活動報告

『ブックガイド』に1冊追加
『【ブックガイド】人生は、断片的なものでできている』に、アティーク・ラヒーミー『悲しみを聴く石』を追加しました。

「本で世界とつながろう」と題した章の最後に追加しています。


アティーク・ラヒーミーはアフガニスタン出身の作家で、『悲しみを聴く石』はゴンクール賞受賞作です。

ミステリ仕立てということもあり、ネタバレなしで3000字以内でご紹介していますので、どんな結末を迎えるのか、ぜひ実際にお手に取ってみてほしい1冊です。



わたしが本書を最初に読んだのは、2012年9月の読書会でした。

今回、久しぶりに読み返してみて、男性作家と言われなければ分からないほど、女性心理を見事に描いていると思いました。


ソ連によるアフガニスタン侵攻は、1978年に勃発して1992年までつづきました。

作者がフランスに亡命したのは1984年、この戦争に真っ只中に当たります。(兵役義務を拒否するためだったそうです)

9日間かけて徒歩で国境を越えてパキスタンに入り、そこからフランスに亡命したのだとか。


作中に描かれている戦争は、作者が体験した戦争(ソ連対ムジャーヒディーンの戦争)をイメージしているでしょう。

そして、「女」の家に押し入る兵士たちというのは、服装や台詞から「ムジャーヒディーン」(のちの「ターリバーン」になっていく男たち)だと思われます。


しかし、本書が発表された2008年当時は、アメリカによるアフガニスタン侵攻の真っ最中でした。

アメリカによるアフガニスタン侵攻は、2001年から2021年までつづきましたね。


誰と誰が戦っているかは微妙に違いますが、戦いの構図自体はほぼ同じ(外部勢力が圧倒的戦力で攻めてきて内部勢力がゲリラ戦を戦う)なので、本書を読んでいると、違和感なく「現在の戦争」(アメリカ&連合国対ターリバーン政権の戦争)だと思えるのです。

これは作者が、具体名を一切出さずにその場の雰囲気だけで、読者に想像させていく表現力のなせる業だと思います。


とは言え、80年代をイメージして書いた(であろう)作品が2000年代に読んでも「現在」のこととして通じるというのは、良いのか悪いのか……


そう言えば、『シャーロック・ホームズ』のワトソン医師は、第二次アフガニスタン戦争で負傷して帰還した従軍医師という設定でした。

BBCが現代を舞台に翻案したドラマ「シャーロック」を見たとき、ワトソンは原作と全く同じく、アフガニスタン帰還兵という設定でしたね。

19世紀末に書かれた人物設定が、そのまま21世紀に通用するというのもおどろきです。

どれだけ戦争がつづいている地域なのだとあらためて思いました。


2024/04/06 11:47

『林檎が丘読書クラブ』更新しました
NOVEL DAYSで連載中の『林檎が丘読書クラブ』を更新しました。

今回の課題図書は、ヤスミナ・カドラ『テロル』です。

『テロル』編は全5話で完結、おまけとして次回予告が1話あります。


昨年10月7日のハマースによるテロ事件があって、今回の本が選ばれました。

前回の『真夜中の子供たち』はあらすじを追うだけで大変な長編でしたが、今回の本は長さがちょうど良かったので、より深い分かち合いができたように思います。


本書を未読であっても、議論の内容がわかるよう、本文の引用やあらすじの解説をできるだけ多く入れてみました。(既読の人にはちょっとくどいかも)

中立であるよう心がけたつもりですが、上手く伝わればよいのですが……

皆さまにとってパレスチナとイスラエルを身近に感じる一助になれば、幸いです。


ここからはあとがきというか余談です。

出版社のミルトスから「謹呈」と書かれた封筒が届いてですね。

開けてみると、ミルトス社の隔月雑誌『みるとす』2023年12月号が入っていました。

10月7日から始まったガザ・イスラエル戦争の具体的かつ専門的な分析・解説が寄稿されており、とても勉強させてもらいました。

ありがたく無料で読ませてもらいましたが、年間購読すると3600円だそうです。

出版社もふだんはこんな風に無料で配ったりしないでしょうけど、イスラエルの立場からすると日本は偏向報道なので、被害の実態をもっと知ってほしいという切実な思いがあるのでしょう。


