日々ログ

ダダの話①

ようやく本題であるダダの話。


マルセル・デュシャンの「L.H.O.O.Q」(1919年)は、絵葉書の「モナリザ」のイラストに髭を書き加え、「L.H.O.O.Q」というタイトルをつけただけの作品ですが、ダダイズムの「偶像破壊」の頂点に位置すると言われています。

1919年は、第一次世界大戦終戦直後にあたります。

フランス語で「L.H.O.O.Q」は、リエゾンするとElle a chaud au cuisse(彼女は淫乱)の意味に聞こえるそうです。


過去に『モナリザ 100の微笑』という展覧会まで開かれたように、「モナリザ」はパロディ化される運命にあると言いますか……。

「モナリザ」は、権威ある人々が「名画」と認めた「芸術」の象徴。

だからこそ、権威に対する反抗を目論む「反芸術」の試みとして、攻撃の対象となり、数多くのパロディやカリカチュアが生み出されたと言えますね。



デュシャンが1920年に発表した、窓のオブジェに「Fresh Widow」とタイトルをつけた作品も、「L.H.O.O.Q」と同様の戦略的言葉遊びが光ります。

窓のオブジェがなぜ「未亡人」かと言いますと、French Window(フランス式の窓)から、Fresh Widow(なりたての未亡人)へ転じています。

こうしたデュシャンの言葉遊びは、言葉自体の表層的な性質を強調するもので、ソシュールの理論と響き合うものです。


この「Fresh Widow」に、デュシャンはあえてローズ・セラヴィという女性名で署名しており、それがどういう意図だったのかは後世でも議論がつきないところです。


余談ですが、芸術の世界は、はっきり言って男社会なので、女性作家が男性名で活動することはよくあることでした。

有名どころだと、ジョルジュ・サンドの本名はアマンディーヌ、『ミドルマーチ』のジョージ・エリオットの本名はメアリー。

一方、男性作家が女性名で活動するというのは、全くないわけではないですが、珍しいとは言えます。

現代の作家だと、アルジェリア出身のフランス語で執筆する作家ヤスミナ・カドラの本名は、ムハンマド。彼の自伝的小説が出版されるまでは、読者から女性作家だと思われていました。



ダダの話に戻ると、デュシャンの試みはHigh CultureとLow Cultureの枠組みを崩していくものです。


2023/08/12 16:34

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ロシア文学が大好きです。 2012年2月からロシア語を勉強しています。

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