読書日記

「海が走るエンドロール①」たらちねジョン

主人公は65歳のうみ子さん。夫を亡くし、ひとり暮らしとなった彼女は、ひょんなことから数十年ぶりに映画館を訪れます。そこで映像専攻の美大生と出会い、うみ子さんは自分のなかに眠っていた衝動とはじめて向き合うことになります。

「映画を撮りたい」


とってもよかった!

うみ子さんもすてきだけど、彼女が出会った美大生の海くんがこれまたすてきな人物で。うみ子さんは自身の年齢を気にして、学生たちのまえで思ってもない卑屈なことをつい口走ったりしてしまうのだけど、海くんははじめから一貫して、うみ子さんを年寄り扱いしたり馬鹿にしたりしない。そこがすごくよかったです。

あと、海くんの髪型と、細長い手足が個人的にどストライクです!(笑)

(ちなみに、うみ子さんは海くんのおばあちゃんと同年代だそうです)

海くんがうみ子さんに

「後悔したことありますか」

と尋ねてからの描写、海くんの背負ってきた過去のできごとが明かされる流れがとてもやるせなくて、胸が詰まります。

「自分が、知らないうちに人を傷つける。嘘をつかせてしまう」

その痛みを知るからこそ、うみ子さんのことを一度も否定しなかったのかなと。


「このマンガがすごい! 2022」オンナ編の第1位となった作品だそうです。

メジャーどころは避けたいあまのじゃくなわたしですが、試し読みで1話めを読んでおもしろかったので迷わず購入しました。

続きが楽しみです。

2022/01/18 00:54

「吾輩は猫であるが犬」沙嶋カタナ
何度か広告で出てきて、あまりにも続きが気になって、いつも利用している電子書籍ストアで見つけて購入。

110円でした。お、お安い……!

めっっっっっちゃ良かった!!(泣)

一話完結の短いお話なのに起承転結がしっかりあって、どうしようもなく悲しいはじまりからの、ちょっぴり笑えるエピソードなんかもあったりして、とにかく最高です。

飼い主に置き去りにされて悲しい末路をたどった犬が(これ、ほんとうに許しがたい……)「生まれ変わったら自由な猫になりたい」と願い、念願の仔猫として生まれ変わるお話。

この仔猫(中身は前世の犬のまま)、とにかくけなげで、何度読み返しても泣けてきます。

悲しい気持ちになりたくないので動物ものやお涙頂戴もののお話はなんとなく苦手なのですが、これはほんとうに刺さりました。好きです。

2021/09/15 09:13

「美しの神の伝え」萩尾望都
『ショートショートドロップス』という短編集のなかに萩尾望都さんの『子供の時間』という作品があり、それがとても印象に残って、萩尾さんのほかの小説も読んでみたいと思い、取り寄せました。

いや、うん、えらいものを読んでしまった。

そのひとことに尽きます。

最初に収録されているのが表題作『美しの神の伝え』。この作品だけ長いです。物語の世界に入り込んでいたので読んでいる最中は気づきませんでしたが、この作品単体で薄めの文庫本1冊ぶんくらいあります。

ほかはすべて短編で、うち漫画が2作品。

どの物語も一行めから、すぐにその世界に導かれます。すごい。

なかでも『守人たち』という短編がわたしはいちばん好きです。こちらはコメディで、ほかの作品とはだいぶ毛色が異なりますが、めちゃくちゃ笑いました。

新薬師寺の薬師如来が行方不明になり、たまたまそこに拝観に訪れた主人公が如来の不在というありえない事態に愕然としていると、「兄さん、これにはわけがおまんのや」と十二神将が語りかけてくるというお話。

途方に暮れる十二神将たちに活を入れ、行方不明の薬師如来の捜索をする羽目になった主人公。その珍道中もおもしろおかしくて笑いっぱなしでした。

平然とタクシーを呼び止める十二神将。

あたりまえのように応対する運転手。

乗車拒否とかしないの!?いいの!?

このお話ほんと好き。

しっかりオチまでついています。


うつくしく繊細でありながらも骨太な独特の世界観がこの1冊で堪能できます。

2021/05/19 12:35

「はつみ道楽」サメマチオ
電子書籍の試し読みでおもしろかったので購入。漫画です。

会社と共同名義で特許を取得したため、向こう10年間、毎月17,830円の特許手当てがつくことになった主人公のはつみ。

知らず知らずのうちに賢く堅実な暮らしをしてきたことに気づいた彼女が、自分はもっと愉快に生きてもよいのでは、とふと思い立ち、毎月の特許手当てでこれまでに体験したことのない世界に手を伸ばしてみる、というお話。

日常から非日常まで、いろいろな未知の世界を覗いてみる、でも気負わずゆるゆるとしたかんじで、というスタンスがとても好きです。やっぱりいちばん最初の香水の話が印象的。