ガザ地区に関するニュース映像は刺激が強すぎて、意識して視聴しないようにしていましたが、文字情報として読んでも、やはりショックが強いですね。

みるとす誌で佐藤優さんがこう書いていました。

「ハマスのテロはユダヤ人であるというだけの理由で殺害を認める属性排除の論理に基づくものです。ハマスはナチスと同じ発想をし、行動しているのです」


なぜテロリストは生まれたばかりの乳児まで平気で殺害できるのか、わたしには理解できませんでしたが、「属性排除の論理」という分析に腑に落ちる思いがしました。

ハマースは「イスラエル殲滅」を公式に掲げる組織です。

サイードやアモス・オズはユダヤ国家とパレスチナ国家の共存の道を模索していましたが、ハマースは「共存」を目指してない。現にそこに暮らしているユダヤ人を皆殺しにしたいと思っているわけです。今回のテロで、ハマースはイスラエル国籍を持つアラブ人たちも「裏切り者」として殺害しています。

自分たちの生存権を認めず、ナチスと同じ論理で行動するハマースと、イスラエルが「共存できない」と考えるのも当然のことだと思いました。



昨年末に、パレスチナ・オリーブさんが発行する機関誌「ぜいとぅーん」第75号(2023年12月15日発行)が届きました。

こちらでは、10月7日以降のパレスチナ側の状況が詳しく書かれていて、読んでいて悲しい気持ちになりました。

わたしは学生の頃からパレスチナ・オリーブ代表の皆川万葉さんの活動を応援しているのですが、皆川さんのルポを読んで思うのは、「共存」を願っている人々は必ずいるということです。


パレスチナ・オリーブさんが取引している「ガリラヤのシンディアナ」は、アラブ・パレスチナ女性とユダヤ女性がともに運営しています。地道な活動を三十年続けている団体です。

ハマースが目立ちすぎているせいで、全パレスチナ人がユダヤ人絶滅をのぞんでいるかのように見えてしまいますが、決してそうではないということです。


そうは言っても、イスラエル領内でのユダヤ人によるパレスチナ人に対するヘイトクライムは頻発しているし、イスラエル企業によるパレスチナ人労働者の解雇も急増しているそうです。


いくら「共存」をのぞむ人々が地道な活動をしても、こういう平和な運動は暴力に弱く、憎悪が憎悪を生むのだと思い知らされ、無力感しかないです。


2024/04/01 20:37

『林檎が丘読書クラブ』更新しました

NOVEL DAYSで連載中の『林檎が丘読書クラブ』を更新しました。

今回の課題図書は、サルマン・ラシュディの『真夜中の子供たち』です。

『真夜中の子供たち』編は全4話で完結、おまけとして次回予告が1話あります。


長編なので、あらすじと登場人物をまとめるのがとても大変でした。

(wikiよりも詳しいあらすじです)

成瀬川さんから励ましていただき、1か月以上かかってようやく公開することができました。

1960年代のインドとパキスタンの地図も掲載しているので、作品理解の助けになると思います。


この作品、読み通す(目で字を追う)だけでもかなり時間を要するのですが、書かれている内容をきちんと理解するのはもっと難しい……

今回の読書会記録が、これから同じ本を読もうとしているみなさまのお役に立てればさいわいです。


2024/02/09 20:26

「バイブル・スタディ・コーヒー」更新しました

NOVEL DAYSで連載中の「バイブル・スタディ・コーヒー ~スラスラ読める! 聖書入門」を約1年半ぶりに更新しました。

最新話のテーマは、「ヤコブの子供たち」です。


ヤコブがラケルとレアをめとった話のつづきとなります。

今回の話のために、ヤコブ・ファミリーの人物関係図(家系図)を作成したのですが、なんと妻が4人、息子が12人、娘が1人という大家族なので、1枚の画像にまとめるのに苦心しました。

このヤコブの12人の息子たちが、やがてイスラエル十二部族の祖となっていくというストーリーです。

お時間のありますときに見ていただけましたら、さいわいです。



二人の妻が競い合うように次々と子供を産んでいき、死にもの狂いの争いを繰り広げる話は、わたしも女性ですので、読んでいて辛いものがあります。

息子を産むたびに「今度こそ……」「今度こそ……」と夫の愛を求めるレアの姿が痛ましいです。


ラケルだって、夫から一心に愛されているのだから、それで満足すればいいのではと思うのですが、こう言えるのも現代社会だからなのでしょうね。

古代社会にあっては、いくら夫の愛があっても子供がいなければ意味がなく、「わたしは死にます」と言うほど思いつめるものなのでしょう。



アフリカ諸国に関する最新の研究によると、一夫多妻制下における妻同士の競争関係が出生率上昇につながり得ることが明らかになっているそうです。(2019年の論文)


