降りるように言われました!

びっくりして次の駅で急きょ下車しましたが、田舎の見知らぬ駅なので、自分たちがどこにいるのか全く分かりません。

ヨーロッパの長距離路線では、途中で車両が切り離されて、違う行き先に向かうことがよくあります。このとき、わたしたちは正しい列車に乗ったつもりだったけれど、車両が間違っていたようです。日本で言えば、はやぶさに乗ったつもりで間違ってこまちに乗っていたようなものです。このとき、もしそのまま乗っていたら、どこか違う国に着いていました。

その後、後続の別の列車に乗って、幸いにもグムンデンまでたどり着くことが出来ましたが、この途中下車は忘れられない思い出ですね。


アカデミーの日程を終え、復路はザルツブルクを経由して帰国しました。


2022/01/08 15:00

グムンデン、こぼれ話
グムンデン滞在中はアカデミーのスケジュールが詰まっていて、自由に街を観光できる時間がほとんどありませんでした。

そんな中で、グムンデン焼きの工房、Gmundner Keramik(グムンドナー・ケラミック)に行きました。



グムンデンは陶器の名産地なのです。考古学的発見によれば、1492年にはすでにグムンデンで陶器が生産されていたそうです。

グムンドナー・ケラミックは1903年に設立された歴史ある工房。グムンドナー陶器は、Grüngeflammt(緑の炎)と呼ばれる、この緑色のデザインが伝統です。



クラシックデザインの製品は、ぽってりしたフォルムに小花柄が特徴です。現在でも製品の絵付けは全て職人さんの手作業なのだそうです。



オーバーエスターライヒで最も有名な山の一つ、Gmundnerberg(グムンデン山)にも訪れました。

標高884メートルなので、高尾山よりは高いですね。



こちらはグムンデン山の山小屋レストランでいただいた、名物料理です。

ステーキの隣にあるのは、ドイツやオーストリアで伝統の肉団子、クヌーデルだと思われます。クヌーデルはひき肉とジャガイモの団子で、パン代わりの主食として食べるそうです。ふつうに茹でたジャガイモと比べると、このクヌーデルの巨大さが分かりますね。これで一人前です。



ちなみに、わたしたちはオルト城に宿泊しましたが、お城の内部は簡易宿泊施設にリノベーションしてありました。日本で言う、校外学習などで寝泊りする青年の家に似ています。お城の食堂も学食に近かったですね。



お城の夕食は毎日このようなメニューで、ここでもクヌーデルが巨大です。パンはないのです。山小屋レストランが肉多めの団子だったのに対して、こちらはジャガイモのみの団子ですね。朝食は食堂でホットミルクとシリアルを毎日食べていました。


2022/01/08 14:30

グムンデンの思い出⑤
ルッツェンモースのプロテスタント教会、Evangelische Pfarrkirche Rutzenmoos(福音教区教会)では、エッスル先生のレッスンを受けました。



ルッツェンモースのオルガンは、1986年制作の新しいオルガンでしたが、様式は北ドイツ楽派のバロック・オルガンだと思われます。



レッスンの曲目は、トッカータとフーガ ニ短調 BWV565でしたが、エッスル先生は以前に指導を受けたアイ先生と異なる作品解釈をされており、何か言われる都度、修正しながら弾いていきました。


オルガンの鍵盤はふつう二段あるので、一段に大きめの音色、もう一段に柔らかめの音色を入れることが出来ます。それを利用し、あるフレーズを弾くときに、アイ先生は鍵盤を交互に入れ替えてエコー(こだま)のような効果を出そう、と言われました。

一方、同じフレーズをエッスル先生は、小さい音から大きい音に途中で鍵盤交代して、クレッシェンド効果を出そう、と言われるのです。

するとレッスンの途中にもかかわらず、近くで見ていたアイ先生が、エッスル先生に対して解釈の違いの理由を意見を戦わせ始め、互いにゆずらず、わたしはどちらの指導を聞けばいいのか混乱しました。

今思えば、プロのオルガニスト同士の作品解釈の一端を垣間見ることが出来、とても貴重な経験でした。


このあと、アイ先生は、「先生によって違うことを言われて混乱するだろうけど、全部を取り入れる必要はないから、いろいろなアドバイスを受けて、最終的には自分の音楽を作りなさい」と言ってくださいました。



教会の内部は、檜材の丸天井が素朴で落ち着いた雰囲気です。

光あふれていますね。



教会は1783年に建てられ、塔と礼拝堂が19世紀後半に建て増しされたそうです。


ちなみにエッスル先生は、即興演奏の名手なのです!!

