「我は神より離れず」聴き比べ
ブクステフーデのコラール前奏曲「我は神より離れず」BuxWV220、聴いていて、とても落ち着く。素朴で良い曲。
Von Gott will ich nicht lassen, BuxWV220
われは神より離れず
そは神はわれより離れ給わず
すべての道にて我を導き給う
さもなくばわれは迷う
神はその御手をさしのべ、夕べにも朝にもわれを守り給う。
われいずこにありとも
(Von Gott will ich nicht lassen「我は神より離れず」のコラール歌詞)
「神はその御手をさしのべ、夕べにも朝にもわれを守り給う。われいずこにありとも」という歌詞がすごく良い。
ブクステフーデはとても内省的な旋律で、歌詞の一節一節をかみしめる。
いつか主日礼拝の前奏で弾きたい。
一方、J.S.バッハの「我は神より離れず」BWV658 は、ブクステフーデの素朴な美しさとは全く違った、装飾豊かな美しさ。同じコラールを題材としているとは思えないが、どちらも良い曲。
Von Gott will ich nicht lassen, BWV658
バッハの曲は、コラール定旋律がペダル(足鍵盤)にあるので、ペダルに16フィートではなく、手鍵盤と同じ4フィートまたは8フィートの音を使ったレジストレーション。
目を瞑って音だけを聞くと、手が3本あるように聞こえる。実際には、テノール声部に定旋律がある曲は、演奏するのがとても難しい。
内省的なコラール歌詞に合わせて、落ち着いた雰囲気で曲が進むが、「神はその御手をさしのべ」という歌詞から、ぐっと曲調が明るくなるところが、とても素晴らしい。
短い曲の中に歌のメッセージが凝縮されている。バッハの絶妙な演出を感じる。