これまで興味のなかった、日常と隣り合わせに存在していたのに意識してこなかった世界にふと気づき、その奥の深さにすこしだけ触れてみる、ささやかな好奇心。

こういうお話大好きです。

もし自分が毎月いくばくかのプラスαのお金を手にすることになったら、いったいなにに使うだろう?取らぬ狸の皮算用そのものですが、想像してみるだけでも楽しいです。

以前、政府から国民ひとりあたり10万円の給付金が配布されましたが、あのときも、周りのひとたちと「なにに使う?」と使い途の話題になりました。わたしはありがたく生活費に充てることにしましたが、多かったのは自動車税や固定資産税などの税金に消える、という現実的な使い途や、エアコンを買い換えたという意見もいくつかありました。

道楽という言葉の響きが好きですが、生活や気持ちに余裕がないと、道楽なんてとてもできないのも事実。

食い道楽、着道楽。いろいろありますが、わたしは好きな本をしこたま買い込み読み尽くす書道楽がむかしからの夢です。

晴耕雨読が理想の暮らしなのです。

2021/05/03 17:58

「女の園の星①」和山やま
いちおう少女漫画、になるのでしょうか。

1話めは電子書籍のお試しで読んだのだけど、1冊通して読むと破壊力がすさまじい。

えっ、なんで?

と何度突っ込みを入れたことか。

予測不可能。抱腹絶倒。いや、抱腹絶倒まではいかないかもしれない。わたしはめちゃくちゃ笑ったけれど。どちらかというと、あとからじわじわくる笑いかも。しかも長く尾をひく。

これは絶対ひとまえで読んだらダメなやつやん。

二時間目の、教室に犬がいる、から始まる回が好きです。絵面がシュールすぎる。

2021/04/26 22:10

「源平の怨霊 小余綾俊輔の最終講義」高田崇史
QEDシリーズ著者による、もうひとつのQEDといったところでしょうか。

平清盛の義母である池禅尼がなぜ自らの命を懸けてまで、平治の乱に破れた源義朝の三男・頼朝の助命嘆願をしたのか。

そして、平家を滅亡へと追いやった功労者であるはずの源義経が、兄である頼朝に追われる身となり無惨な最期を遂げたにもかかわらず、なぜ怨霊にならなかったのか。

ほかにも源平にまつわるさまざまな歴史上の疑問点を、民俗学者である小余綾助教授が大学を退職するまえの最後の課題として解き明かしてゆく、という流れ。

わたし、お行儀の悪いことに、たいてい読書は布団で寝転がって行うのですが、この本はハードカバーのうえ厚さも3㎝超えというなかなかの代物で、寝ながら読むには困難を極めた1冊。

それでも一気読みするほどおもしろかった。

壇ノ浦の戦いで破れた平家のお墓より、勝利したはずの源氏の名立たる武将のお墓のほうが格段に質素で、いっそみすぼらしいほど、というのは知りませんでした。怨霊とならないよう敗れた相手方を手厚く弔うというのは理解できるけど、文面を読むだけでも、源氏のお墓の扱い、あんまりじゃない?と思ってしまう。

それが、まさか、そんな背景があったとは。

道理でわたし、あの一族のこと、あまり好きじゃなかったわけだわ、とへんなところで腑に落ちました。

もちろん、あくまでも一説であって、絶対にこの小余綾助教授の説が正しいとは限らないけれど、理に敵っているし、しっくりきます。

読んで良かった。

充実した読書体験でした。

2021/04/26 20:48

「香港シェヘラザード」三角くるみ
上下巻一気読み。

主人公は香港に赴任中の新人外交官。妻が誘拐されたと総領事館に助けを求めてきた邦人男性の話から事件が始まる。彼の妻を誘拐した犯人が香港最大の黒道組織のなかでももっとも厄介な人物であったことから、被害者奪還への道のりは遠く、険しいものとなる。

胸の悪くなるような事件。主人公・水城の燃えたぎる正義感が、どんな苦境をまえにしてもいっさい揺るがないのがすごい。そして、ひたすら苦しい状況が続くなか、思いがけずもたらされた一筋の光。

後半の、外交官特権を駆使したカーチェイスからの怒濤の展開によるカタルシスたるや。このために長い道のりを這うようにして進んできたのだ、とため息がこぼれます。

終盤、東京でのひとときは、それまでの緊張感から解放されたあとということもあり、なんだかほのぼのしていて微笑ましいものがあります。

続編があるようなので、そちらも書籍化されることを期待します。

2021/04/26 20:06

「うちの弟どもがすみません」オザキアキラ
1~3巻まとめ買い。

親が再婚して義理の兄弟ができるという、ザ・王道少女漫画。一気に4人の義弟ができたうえに、みんな良い子。いじわるなキャラはいないので安心して読めるし、主人公の糸が、これまためちゃくちゃ良い子。前髪ぱっつん金太郎ヘアーがかわいすぎる。これから恋愛要素が絡んでくるのだろうけれど、いまのわちゃわちゃと賑やかな成田家を見ていたい気持ちが大きい。

2021/04/26 19:03

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