一夫多妻制と出生率との関係は、人口学においても人類学においても、さまざまな議論がされてきました。

これまでの定説は、

定説1:妻同士のライバル関係が出生率上昇をもたらす(合理的選択)

定説2:複数の妻がいる場合、一人の妻に対して夫との性交渉の頻度が自然と少なくなるため、出生率低下につながる(自然効果)

定説3:女性のエンパワメント(女性が教育を受け、性と生殖に関する知識や意思決定権を持つこと)が出生率低下につながる


定説1と定説2は矛盾していますが、どちらも的を得ていますよね。

今回の話で言えば、レアとラケルのライバル関係(定説1)が当てはまります。

レアは夫ヤコブから嫌われていたので、夫と共寝する頻度がラケルと比べて極端に少ないはずです。

そのため自然効果(定説2)によりレアの方が産む子供の数が少なくなるというのが人口学の論理ですが、実際にはレアの方が子供をたくさん産んでいますね。

これが自然ではあり得ないことなので、神のお計らい、奇跡、祝福と言えるわけです。


また一般的に、途上国の女性がエンパワメントすれば少子化になると考えられてきましたが、実はそうでもないと言うことが、最新の研究では分かってきたそうです。

一夫一婦関係にある女性の完結出生児数と一夫多妻制下にある女性の完結出生児数を比較すると、約30年前は一夫多妻制下の方が少ない(定説2が当てはまる)ですが、この30年の間に数字が逆転し、現在は一夫多妻制下の女性の方が完結出生児数が多くなっているのだとか。


一夫多妻制下では、女性の教育水準が高く妊娠と出産に関する知識や意思決定権が強いほど、妻同士の競争関係が良い意味で作用し、出生率上昇につながる結果になっているそうです。

つまり、性と生殖に関する意思決定権が夫にある場合は、一夫多妻制下においても、自然効果によって少子化になるということです。(30年前の数字が裏付け)


今回の話で言うと、もし神がレアを顧みなかったとしたら、ヤコブが愛したラケルはもともと妊娠しにくい体質だったわけですから、一人も子供が生まれなかったという可能性も十分あり得るわけですね。

うーん、興味深いですね。


参照:

日本貿易振興機構アジア経済研究所『IDE スクエアー途上国研究の最先端』(2020年)より


2024/01/22 22:01

新連載『ぎゃらりい熊四手』
『ぎゃらりい熊四手』と題したチャットノベル作品を試験的に始めました。

今回はクリスマスにちなんだトイとプレートをご紹介しています。


わたしはNOVEL DAYS以前に、別名義でコレクターズ・ブログを書いていました。

2010年から、何度から中断を挟みつつ2018年まで続けたので、長く続いたほうかと思います。

そのブログを書き始めた当初は、ネット史におけるブログ全盛期で、趣味のブログを通じた交流というのも盛んでありました。


わたしがブログを休止している間、ブログを通じて仲良くなった共通の趣味の収集家さんたちは、ほぼインスタへ移って、ブログを続けている人がほとんどいなくなってしまって……

わたしも流れでインスタに登録してみたものの、写真だけというのは物足りず、あえなく退会。


やっぱり、どういう来歴の品なのか、その時代背景や作家のこだわりポイントなど、熱く語りたいわけです。

わたしは、ただモノを羅列するだけじゃなくて、そのモノに付随するストーリーを書きたいのだなと、あらためて気づいたのでした。

どこかでつづきを書きたい思いながら、早数年。


それでNOVEL DAYSとnote、どちらで書くか迷ってですね。

ワード検索してみて、デザイナーズトイをテーマとしている記事は、NOVEL DAYSではゼロ、noteでもほぼなし。

あんなに会員数が多いnoteですら、キッドロボットのダニーを取り上げている記事はゼロでした。

なので、結局、どこで書いても同じだろうと思って、編集画面に慣れているNOVEL DAYSで書くことにしました。


タイトルの「熊四手」というのは、樹木の名前です。

キャラクターの名前も木々からとりました。


ひきつづき、デザイナーズトイ、ロウブロウアート、ヴィンテージなど、日々の生活には全く役立たない話を書きたいと思っています。


2023/12/25 23:23

Coldplayのライブに行ってきました!

NOVEL DAYSで連載中の『有機交流電燈 ダイアローグ』に「Coldplay 来日公演 in 東京ドーム」と題して、11/6のライブ体験記を前後編で書きました。

お時間のあります時に、気軽に楽しんでいただければ、うれしいです。

どうぞよろしくお願いいたします。


今回のライブのチケットの抽選申込をしたのが5月、当選のお知らせが6月のことでした。

なんと驚くべきことに、2日間の公演のうち、2日間とも当たったのです!

