"The Sustainable Development Goals"講義ノート

Week 2:Planetary boundaries and biodiversity ①
Planetary boundaries and biodiversity(惑星限界と生物多様性)

(Katherine Richardson教授の講義要点)


地球システムにおいて人間活動の影響を受ける重要なプロセスは、気候だけではない。

ストックホルム・レジリエンス・センターのJohan Rockstromは、国際的な研究者たちと共に、地球システム全体の状態を変える可能性のある9つのプロセスを特定し、そのすべてが人間活動によって地球規模で影響を受けているという分析を、2009年に発表した。

9つのプロセスとは、気候変動、海洋酸性化、成層圏オゾンの破壊、窒素とリンの循環、グローバルな淡水利用、土地利用変化、生物多様性の損失、大気エアロゾルの負荷、化学物質による汚染である。


これらのプロセスすべてと人間の相互作用は、持続可能な開発目標に扱われている。

現代人は何十万年も前から地球上に存在しているが、農業の発展からコンピュータに至るまで、現代人の文明と関連するものはすべて、過去約1万2千年の間に進化してきた。

この間、気候は比較的温暖で、しかも異常に安定していた。つまり、現在の地球環境下で人類が繁栄できることは確かである。しかし、地球が他の条件になったときに、人類が繁栄できるかどうかはわからない。

したがって、地球の状態が変化するような深刻な危険をもたらすほど、これらの重要な地球プロセスの乱れを許容することは、人類にとって賢明ではない。


ロックストームのチームは、9つのプロセスのうち7つについて、人間が生存するためのboundary(限界)を提案した。

このboundaryは、thresholds(しきい値)やtipping points(ティッピングポイント)と混同してはいけない。

ロックストロームらが提示したthe planetary boundaries framework(惑星限界の枠組み)では、重要な地球システムのプロセスに対する人間の活動を惑星限界の範囲内に維持すれば、人類は安全な生存領域にあると主張している。


環境に関する持続可能な開発には、地球の資源とサービスに対する人間の需要が供給を上回らないようにすることが必要である。

惑星限界の枠組みは、重要な地球システムの潜在的な供給量を定量化する試みと見なすことができる。

したがって、SDGsの実施において、持続可能性の環境的要素を評価するには、惑星限界の枠組みのようなツールがあれば大いに役立つだろう。


2009年の論文では、広く科学コミュニティにこのフレームワークへの意見と改善を呼びかけることが含まれていた。

多くの科学者がそれに応え、2015年に2つ目の惑星限界の論文が発表された。ここでは、9つのプロセスのうち4つのプロセスに対する人間の活動が惑星限界を越えており、それによって現在は安全な活動空間の外にあると結論づけられた。

惑星限界を越えると判断されたプロセスは、気候、生物多様性、土地利用や森林の伐採、反応性窒素やリンの環境への放出の4つである。


1990年代には、オゾン層の状態が惑星限界を超えていた。しかし、オゾン層を破壊する物質を禁止するモントリオール議定書という形で世界的な協力が得られたため、現在はオゾン層の状態は惑星限界の安全域にある。


2017年にCGIARの気候変動・農業・食料安全保障研究プログラムのディレクター、Bruce Campbellらが発表した研究では、生物多様性、土地利用、反応性窒素とリンの放出について、現在の農法が惑星限界を越える原因になっていることが明らかにされた。

Campbellらの研究は、農業は水の限界も引き起こすと主張している。

このことは、持続可能な開発を達成するためには、食料システムの大幅な変更が必要であることを強調しており、この課題に特化したSDGが存在することを意味している。


2022/05/07 20:28

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