アカデミー期間中に、エッスル先生のオルガンコンサートがアルトミュンスター教会で開かれ、初めて聴いてすごくびっくりしました!

スクリーンに古いモノクロのサイレント映画を上映して、その映画に合わせて、オルガンを即興演奏するというチャレンジングなコンサートです。鍵盤を弾きつつ、ストップを動かして音色を変えつつ、シンバルや太鼓などの効果音を鳴らすという、エッスル先生の超人的な即興演奏に感動しました。


別の日に、エッスル先生の即興演奏の講義も受けました。いきなり「今日はドリア風で弾いてみよう」などと言われ、今では教会旋法の一つにドリア旋法と呼ばれる音階があると知っていますが、当時は意味が分かりませんでしたね。


2022/01/08 14:00

グムンデンの思い出④
オーバーエスターライヒで最も古いカトリック教会の一つ、Pfarrkirche Altmünster(アルトミュンスター教区教会)にも訪れました。



アルトミュンスター教会の歴史は8世紀に建てられた修道院にまでさかのぼるそうです。

1150年頃にロマネスク様式の教会が建てられ、八角形の塔はその当時のまま今も残っています。

15世紀後半にゴシック様式の礼拝堂が塔の隣に建て増しされました。写真を見ると、建材の違いがはっきり分かりますね。



高祭壇はネオゴシック様式、左側の祭壇はバロック様式、説教壇はロココ。

時代の異なる様式が同時に並んでいて、この教会の長い歴史を感じさせますね。



ロマネスク様式のアーチ型のステンドグラスが美しいですね!



塔には四つの窓がありました。



オルガンは19世紀後半の制作だと思われます。



教会の外壁に、修道院時代の壁の一部が保存されていました。

考古学的に貴重そうですね。


2022/01/08 13:30

グムンデンの思い出③

グムンデン市内のEvangelische Pfarrkirche(福音教区教会)も訪れました。

カトリック教会の祭壇と比べて、プロテスタント教会らしく落ち着いた雰囲気ですね。

ステンドグラスが美しいです!



この教会のオルガンも2階にあります。

オルガンの装飾もシンプルで素朴ですね。パイプがアーチ型に配置されていて、壁のステンドグラスが見えるように設計されているのが見事でした。



オルガンの向こうに見えるステンドグラスが、こちらです。



竪琴を持っている王冠の男性なので、ダビデではないかと思います。

細やかな植物模様が美しいですね。



ちなみに、オルガンの設置されている2階へ上がるには、こんなに狭い階段を登ります。



教会の外観はネオゴシック様式ですね。

プロテスタントであったヴォルフ家の支援で、1871年から1876年までに建造されたそうです。


ザルツカンマーグート地方のほかの町と同じように、グムンデンでも宗教改革と対抗宗教改革(再カトリック化)のせめぎ合いで、この教会が建てられる前には血なまぐさい闘いの歴史があったそうです。

1550年から1624年にはグムンデンに福音派の牧師がいましたが、1599年に教区教会が再カトリック化され、福音派は市壁の外に教会を建てました。1626年、住民はカトリック信仰を公言するか、国を離れるよう求められ、オーバーエスターライヒ農民戦争へと至ります。グムンデン市の門前にある町では2000人以上の人々が反政府側で亡くなり、反乱は鎮圧されました。前回ご紹介した、近くのトラウンキルヒェン修道院をイエズス会が引き継いだのは、この対抗宗教改革の流れです。