そんなことある!?

これで、今年の運を使い果たしたんじゃないかと思いました。


とは言え、Coldplayを生で聴きたいファンは世界中にたくさんいると思ったので、自分たちは1日目に行くことに決めて、2日目の分はリセールに出しました。

わたしたちが譲った分のチケットは、11/7の東京ドームに集まったファンのうちのどなたかの手にあったことでしょう。


海外アーティストの来日公演は予期せぬ事情で中止になることがままあるので、公演3日前くらいまで、本当にちゃんと来日してくれるだろうかと不安になり、緊張して悪夢を見たりしたのでした……


当日の感動は体験記の方に書きましたが、見どころ&名曲が多すぎ、詳しくふれられなかった曲ばかりで、書き足りない気持ちですが、前後編で約1万字になってしまったので、あきらめて公開することにしました。

演出や映像効果も本当に美しかったです。


コールドプレイのメンバー全員がすでに40代半ばなのですが、2時間ぶっ通しで歌い続け、ドラムを叩き続け、ベースやギターを弾き続けられる体力がすごい、さすがプロだと思いました。

いつまでも元気で、音楽活動を続けてほしいです。


今回のツアーのジャカルタ公演では、イスラム保守強硬派によるライブ中止を求めるデモが行われて、警察が出動する事態になっていました……

コールドプレイがLGBTの権利を擁護する立場にあることが理由です。

インドネシアでは過去にも同様のデモが行われていて、レディー・ガガのライブが中止に追い込まれています。


実際、クリス自身が政治的な発言をしているし、政治的な主張のある歌を歌っているので、どうか暗殺されませんように、と願うばかりです。


今回のツアーは環境的配慮を非常に意識しているので、「CO2排出量が多くなるから、メンバーの移動にはなるべくプライベートジェットを使わないようにして、できるかぎり民間ジェットを使う」と表明していますが、セキュリティのためにもプライベートジェットを使って!! と思ったのでした。


2023/11/25 11:32

ヨハンナ・シュピリ『ハイジ』

NOVEL DAYSで連載中の『聖書と文学 ~名作で読む聖書の世界』に、ヨハンナ・シュピリの『ハイジ』を二話に分けて追加しました。

お時間のございます時にお読みいただけましたら、さいわいです。

どうぞよろしくお願いいたします。



ヨハンナ・シュピリの『ハイジ』については、だいぶ前になりますが読書ブログにも記事(2013年5月27日付)があります。

ブログで書いた時は、角川文庫版の『アルプスの少女ハイジ』から引用していました。


それが最近、古典新訳文庫から新しい訳が出ていることに気づき、「100分de名著」にも取り上げられていたみたいで、今回あらためて読み直し、NOVEL DAYSの記事を書きました。


古典新訳文庫で『ハイジ』を読み返してみて、1章から14章までの本編(本来はそこで完結)の「放蕩息子のたとえ」のモチーフの使い方が見事で、最初から最後まで緻密に配置された完成度の高い作品だなと感じました。

作者の本編の力の入れ具合と比べると、続編はさらっと流して書いた印象です。


大人になって読むと、ハイジの祖父の教育ネグレクトはかなり問題だと思います。祖父がハイジ本人のためを思ってやっている風に装っているところが、より悪質だと思うのです。

一方、ハイジ自身は虐待を受けている自覚がないので、せっかく教育を受けられる環境に連れ出してもらえたのに、おじいちゃんのもとへ帰りたいと泣くんですよね。難しい問題だなぁと思うわけです。




『ハイジ』の話から逸れますが、現代の、それも先進国であっても、教育ネグレクトの家庭で育つ子供は実在するというのを教えてくれるのが、タラ・ウェストーバー『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』(ハヤカワ文庫、2023年)というノンフィクションです。

著者であるタラ・ウェストーバーは、1986年にアイダホ州で生まれましたが、彼女には出生証明書はなく、学校に通うこともなく、家族という小さな共同体に「幽閉」されて育った女性です。


彼女の父親はモルモン教の信徒でかつ、「サバイバリスト」と呼ばれる狂信的な陰謀論者だったそうです。

世界はイルミナティという闇の組織が支配していて、そこから逃れる必要があるという妄想に凝り固まっているため、国家による洗脳を避けるために子供たちを学校に行かせない。

