"The Sustainable Development Goals"講義ノート

Week 2:学習教材 要点⑥

Agriculture production as a major driver of the Earth system exceeding planetary boundaries (2017) 


6 海洋酸性化

海洋酸性化は、大気中に排出された二酸化炭素が原因であり、その約25%が海水に吸収され、炭酸を形成している。

1800年以降、すでに海水の酸性度が34%上昇しており、CO2排出量を削減しない限り、2100年までに表層海水の酸性度が約150%上昇すると予測されている(Hönisch 2012)。これは数百万年の間で、最も速い海洋の化学変化速度である。


サンゴやカキなどの多くの海洋生物は、アラゴナイトやカルサイトを使って殻や骨格を形成している。海水の二酸化炭素濃度が上昇すると、簡単に腐食してしまう(Rodolfo-Metalpa 2011)。

サンゴ礁はアラゴナイトでできており、「アラゴナイト飽和度」(Ω arag)が1以下になると、サンゴ礁は溶けてしまう

サンゴ礁は、アラゴナイトの過飽和度 Ω arag > 3の状態で形成され、それ以下ではサンゴ礁は弱くなり、藻類や海綿動物、ウニやブダイなどの捕食者によって簡単に侵食される。


Rockströmら(2009b)は、海洋酸性化の惑星限界(PB)として海洋のアラゴナイト飽和度が、産業革命前の世界平均の表層海水 Ω arag 3.44の80%以上に維持されることを提唱した。

現在、海洋のアラゴナイト飽和度は産業革命前の値の約84%であり、急速に低下している(Gattuso 2015)。


農業は、CO2排出の主要な原因であるため、海洋酸性化に直接寄与している。

耕作地の集水域の酸性化や、海洋への農業用肥料の流入による間接的な影響もある。

沿岸水域に投入された硝酸塩は藻類の成長を刺激し、藻類が腐敗すると溶存酸素濃度を低下させる。

微生物呼吸の際に生成されるCO2は酸性度を高め、海洋酸性化の地域的な影響に拍車をかける(Ekstrom 2015)。


海洋酸性化という世界的な問題に対する地域的な解決策には、農業の変革が必要である。

IUCNブルーカーボンイニシアチブでは、沿岸植生(藻類、海草、マングローブ)が、酸性水の流出を防ぎ、炭素を捕捉・蓄積し、沿岸水のpHを上昇させる能力を持つことを認めている。

海藻の養殖や、エビ養殖場に転換された地域のマングローブを徐々に回復させることは、海洋酸性化を食い止めることにつながり、農業をより安全に運営する方法である(Siikamäki 2013)。




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【メモ】

Ocean acidification 海洋酸性化

海洋酸性化とは、大気中の二酸化炭素濃度の上昇の結果として海洋のpH値が低下すること。

海水のアラゴナイト飽和度とは、炭酸カルシウム析出能の指標。

サンゴの骨格は炭酸カルシウム(CaCO3)からなるアラゴナイト(アラレ石)でできている。

アラゴナイト飽和度が1を下回るとアラゴナイトは溶解する。

3,581か所のサンゴ礁の観測に基づいてグレートバリアリーフ全体のアラゴナイト飽和度を推定したところ、これまで考えられていたよりも酸性化が進んでおり、内礁の溶解が予測よりも早く進むことが報告されている(Mathieu Mongin 2016)。


2022/06/08 20:37

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