1781年、皇帝ヨーゼフ2世が寛容令を出し、プロテスタント信仰を公言しても生きていけるようなり、ハノーバー家が1860年代半ばからグムンデンで亡命生活を送るようになったことで、プロテスタントの信徒が増えていったそうです。


こちらの教会には昼間だけではなく、夜もお邪魔して、翌日のレッスンに向けて練習に励みました。


2022/01/08 13:00

グムンデンの思い出②

わたしたちはグムンデンの街中から郊外まで、さまざまな教会にお邪魔して、レッスンを受けました。

教会によって、それぞれオルガンが造られた年代や様式、音色など異なり、とても面白かったです。



こちらは、トラウン湖畔にあるPfarrkirche Traunkirchen(トラウンキルヒェン教区教会)の祭壇です。

見てください、このバロック様式の豪華な装飾!!

カトリック教会は、マリアや天使や聖人の像が飾られていて、金ぴかなのが多いですね。


マリア崇拝や聖人崇拝には詳しくないのですが、祭壇画は「聖母戴冠」だと思われます。

鍵を持っている聖人像がペテロ、書物と剣を持っているのがパウロでしょう。



トラウンキルヒェン教会のオルガンは、礼拝堂の2階に設置されています。

1階の会衆席に座って聴くと、オルガンの音が天から降ってくるように感じられます。

ヨーロッパの教会では、このような造りが多いです。

オルガンも天使の像で飾られていますね!



こちらのオルガンでアイ先生とジェームズ先生のレッスンを受け、J.S.バッハのトッカータとフーガ ニ短調 BWV565を弾きました。



教会の外観は、オルト城と同じく丸屋根でした。

壁のフレスコ画に歴史を感じますね。


トラウンキルヒェン教会の歴史は、西暦632年に建てられた修道院までさかのぼるそうです。1327年の火災で焼失した後、ベネディクト会によって再建され、1632年の二度目の火災の後、修道院を引き継いだイエズス会が現在まで残るバロック様式の教会を建てたそうです。1773年に修道院は解散し、教区教会となりました。


2022/01/08 12:30

グムンデンの思い出①
学生時代に、オルガンの勉強にオーストリアへ行きました。

今回は、このオルガン旅行の思い出を書こうと思います。


わたしは、オーストリア・バロック・アカデミーというサマースクールに参加しました。
アカデミーを主宰するのは、ウィンナー・アカデミーという古楽器オーケストラを率いるオルガニスト、ハーゼルベック先生です。


アカデミーはオーストリア、ザルツカンマーグート地方のGmunden(グムンデン)で行われました。


グムンデンは森と湖に囲まれたリゾート地で、トラウン湖畔にSchloss Ort(オルト城)が建っています。

この白壁とタマネギ屋根の建物に、オルト城の礼拝堂があります。

湖に浮かぶ島に建てられていて、ザルツカンマーグートで最も古い建物の一つです。


遠くから眺めると、湖の上にお城が浮かんでいるように見えます。とても美しいですね。

この湖の城は909年にすでに建っていて、1626年の火災で焼失後、現在の形に再建されたそうです。


湖の城と橋でつながった陸側のお城に、わたしたちアカデミー生が宿泊しました。

バロック・アカデミーでは、名前の通り、古楽奏法を勉強します。

声楽科、弦楽科、通奏低音科といろいろあって、わたしはオルガン科を受講します。

オルガン科は、ドイツ人のエッスル先生、アメリカ人のジェームズ先生、日本人のアイ先生に指導を受けました。

アイ先生は、その当時から現在までイタリアを拠点に活動されています。


声楽、弦楽、チェンバロなどは、オルト城内で講習を受けますが、オルガン科はグムンデン各地の教会をめぐり歩いて講習を受けました。


2022/01/08 12:00

プロフィール

ロシア文学が大好きです。 2012年2月からロシア語を勉強しています。

NOVEL DAYSで活動中です。
...

更新中のテーマ

完成テーマ

アーカイブ

ページトップへ