彼女の母親はそういう夫の妄想に深く感化されていて、彼女の兄も両親から受けた思想教育に洗脳された状態だったという……。



似たような考え方の男性が、名匠タルコフスキー監督の映画『ノスタルジア』にも登場したのを思い出しました。

世界の終末が訪れると本気で信じ込み、家族を七年にわたって幽閉した男。

その男は大音量で第九が流れるなか焼身自殺をするので、その場面だけがトラウマ的に記憶に残る映画です。



2023/10/01 22:19

noteで新連載
noteで新連載『きものがたり』を始めました。


せっかく登録したのだから何か書こうと思い、着物エッセイを書くことにしました。

以前、NOVEL DAYSで『夏を染めて』と題した掌編を書いたとおり、わたしは着物が大好きです。


そう思い立って書き始めたものの、noteの編集画面はNOVEL DAYSとけっこう違っていて、まだ慣れません。とくにルビを入れる方法が難しい。


もともと読書ブログを書いていたBloggerの編集画面がいちばん難しいのですが、その「難しさ」は想定の範囲内なわけです。


noteはまったく未知のシステム。

南ノさんや桐乃さん、成瀬川さんはnoteもNOVEL DAYSも両方使いこなしておられて、すごい尊敬します。



「海の日」の三連休は、実家の母の遺品整理をがんばりました。

初めて見る写真や手紙、だれのものか不明な日記など、謎なものがたくさん見つかりました。

一周忌も無事終わって、気持ちに区切りがつき、少しずつ片付けなければと思っています。

三日間がんばりすぎて、明けたウィークデイは疲労困憊でしたが……。


着物の話題というのは、その性質上、家族の話とのつながりが深いんですよね。

わたしの持ち物も、大半がだれかから譲り受けたものです。


そのまま着る場合もあれば、お直しする場合もありますし、糸を全部ほどいて(洗い張り)まったく新しい姿にリメイクする場合もあります。

そんな奮闘の話もいずれ書けたら、似たような状況のかたのお役に立てるかなと思います。


お時間のありますときに、おつきあいいただければうれしいです。

よろしくお願いいたします!!


2023/07/27 23:53

台湾旅行記、完結!
『有機交流電燈 ダイアローグ』に「台湾に行きたいわん!」と題して連載していた台湾旅行記ですが、本日公開分でようやく完結しました。


④は九份(+金瓜石)がテーマでした。

これを書いている間にちょうど成瀬川さんが『修羅街挽歌 山口県るるせトリップ』の連載を始められて、その成瀬川さんの山口旅行記に触発されてですね、九份一帯の鉱山の歴史を掘り下げて書くことにしました。

文字数が多くなってしまったので、「ゆっくり解説」とか「ずんだもん解説」のような感じで、お時間のあるときに楽しんでいただければうれしいです。



九份と言えば、『千と千尋の神隠し』の温泉街のモデル地では、という話が有名ですよね。

実際に足を運んでみると、そんなに言うほど似ているかな……?

と疑問に思ってですね。

どちらかと言えば、銀山温泉の方が似ている気がするわけです。

ただ、似ていると感じる人が実際に多くいるのはたしかなので、どうしてそう感じるのか、自分なりに答えを出してみました。



九份を歩き回っていて、目についたのは、廃墟のまま残っている建物です。

観光客向けの土産物屋さんや飲食店が立ち並ぶ商店街から、ひっそりとした路地に入ると、屋根も床も抜け落ちて、内部に草木が生え、外壁だけとなって悄然と佇んでいる建物をあちこちで見かけて、記憶に残りました。

もとは住居だったのか、お店だったのか、どんな暮らしをしていたのか、想像がふくらむとともに、手つかずのまま放置されているのが寂しい気持ちになります。

100年家屋を修復・保存して使っている「九份茶坊」のような素晴らしい実例がありますが、もちろん街中の全ての建物がリノベされているわけではないんですね。



水湳洞の「十三層遺跡」(金瓜石で採掘された銅の選鉱・製錬所跡地)は、『天空の城ラピュタ』に似ているなんて言われているんですよね。

黄金色の川が流れて、黄と青のグラデーションがかった陰陽海が近くにあり、ファンタジーな美しさがある場所なのですが、実は鉱物との化学反応による有害物質が幻想的な光景を生み出しているのです。(なので近くで見ることはできません)


美しいけれど、毒……!!

(「美しさは罪~」という歌が脳内に流れるわたし)


長年の鉱山採掘がもたらした環境汚染がそのままになっているわけですね。

やはり資源採掘の歴史というのは功罪あるなと思うのでした。



そして、③に南ノさんから教えていただいたカットフルーツ屋台の話を追記しました。

南ノさんのおかげで、あのときの屋台のおじさんの真意がよくわかりました!

