ホラーなクリスマス
昔、「ローズマリーの赤ちゃん」という怪奇映画があってだな。
ローズマリー→蝋詰まり→クリスマスにろうそくを間違って口いっぱいにほおばった赤ちゃんの話だって、笑い話があったんだな。
それ笑い話なのか疑問ではあるが、実際の「ローズマリーの赤ちゃん」は専門家をして恐ろしいと言わしめた恐怖映画である。
さて。フィクションも怖いが、ノンフィクションは、もっと怖い。
だって、「本当にあった怖い話」なんだもの。
今まで、幸いなことに、いつも、どん詰まりで、うちの玄関を自分以外の誰かが通ることはなかった。
ところが、今回の部屋は、思いっきり人の通り道なのだ。このマンションのほとんどの人がうちの部屋の前を通っていく。
ばたばたばたばたっ! っと、足音がしてすたたたと走り去っていくのを聞くたびに、遅刻しないように祈ってしまうのだ。
そんなメリークリスマスな夜。
うちの間取りは、玄関入って、すぐ隣がお風呂。三和土の三分の一はお風呂のドアにかかっている。お風呂から出て、うっかり踏み出すと、玄関の三和土を踏むこともあるのだ。つまり、脱衣所=玄関と言っても過言ではない。
クリスマス前夜祭。イヴ、ってやつですね。
お風呂から上がって、着替え真っ最中。ズバリ言っちゃえば、半裸。突然、玄関のノブが、ガチャガチャ回りだした。
ぎょっとして、行動が止まる。
ここで余計な妄想が駆け巡るのが、ワナビの習性。
鍵が壊れて入ってきたらどうしよう。
そもそも、カギ、かけたっけ? あ、かかってた。よかった!
人ならいいけど、実は、実体がなかったりしたらどうしよう。だって、隣はお寺さんなんだもの。何かが起こる予感!!!!
目くるめく妄想をしり目に、案外あっさりと、音はしなくなった。
その代わり、どん! ばん! と、どこかにぶつかってるのかそれともコケたのかわからない音がして、上の階で、ガチャンと扉が閉まる音がした。
良かった。無事、おうちにたどり着いたらしい。
良くなかったのは翌朝。
出勤しようとして、玄関のかぎをかけようと、玄関ドアのノブ周辺を見たら!!
つうっっと、指でなぞったようなソースの跡がついているではないか!! それだけではない、その先に、鰹節が!!!! 鰹節がソースを糊にしてぺたりんことついている!
え。これなに?
実は、昨日の時点では、これが血糊かなんかで、一晩経ったらソースになってたとかいうホラー?
何でもいいんだけどさ。
緊急事態宣言も開けて、ほぼ通常通りのクリスマスを迎えたからって、浮かれてんじゃねーぞ。
そもそも、たこ焼きを素手で食べたら熱いだろう! やけどするだろう!! 指についたソースは、なめとけよ!
それも汚いけどな!
たこ焼きではなくて、酔った勢いで、お好み焼きを素手で食べたのかもしれないけどな!
へべれけになって、人の部屋に入ろうとするなよ。恥ずかしいな。その時、たまたま、あたしが、カギをかけてたからよかったものの、かけてなかったら、見知らぬおばちゃんの半裸を拝むことになったんだぞ! どうだ! いたたまれないだろう!!
教訓。浮かれるな。いろんな意味で恥ずかしいわ。