Week 2:学習教材 要点⑨
Agriculture production as a major driver of the Earth system exceeding planetary boundaries (2017)
新規物質の導入
Rockströmら(2009a)は、chemical pollution(化学汚染)からNovel entities(新規物質)のPBを設定した。
Steffenら(2015)は、新規化学物質だけでなく、他の新しい人工材料または人工生物、transgenic organisms(トランスジェニック生物、遺伝子組換え生物)を含むように定義を広げた。
人為的な化学物質が生態系に与える影響については、多くの研究で説明されており(Milton 2011, Pease 2011)、農業が強く関与している。
多くの農薬は、農業と水産養殖の両方で広く使用されている。農業用殺虫剤が淡水に与える影響についての調査によれば、世界の50%の淡水から検出された殺虫剤の濃度が規制の閾値を超えている(Stehle and Schulz 2015)。
農業における遺伝子組み換え作物の使用に関する懸念としては、アレルゲン性、食品の安全性の欠如、生物多様性の完全性を脅かすトランスジーンの流れ、望ましくない形質の雑草への拡散などが想定されているが、今のところ証明されていないため、論争がある(Trumbo and Powell 2016)。
種子の知的財産権(IPR)についての懸念もあるが、IPRはPBの概念とは関係ない。
一方、Abbertonら(2016)は、生産量の増加、食糧供給の多様化、気候変動への適応強化や影響の緩和を目的として、主要作物とマイナー作物の育種を加速するためにゲノムツールを使用し適応させる方法について報告している。
遺伝子組み換えトウモロコシとダイズの世界的なメタ分析によると、遺伝子組み換え作物は従来の作物よりも収量が多く、生産コストを削減して粗利益を増加させることが示されている(Areal 2013)。
遺伝子組み換え作物は化学農薬の使用を37%減らす一方で、収量を22%増やし、農家の利益を68%増加させたという研究結果もある(Klümper and Qaim 2014)。
最近の研究によると、遺伝子組み換え作物は、気候変動下の世界の農業システムにおいて、より栄養価が高く、投入効率の高い作物を開発する上で、非常に有望であるとみなされている(Ortiz 2014)。
トランスジェニック生物は、農薬に含まれる化学物質のような、より有害な新規物質の使用を減らすことなどを通じて、農業が良い方向に変化する手助けとなる可能性がある。