本当にどうもありがとうございます!!


2023/07/12 22:21

台湾旅行記
『有機交流電燈 ダイアローグ』に「第18話 台湾に行きたいわん!①(台北101&故宮博物院)」を追加しました。


本文でも書いていますが、GWに台湾旅行に行ってきました!

旅行記を書き始めたら、書きたいことがどんどん増えていって、なかなか書き終わらず、早1か月経ってしまいました……(遠い目)


南ノさんと交流させていただき、『台灣懶惰日記』や『台灣懶惰日記~其の貳~』などをお読みして、台湾という国の文化や歴史に興味を持ち、実際に行ってみたいと思うようになりました!

有隣堂や誠品生活に行くようになったし、わたし、南ノさんから良い影響をたくさん受けてます。

南ノさんに感謝の気持ちでいっぱいです。


ちなみに、我が家が台湾旅行をしたという話を聞いて、夫の同僚も台湾旅行を決めてですね。

そのかたは7月頃に行くそうです。

台湾好きの輪が広がってますね!!


旅行記はしばらくつづきます(2~3話にまとめるつもりです)ので、おつきあいいただけましたら、うれしいです。


2023/06/11 13:54

『THE FIRST SLAM DUNK』はいいぞ!
ネタバレなしで『THE FIRST SLAM DUNK』の感想を書くという無謀な記事をお読みくださり、どうもありがとうございます!


エレベーターが止まってて、30階層から階段を歩いて下りた話は、夫の出社時のエピソードです。(わたしはそのときいなかった)


成瀬川さんが『早退届』「第335話 スラムダンクを観てきた!!」で次のようにおっしゃっていました。

「映画を観てない古参ファンはみんな連載当時のことがあたまをぐるぐる回るからなにか批判的なことを言う」


わかる!!!って思いました。

(最近の若者言葉ではこういうとき「それな!」って言うんでしたよね)


本文中でも書きましたが、子供の頃にふれたアニメや漫画の中で、バッドエンドやメリーバッドエンドの作品の方が、記憶に残っている場合が多いのも事実なんですよね。


作者がもともとバッドエンドを構想していたならともかく、「作者、ぶん投げたな」とか「打ち切られた?」などと読者に感じさせてしまう結末は、すごく納得がいかなかったですね。

そういう意味で、『スラムダンク』も『幽遊白書』も忘れられない作品です。

『エヴァンゲリオン』のテレビシリーズと旧劇場版も「気持ち悪い」が強烈で、よく覚えています。



『THE FIRST SLAM DUNK』の話でした。

張り巡らされた伏線がわざとらしくなくて、それら全てが見事に回収されたときの感動がすばらしかったです。

原作者本人が監督・脚本だからなのか、物語の完成度が高かったですね。


今、日本のみならずアジア諸国で『THE FIRST SLAM DUNK』が人気ですよね。

駅でスラムダンクのTシャツを着た外国人を見かけるたび、本当に人気なのだなぁと実感しています。

家族愛や成長物語というのは、国境がない普遍的なテーマなのだと改めて思いました。


2023/05/29 20:31

『ブックガイド』に1冊追加

『【ブックガイド】人生は、断片的なものでできている』に、アルベール・カミュの『異邦人』を追加しました。

「ノーベル文学賞を読んでみよう」と題した章の2話目に『異邦人』を新たに挿入しています。

(作品が発表された年代順に並べています)


『異邦人』は言わずと知れた名作で、何を今さらというか、すでにお読みのかたも多いですよね。

とは言え、まだ読んだことがないかたもいると思い、結末は明かさずに書きました。

(わたしの言うネタバレの定義は、勝ち負けの結果とか、主人公の生死などです)


『異邦人』の発表当時から言われている解釈が、ナチスによるフランス占領の比喩ないし寓話というものです。

これ、カミュの『ペスト』に対しても同じことを言われてたんですよね。

『ペスト』はコロナ禍で異例のベストセラーとなって、何十年かぶりに増刷されたと報道されていましたね。

2020年当時、『ペスト』を読んでいた読者は、文字通りの意味で、未知の病気に対して苦闘する人間ドラマとして読んだのであって、「ペスト=ナチス」とか思って読んでいた日本の読者はいないと思われます。


