シュルレアリスムとマジックリアリズム
ダダからシュルレアリスムが派生したので、ダダとシュルレアリスムは影響関係にあるのは言うまでもないです。
シュルレアリスムにカテゴライズされるフリオ・コルタサルは、日常(現実)の中に非日常(ファンタジー)が入りこむ手法で書いています。
コルタサルの『南部高速道路』では、パリに向かう高速道路で大渋滞に巻き込まれ、車が進むのを待っているうちに1日、2日と経過して、渋滞はいっこうに解消されないまま、いつの間にか季節がめぐり……というあらすじを説明するとトンデモなストーリーなのですが、読んでみると、非常にリアルな筆致で書かれているので有り得ない設定に説得力があるのです。
あれ、でも、ガルシア=マルケスの『百年の孤独』やバルガス・リョサの『密林の語り部』も、リアリズムの小説に絶妙にファンタジー要素を取り入れているような……。
でも、ガルシア=マルケスやリョサはシュルレアリスムではなく、マジックリアリズム(魔術的リアリズム)にカテゴライズされています。
シュルレアリスムとマジックリアリズムの違いってなんなのでしょうね?
日常(現実)の中に非日常(ファンタジー)が入りこむ手法と言えば、児童文学の分野で言われるエブリデイ・マジックという手法とも類似していますよね。
シュルレアリスムにおけるファンタジー要素は、無意識や夢などをイメージの源泉としていたようです。(自動手記など)
マジックリアリズムの先駆者(創始者)と言われる、ノーベル文学賞作家ミゲル・アンヘル・アストゥリアスは、シュルレアリスムにマヤの神話を融合した作品を書いています。
作者のバックボーンがラテンアメリカやアフリカなどの非ヨーロッパ世界にあり、その土地に根ざした民話や神話を取り入れたリアリズム小説が、マジックリアリズムということなのでしょう。
シュルレアリスムとマジックリアリズム、エブリデイ・マジックの違いは、それぞれのファンタジーのイメージの由来がどこにあるかで、違いがあると言えますね。
日常(現実)の中に何らかのファンタジー要素がまぎれこむ
シュルレアリスム:無意識、夢
マジックリアリズム:神話、民話、伝承
エブリデイ・マジック:異世界、魔法
アストゥリアスの『グアテマラ伝説集』を読んだ感想としては、リアリズム小説なのかどうかは疑問で、マジックリアリズムと言うよりマジックそのものでしたが……。
エイモス・チュツオーラの『やし酒のみ』は、アフリカ的マジックリアリズムだと思います。
じゃあ、チェコのカフカやボフミル・フラバルはどうなんでしょう?
シュルレアリスムでしょうかね?