"The Sustainable Development Goals"講義ノート

Week 1:How do we measure progress? ①

How do we measure progress?

(進捗をどのように測るのか?)


持続可能な開発目標には17の目標がある。多すぎるという意見も多く、目標が内部で矛盾しているのではないかという意見もある。

SDGsは政治的な交渉によって合意されたものであり、妥協の産物であることを忘れてはならない。2015年の交渉終了間際には、実際に目標の数を減らそうという声もあったが、どの目標も強力な支持者がいるため、どの目標を減らすかについて合意することは不可能だった。

その結果、17の目標が残され、それぞれにサブゴールやターゲットが設定された。SDGsは全部で169のターゲットで構成されている。

各ターゲットにはその世界的な状況を評価するための指標が示されている。SDGsに対するグローバルな進捗を測るために、合計で230の指標が設定されている。



専門家インタビュー①

Peter Birch Sorensen(コペンハーゲン大学、環境経済学教授)


Q:持続可能性とGDPはどう関係があるのか?


A:GDPとは国内総生産の略で、経済活動、主に市場活動と公共部門の活動を表す指標。GDPと物質的な生活水準との間には明確な関係がある。しかし、問題は、GDPが経済活動によって環境に与えるコストを考慮していないことである。

つまり、GDPは、human welfare(人間の福祉)を示す指標とはみなされないということだ。この概念を考案した経済学者たちは、GDPが福祉の指標になるとは考えもしなかった。

人間の福祉は、生命の基盤である生態系など多くのものに依存するが、GDPの増加がこれらの生態系の破壊や劣化を犠牲にして行われることもある。


Q:新しい指標を見つけるには、まったく新しい指標が必要なのか、それともGDPを補完すればいいのか?


A: human welfare(人間の幸福)を表す指標を見つけるのは、非常に難しいことだ。The green GDP(グリーンGDP)は、少なくとも経済活動が環境に与える影響を可能な限り考慮しようとする試みである。もし、その年に環境が破壊されたなら、そのコストを推定し、GDPから差し引く。一方、環境を改善するために何らかの投資が行われた場合は、それをグリーンナショナルプロダクトと呼び、GDPに加える。そうすることで、環境を犠牲にして成長したGDPがどこであるかをよりよく把握することができる。

しかし、環境へのダメージを測定するだけでは十分ではない。モノやサービスの環境は、市場では取引されない。市場で取引されるモノやサービスの価値に環境の価値を上乗せすることに意味があるのかどうか、疑問を持つ人さえいる。

だから、より強力な環境政策が必要だ。つまり、環境財やサービスに価格をつけるようにすることである。

例えば、汚染税によって、消費者である私たちや企業が、彼らの行動による環境コストに直面するようにする。汚染税が現実的な政治的理由で不可能な場合は、環境に有害な分野での経済活動を制限する規制、つまり環境規制が必要である。

私たちは経済政策の方向性を変える必要がある。これまでのアプローチを見直せば、持続可能な開発を実現するためのツールとして、市場を積極的に活用することができる。



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【所感】

Goals 8:Promote sustained, inclusive and sustainable economic growth, full and productive employment and decent work for all


目標8の経済成長とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を同時に実現するのは非常に難しい。たしかに内部で矛盾していると思う。

UN websiteを見ると、目標8には8.1から8.10および8.a、8.bまで12のターゲットが設定されている。

ターゲット8.1、8.2、8.9の進捗を評価するための指標は、GDPだ。


8.1

Sustain per capita economic growth in accordance with national circumstances and, in particular, at least 7 per cent gross domestic product growth per annum in the least developed countries

(各国の事情に応じた一人当たりの経済成長、特に後発開発途上国においては少なくとも年率7%の国内総生産成長率を維持すること)


Indicators

Annual growth rate of real GDP per capita

(一人当たり実質GDPの年間成長率)


8.2

Achieve higher levels of economic productivity through diversification, technological upgrading and innovation, including through a focus on high-value added and labour-intensive sectors

(高付加価値部門や労働集約型部門への注力など、多様化、技術向上、イノベーションを通じて、より高いレベルの経済生産性を達成すること)


Indicators

Annual growth rate of real GDP per employed person


8.9

By 2030, devise and implement policies to promote sustainable tourism that creates jobs and promotes local culture and products

(2030年までに、雇用を創出し、地域の文化や産物を促進する持続可能な観光を促進するための政策を考案し、実施する)


Indicators

Tourism direct GDP as a proportion of total GDP and in growth rate

(総GDPに占める観光GDP直接寄与額の割合と成長率)


2022/04/14 19:50

Week 1:A history of sustainable development

A history of sustainable development

(Katherine Richardson教授の講義要点)