なので、『異邦人』も新しい視点で読んだら何か違うものが見えるんじゃないかと思い、今時の(ポストコロニアルな)読み方であえて書いてみました。

お時間のございます時に、お読みいただけましたらさいわいです。


また、読書ブログ「真空溶媒」の「アルベール・カミュ『異邦人』」(2020/06/21)は、がっつりネタバレ考察記事となっております。

記事の日付が2020年6月ですが、初稿を書いたのがその年でして、体裁ををととのえてブログに公開したのは本日です。

ブログ記事のほうでは、フランス語辞典を引っ張り出してきて、原題のétrangèrの意味は何か? といった内容について、マニアックに書いています。


2023/05/23 21:42

『バイブル・フード・レシピ』第1章完結

昨年8月末から書き始めた『バイブル・フード・レシピ』、入院・手術のため10月半ばに連載をいったんお休みしていましたが、今年の4月末から連載再開し、本日の更新でようやくひと区切りがつきました。

途中、長期休載をはさんだにもかかわらず、最後までお読みいただき、どうもありがとうございました!


コンテスト審査期間も終わったということで、連載再開以降のお話では過越祭や受難節の歌の動画を挿入してみたりと、自由に書きました。


作中の過越祭のパンのレシピ(材料の分量や手順、時間の決まりなど)は、Natzarim Yahshua Family Fellowshipというアメリカの教会が公開しているレシピを参考にして書きました。

このレシピに付記されている注釈がすごくて、聖書に書かれた五つの穀物のうち伝統的に使われていたのはどれか?、18分というタイムリミットはなぜか? などの議論を聖書を引用しながらすごく詳しく書いてあってですね。


ちなみに、そこで提示されていたレシピはフライパンで焼く場合とオーブンで焼く場合があり、オーブンを使う場合は「セラミックピザストーンをオーブンで1時間以上予熱しておくこと(華氏500度で)」と指示されていました。

ピザストーンというのは、ご家庭のオーブンを石焼窯にしてくれる便利アイテムですが、日本人でお持ちのかたは少ないのではと思います。


そのレシピでは興味深い注釈がもうひとつ書いてありました。作中ではマニアックすぎるので取り上げませんでしたが、面白いのでここで紹介しますね。


現在、ユダヤ教徒向けに市販されているマッツァー(過越のパン)は、大きな四角いクラッカーかウェハースのような見た目をしています。この四角いクラッカーは、東京のユダヤ教会の中にあるユダヤ食料品店でも箱入りで買うことができるんです。

でも、作中で作った平たいパンは、四角いクラッカーじゃなくて、柔らかく厚みがあり円形状でしたよね。


マッツァーが四角いクラッカーになったのは、実は歴史が浅くて、1800年代以降のことなのだそうです。

アシュケナジム(民族離散後にドイツ語圏や東欧諸国に定住したユダヤ人)たちが、保存性を高めるため、硬くて薄いクラッカーのようなマッツァーを作るようになったという話でした。

セファルディム(南欧諸国やトルコ、北アフリカに定住したユダヤ人)たちは、昔ながらのレシピ(つまり作中のレシピ)でパンを焼いていたそうで、昔ながらのパンは日持ちしないため、過越祭の期間中、毎日パンを焼いていたのだとか。


過越祭という伝統は今も昔も守られていますが、長い年月を経て、定住した土地の文化にあわせて、過越のパンの形も変化していったという歴史は、面白いなと思いました。



Natzarim Yahshua Family Fellowshipという教会は、メノーラー(七枝の燭台)をシンボルマークにしていて、律法を遵守し、ヘブライ語で礼拝をささげると書いてあったので、アメリカにあるユダヤ教会だと思ったんですよ。

