"The Sustainable Development Goals"講義ノート

Week 2:学習教材 要点②

Agriculture production as a major driver of the Earth system exceeding planetary boundaries (2017) 


2 淡水の利用

農業は世界の淡水取水量の約70%を占めている。

OECD諸国では総取水量の約44%、アフリカ諸国では約87%、アジアでは約80%、アラブ諸国では90%以上である(世界水資源評価計画2012a)。


Rockströmら(2009a)は、淡水の惑星限界(PB)を4000km3 yr-1 とした。淡水PBのモニタリングと定量化のために、世界のblue water(青水)の消費量を用いることを提案した。

Shiklomanov and Rodda(2003)は、灌漑農業による青水消費が人類の青水消費の84%を占めると推定した。

Jaramillo and Destouni(2015a)は、青水のみではなく、blue and green water(青水と緑水)の総消費量を淡水PBのモニタリングに使用すべきと述べている。

この観点から、20世紀から21世紀初頭にかけての人類の世界的な淡水消費量の増加は、すでに4000 km3 yr-1のPBを越えている可能性がある(Destouni 2013, Jaramillo and Destouni 2015)。


食料生産に必要な水量は、栽培するものや生産方法によって異なる。人口が増加し、食生活が肉食にシフトしていく中で、今後ますます多くの水が必要とされる。

特に畜産業の発展は、家畜の餌となる作物の栽培に水を必要とするため、水の消費量を増加させる。

バイオ燃料の生産が増えれば、水資源への圧力はさらに高まるだろう。


一部の地域では、地下水の枯渇も大きな問題となっている。インド・ガンジス平原では年間 300mm 以上減少している(Wada 2010)。

多くの地域で、水の利用可能量が減少すると予測されているが、将来の世界の農業用水消費量だけでも(天水農業と灌漑農業の両方を含む)、2050年までに約19%増加すると推定される(世界水アセスメント計画2012)。


1961年以来、単位生産量当たりの水使用量はほぼ半減しているが(世界水アセスメント計画2012)、農業における水利用効率を高める可能性はまだ大きい。

水管理、政策改革、インフラ投資はすべて、効率の向上と消費の抑制に貢献することができる。

灌漑用水は、運搬効率(水源から農場への水の運搬)、分配効率(農場から畑への水の分配)、作物への散布効率(Rosegrant 2009)を高めることで使用量を削減することができる。




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【メモ】

青水、緑水、中水とは?(水資源用語)

(アメリカ農学会(ASA)、アメリカ作物科学学会(CSSA)、アメリカ土壌学会(SSSA)による定義)


Blue water 

青水とは、湖、川、貯水池に存在する。湿地帯の地表下の帯水層から汲み上げることもできる。

家庭や飲料メーカーの飲料水をはじめ、農業用の灌漑用水としても利用されている。農業用水は青水の約70%を使用している。

青水は、降雨や雪解け水などの降水によって地下水涵養する。


green water

緑水とは、植物や土壌微生物が利用できる土壌中の水のこと。根から吸収され、植物に利用され、蒸散の過程で大気中に放出される水。

緑水は、蒸発や地表流出によって土壌から出ることもあるが、植物の蒸散に利用されて初めて生産性があるとみなされる。

作物の生育に必要な緑水の量は、気温、日射量、風量、空気の乾燥度など、さまざまな要因で決まる。

緑水をより多く得るためには、耕起を減らし、被覆作物を使用することが挙げられる。被覆作物は土壌を遮光し、土壌表面からの水の損失を減らす。同様に、不耕起栽培では、作物の残滓を土壌に残し、蒸発を防ぐ。被覆作物と不耕起栽培は、土壌を固定し、土壌侵食と流出を防ぐ。


grey water(中水、家庭雑排水)

自然は青と緑の水をつくるが、人間は中水をつくり、再利用してきた。中水は、都市や家庭、産業界で使用されている。

家庭からの排水だけでなく、産業界でもかなりの量の中水が排出されている。大規模な野菜加工工場では、人口10万人規模の都市と同じ量の水を消費する。多くの地域で、電力生産が灌漑農業と同量の水を使用している。

青水の消費量を減らし、中水を再利用することで、エネルギー消費量を最大80%削減することができると言われている。


参照:What are blue, green, and grey water?


2022/05/16 21:42

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