宇宙から見た地球の写真は、地球の資源が無限ではないことを視覚的に証明している。

国連の193の加盟国が「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択した。

資源が有限であることを示す証拠が得られてから、それが政治の場で認められるまでに長い隔たりがあるのは、何かが限られていることを認めたら、その何かをどのように共有するかを検討し始めなければならないからかもしれない。

持続可能な開発目標(SDGs)は、2030アジェンダの一部である。

SDGsは、地球の資源をどのように分かち合うかについてのビジョンと言える。


2030アジェンダ、1987年に環境と開発に関する世界委員会が出した「ブルントラント報告書」によって導入された持続可能な開発に関する理解をさらに発展させたものだ。

ノルウェーの元首相グロ・ハーレム・ブラントラントにちなんで「ブルントラント報告書」と呼ばれる報告書は、「Our Common Future」(我ら共有の未来)というタイトルで書籍化された。ブルントラント報告書は、2つの重要な点を指摘している。

第一に、世代間公平の重要性を強調した。今日の私たちの資源利用を通じて、将来の世代の潜在的な生活水準を低下させてはならない、という主張である。

第二に、持続可能な開発には、経済の持続可能性に加えて、環境と社会の持続可能性も考慮する必要があると主張した。


しかし、ブルントラント報告書の時点では、環境と社会の持続可能性とは何を意味するのか定義することはできなかった。

この30年間で、私たちはこの2つの持続可能性を理解することができるようになった。

要するに、環境の持続可能性とは、人間の資源に対する需要を世界的な資源供給量の範囲内に収め、維持することを意味する。そして、社会的な持続可能性は、基本的な人権が尊重されることを要求している。




専門家インタビュー

Mogens Lykketoft(モーエンス・リュッケトフト)

SDGsが採択されたときの国連総会で議長を務めた。デンマークの元外務大臣で国会議員。


Q:SDGsや2030アジェンダに何か特別なものはあるのか? 国連の歴史の中で、合意に到達するまでのプロセスに何か違うとことはあるのか?


A:私たちは極度の貧困との闘いを続けるだけではいけない。私たちは、地球資源の制限やより公平な分配にもっともっと大きな関心を払わなければいけない。社会的、経済的、環境的な持続可能性についてである。それが、実は「持続可能な開発のための17の目標」なのだ。

2030アジェンダは、193カ国の政府の努力によって採択されたものだが、少なくとも800万人以上の人々がこの準備に参加した。革命的とさえ言える、グローバルなアジェンダである。


Q:多くの企業がSDGsに注目していることはとても良いニュースだが、17もの項目は多すぎて対応できないと言っているのが現状だ。


A:目標13の気候変動は、最も緊急性の高いものだと認識する必要がある。なぜなら、気候に関する開発を本当に変え、地球温暖化を本当に制限しなければ、残っている他の課題のために資源を動員することができないからだ。

なぜなら、地球温暖化は、巨大な強制移住や新たな紛争を生み出し、多くの資源がアジェンダ全体から吸い取られてしまうからだ。だからこそ、気候に関する行動が急務なのである。そうすることで、このアジェンダの他の多くの問題についても進展させることができるようになるだろう。


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【所感】

it emphasized the importance of intergenerational equity

the report argued that we must not, through our resource use, today, lower potential living standards of future generations.


生命と健康に関する将来世代の権利(=将来世代に対する私たちの義務)は分配的正義の問題と言える。

将来世代に資源を使う権利があるならば、なぜ私たち現在世代は資源を保全しないのだろうか。


私たちは自分の子供の世代や孫の世代に対する義務を負っているが、10世代後、20世代後、100世代後の子孫に対する義務まで負っているわけではない、と考える人々もいる。

しかし、私たちが近未来の世代のために資源を保全する義務を負っているとすれば、近未来の世代は、(私たちから見て)遠い将来の世代の権利を尊重するために、後代のための資源を保全する義務を負っている。

要するに、世代間倫理(私たちは将来世代に対して責任を負っている)を前提としたうえで、持続可能性に関する議論があると言える。


2022/04/14 19:30

Week 1

The Sustainable Development Goals – A global, transdisciplinary vision for the future

(持続可能な開発目標 - グローバルで学際的な未来へのビジョン)

提供 コペンハーゲン大学

講師 Katherine Richardson(海洋生物学教授)


この講座は、2016年に国連事務総長によって「持続可能な開発に関するグローバル・レポート2019」を執筆する15人のパネルのメンバーに任命された、キャサリン・リチャードソン教授が企画・指導を担当する。

各講義では、キャサリン教授がそのトピックの専門家にインタビューする。


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これから、各講義の要点をまとめたり、気になった議論をメモしていきます。


2022/04/14 19:00

プロフィール

ロシア文学が大好きです。 2012年2月からロシア語を勉強しています。

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