しかし、よくよく説明書きを読んでみると、「創世記から黙示録まで、聖書を完全に信じる」、「イエスをメシアとして信じる」とはっきり書いているんです。


最初、ユダヤ教会だと思っていたので、「え!?」と思いましたね。

もしかして、この教会、Messianic Jew(メシアニック・ジュー)の集まりなのかも……? と思い至り、めちゃくちゃ驚きました。

この教会はアリゾナ州とミズーリ州の二か所で活動しているそうです。


当然のことですが、ユダヤ教徒にとって聖書とは旧約聖書のみを指します。そしてイエスはラビの一人にすぎないと考えており、メシアとして認めていません。

一方のメシアニック・ジューは、ユダヤ教徒としてのアイデンティティを持ちながら、イエスをメシアと信じるユダヤ人たちです。

アメリカ国内では17万5千人~25万人程度、イスラエルでは1万人~2万人のメシアニック・ジューが暮らしているそうです。


2023/05/20 20:15

チャット版にリライト

『有機交流電燈 アーカイブ』の第1話~第3話まで、チャット版にリライトしました。

先日から下書きにして少しずつ作業をしていましたが、再公開した際にあらためて見てくださり、どうもありがとうございます。


チャット版に合わせて、作品タイトルも『有機交流電燈 アーカイブ』から『有機交流電燈 ダイアローグ』に改題しました。

当初はブログの「アーカイブ」にしようと思って始めた作品でしたが、取り上げるテーマ的にチャットノベルの方が分かりやすいかなと思いまして、(チャットノベルはNOVEL DAYSならではの表現技法ですし)、アーカイブ要素は捨てて「対話篇(ダイアローグ)」でいこうと思った次第です。


第1話 映画『テネット』(ソ連時代の閉鎖都市とは?)

最初に映画を観た時から、作中の閉鎖都市はどうして廃墟なのかという疑問があったので、チャット版ではその疑問点をより掘り下げて書きました。


第2話 人間にも動物にも魂はない?(ラ・メトリの人間機械論)

当初、ラ・メトリの話をいきなり始めていましたが、ラ・メトリを知らないかたも多いでしょうし、まずは議論の前提となるデカルトの話を先にした方がより分かりやすいと思いまして、チャット版では前説部分を大幅に加筆してあります。

デカルトとラ・メトリの思想を比較することを通して、近代哲学における機械論を概観できればと思っています。

唯物論というのも多種多様で、感情や理性などの精神の働きは物質の作用と考える自然主義的唯物論は現代の脳科学を先取りしていますよね。人間の生産活動の歴史から生まれる必然的な意識の規定を説く史的唯物論なんてのもありますね。


2023/04/23 20:48

かぼすちゃん人気再び
4月3日から数日間、Twitterの左上のロゴが青い鳥からドージに変わっていて、びっくりしましたよね!!

イーロン・マスクがTwitter社を買収した際のユーザーとのふざけた約束事を本当に実行したもので、さすがイーロン・マスクと言うか。


このドージのロゴ、伝説のコナミコマンドでくるんと一回転するとか……!?

噂が流れてきて、わたしもわざわざPCでTwitterを開いて、入力してみました。


上上下下左右左右BA

(ドージがくるっと回る)


うわわわわわ、本当に回った!!(大笑)

なんだか久々に昔のTwitterに戻ったような、楽しい気持ちになりました。

わたしがいまのアカウントをつくったのは2010年なので、もう10年以上前の話です。


最近のTwitterって、

「新しい言論のプラットフォームに!」(キリッ)

という感じで仰々しくなって、押しつけがましいなぁと感じていました。

企業や政治家の公式アカウントが増えて、すごくビジネスの場になりましたよね。

ユーザーが増えたことで、いつどこから殴られるか分からないという、すごく殺伐した空気感もあります。


1クリックで1枚クッキーを焼く「クッキークリッカー」という、めちゃくちゃどうでもいいブラウザゲームが爆発的な人気を博した頃(2013年)のTLは、のんびりした時代だったなと思います。(クッキーババアと呼ばれていましたよね。覚えているかた、いらっしゃるでしょうか)


あとは、コルタサルの『南部高速道路』をオマージュした、「若冲展待機列SF」という大喜利が大流行していた頃(2016年)が、TLを眺めていていちばん楽しかったなぁ。(その狂気じみた待機列に実際に並んで若冲見ました。しみじみ)



Twitterのロゴがドージに変わったおかげで、再びドージのモデルである日本のかぼすちゃんに世界の注目が集まり、さまざまなニュースで取り上げられていて、うれしかったです。

かぼすちゃんの飼い主さんが驚きの声をビデオメッセージで寄せたり。

現在のかぼすちゃんは17歳とのことです。

元気で長生きしてほしいな。


せっかくなので、わたしが以前書いたドージコインにまつわるエッセイの表紙を新しく作り直しました。



以前の表紙絵はふつうの柴犬(notかぼすちゃん)の写真だったので、やはりドージコインを入れなければと思いまして、このようなデザインにしてみました。

ロケットのイラストはDenis Yevtekhovさんの作品(ライセンス取得済み)です。

本文は何も変わっていません。


残念ながら、現在ではTwitterの左上のロゴは青い鳥にもどってしまいました。

しかし、コナミコマンドの裏技はまだ生きています。

青い鳥がくるっと一回転してくれますよ!


2023/04/09 22:25

プロフィール

ロシア文学が大好きです。 2012年2月からロシア語を勉強しています。

NOVEL DAYSで活動中です。
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