日々ログ

アンドレイ・クルコフ、The New Yorkerに寄稿
Что останется после вторжения России в Украину?

(Андрей Курков, March 21, 2022, The New Yorker)より抄訳


「ロシアがウクライナへ侵攻した後、何が残るのか?」

アンドレイ・クルコフ


私は1961年に生まれた。祖父の一人が亡くなり、もう一人はなんとか生き延びた第二次世界大戦が終わってから16年後のことだ。子供の頃はずっと、男の子と戦争ごっこをしていた。私たちは、自分たちのグループと「ドイツ人」のグループに分かれるようにした。誰も「ドイツ人」になりたがらず、くじ引きで誰かがゲームの中で「ドイツ人」になった。明らかに「ドイツ」は負けるべくして負けたのだ。手作りの木製カラシニコフ突撃銃を持って走り回り、待ち伏せしていた敵を「撃つ」。機関銃の弾の音を真似て「トラ・タ・タ・タ」と叫びながら。


小学校4年生のとき、学校で勉強する外国語を選ぶように言われたとき、私はドイツ語班に行くことをきっぱりと断った。「祖父のアレクセイが殺された!」と私は言ったが、誰も私にドイツ語を学ぶように説得しなかった。私は英語を勉強した。あの戦争ではイギリス人が私たちの同盟国だった。そして今、イギリス人は同盟国のままだが、「私たち」の意味だけが変わった。「私たちのソビエト」から「私たちのウクライナ」へ。


戦後、子供たちが学校でロシア語を勉強するように言われても、「ロシア人におじいちゃんを殺された!」「ロシア人に妹を殺された!」と平気で拒否するのだろうと思うと、悲しくなってくる。


きっとそうなるだろう。そしてそれは、家庭で人口の3分の1がロシア語を話し、私のような数百万人のロシア系民族が暮らす国で起こることになる。


プーチンはウクライナだけでなく、ロシアを破壊し、ロシア語を破壊している。今、この恐ろしい戦争の間、ロシアの爆撃機が学校、大学、病院を爆撃している時、ロシア語は最も重要でない犠牲者の一人だ。私は母語がロシア語であるせいで、自分の祖先がロシア人であることを何度も恥じてきた。言語には罪はない、プーチンにはロシア語の所有権はない、ウクライナを守る人々の多くはロシア語話者である、ウクライナ南部・東部の民間人の犠牲者の多くもロシア語話者でありロシア民族である、と説明しようと、さまざまな公式を考え出した。だが、今はただ黙っていたい。私はウクライナ語が流暢に話せる。会話の中で、ある言語から別の言語へ切り替えるのは簡単だ。


私はウクライナのロシア語の近い将来が見えている。今、ロシアのパスポートを破って、自分がロシア人であることを認めないロシア人がいるように、多くのウクライナ人がロシア語、言語、文化、ロシアという考え方のすべてを放棄しているのだ。私の妻はイギリス出身で、私の子供たちはロシア語と英語の2つの言語を母語としてる。お互いのコミュニケーションはもっぱら英語。彼らは今でも私とロシア語で会話しているが、ロシアの文化には全く興味がない。しかし、娘のガブリエラが時々、プーチンに反対するロシアのラッパーやロッカーの発言のリンクを送ってくれる。どうやら彼女は、すべてのロシア人がプーチンを好きではない、ウクライナ人を殺すことを望んでいるわけではないことを示すために、こうして私をサポートしたいようだ。


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『ペンギンの憂鬱』が日本でもベストセラーとなった、ロシア語で執筆するウクライナ人作家のアンドレイ・クルコフがThe New Yorkerに寄稿しました。

ウクライナで暮らすロシア語話者、ロシア系ウクライナ人たちが、自分たちのルーツであるロシアとウクライナの間で板挟みになり、どれほど引き裂かれる思いをしているかが伝わってきます。

エッセイ全文はぜひThe New Yorkerを読んでください。英語、ロシア語、ウクライナ語で読むことができます。


2022/03/28 21:46

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ロシア文学が大好きです。 2012年2月からロシア語を勉強しています。

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