脱税事件の裁判を傍聴した話
先日、霞が関にある東京地裁の裁判傍聴に行ってきました(夫が)。
例の水漏れ事件において、幸いにも善い弁護士さんに助けてもらえたわけですが、弁護士選びをしていた時は心が折れて泣き寝入りする一歩手前の段階でした。
自分たちが今まで裁判や法律に関して無知であったこと、そもそも関心自体を持っていなかったことを反省したわけです。
それで後学のために、裁判の傍聴に行ってみようということになりました。
(事件の当事者でもないのに夫婦そろって傍聴するというのもあれなので、夫が一人で傍聴してきて、わたしは夫から聞いた話を書いています)
傍聴するのは殺人や傷害ではなく、主に詐欺などの事件です。
裁判の傍聴をすると、報道では知ることができない事件の全容、詐欺の具体的な手口、なぜ被害にあったかなどが詳細に分かるので、大変勉強になるのです。
傍聴に行くのは今回が二度目。
一度目のときは、裏口入学詐欺の事件が記憶に残りましたね。
今回の傍聴のうち、1件は脱税事件で、もう1件は薬物事件でした。
脱税事件はですね、暗号通貨で得た利益を意図的に申告しなかったというやつです。
暗号通貨ですよ!
暗号通貨関連の申告漏れはよくあることで、「知らなかった」として修正申告した上で、加算税も含めてきちんと納税すればいいだけなので、逮捕されて実刑なんてよほどの計画性と悪質さがあったということになります。
今回の事件では、2億円相当の利益を出していたのに、20万円しか申告しなかった! ということでした。
忘れないうちに事件のあらましを書いておきますね。
整骨院を営む男が、知人に誘われて、とあるセミナーの有料会員となったことが、この事件の発端です。
そのセミナーでエイダコインが熱いという話を聞き、エイダコインに100万円ほど投資します。
なんと、セミナー講師の予知? が本当に当たり、1億円相当の利益を出してしまったのです。
ネット広告でよく見かける情報商材系の怪しいセミナーって、十中八九詐欺、いや、十のうち十が詐欺ですよね。
ところが、この男が会員となったセミナーは、まさかの当たりだったのですね。(読みが当たったのではなく単なる偶然だと思います)
と言うか、そんないかにも怪しげなセミナーに誘う「知人」って、一体どんな「知人」なんでしょうね……。
整骨院を真面目に営んでいれば、欲を出して逮捕されることもなかっただろうに……。
エイダコインの投資でひと山当てた男は、最初のセミナーとは別のセミナーの会員権を200万円ほどで買いました。
新たに入会したセミナーのおかげで脱税を指南する輩との人脈ができ、脱税で得た利益の8%ほどを手数料として支払う約束で、脱税の手引きをしてもらいます。
男が投資で得た利益はこのとき2億円相当にまでなっていました。
脱税指南役は「脱税」とは言わず、「節税」という言葉を使っていますが、解釈違いとかで争う余地なく「脱税」なので、こうして逮捕されているわけです。
脱税の手口は、まずドバイに会社を作り(もちろんペーパーカンパニー)、ドバイの株を売買したことにして、海外から複雑なルートで迂回送金をするというものでした。暗号資産は20万円しか申告していません。
いくら迂回送金をしたとしても、それまで整骨院を営んでいた男の口座に、いきなり海外から総額2億円が振り込まれたら、怪しさマックスですよね!
これでなぜバレないと思うんでしょうねぇ……。
そのころには本業の整骨院を畳んで、不動産賃貸業にジョブチェンジしていたそうです。
整骨院を真面目に営んでいれば逮捕されることなどなかったのに(二度目)。
なぜ数百万払って、そんな怪しいセミナーの会員権を買おうと思うのか……。
利益を出したら税金を納めるのは当たり前のことです。
その当たり前のことを、いかに不当に損しているかと勘違いさせ、言葉巧みに脱税の手引きをする輩がいるわけですね。
セミナーの仲間たちはみんな「節税」をしているんだから、自分もやるべきだ、絶対にばれないんだから、などと思うんでしょうね。
脱税指南役が「これからはテレグラムを使いましょう」と言っているラインでのやりとりが、ばっちり証拠として出されていました。
日本国内でわざわざテレグラムを使うのは反社ばかりとよく言われていますが、本当なんですねぇ。
と言うか、どうしてそういう罪が重くなる会話(意図的に隠匿しようとしたという証拠)をうかつにラインでするんでしょうね。
所属するコミュニティによって常識って異なりますよね。
明かな違法行為に対して、それを違法だと言う人がいない、正しい正しいと言う人ばかりの歪んだ社交界で交流をつづけていたら、自分の常識も歪んでしまうのでしょうね。
教訓としては、怪しいセミナーには近づかないということですね。
脱税事件の話はこれで終わりです。
ちなみに、このエイダコインという怪しい暗号通貨なんですが、ピーク時は850倍まで暴騰したという話です。
それで、日本国内でも一時的にエイダ長者になった人たちが出たのだとか。
しかし、エイダ長者の多くは、二匹目のドジョウを狙って他のクズコインに交換した結果、素寒貧になってしまい、手元に現金がないにも関わらず、到底納められない巨額の追徴課税を求められるという恐ろしい事態が続出したのだとか……。
暗号通貨は現金化した時だけ課税されると思われがちなんですが、現行法では、暗号通貨同士の交換も課税対象なのです。
「暗号通貨同士の交換は非課税」という誤情報がネットで出回っていますが、騙されてはいけません。
暗号通貨同士の交換で1億円相当の利益を出しても、円と交換しないかぎりは、預金口座にその1億円は存在しませんよね。
しかし、その1億円相当の利益に対する所得税約4000万円は、現金(日本円)での納税を求められます。
え、手元に1億円がないのにどうやって払うの? って思いますよね。
暗号通貨は価格の乱高下が激しいため、納税のタイミングで暴落していたら、保有している暗号資産を現金化しても全く足りないという不幸が起こり得るのです。