日々ログ

キリスト教系新宗教
安倍元首相暗殺事件を契機として、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)に注目が集まっている。


アメリカのテレビ局A&Eが2018年に制作したドキュメンタリー・シリーズ『カルト集団と過激な信仰(Cults and Extreme Belief)』の第5話「世界平和統一聖殿(World Peace and Unification Sanctuary)」で、統一教会の分派である武装カルトが取り上げられている。


この番組によれば、統一教会の教祖サン・ミョン・ムーン(文鮮明)の死後、現在の統一教会は三派に分裂している。

①サン・ミョン・ムーンの妻ハク・チャ・ハン:教団組織を統率

②サン・ミョン・ムーンの三男プレストン・ムーン:教団の巨額資金を手中に

③サン・ミョン・ムーンの七男ショーン・ムーン:サンクチュアリ教会を設立


ペンシルベニア州ニューファンドランドのサンクチュアリ教会は、信徒にAR-15ライフルを所有し、武装することを推奨している。

2018年2月28日、サンクチュアリ教会で、儀式の参加者全員がAR-15を捧げ筒する合同結婚式が行われた。

サンクチュアリ教会では「平和軍・平和警察」と称して、若い信徒たちに軍事訓練を受けさせている。迷彩服を着て森の中を走って銃を撃ち、効率的に人を殺すためのナイフ戦闘術を教えている。

ショーン・ムーンは、『ヨハネ黙示録』に記された「鉄の杖」とはAR-15ライフルのことだと演説する。


当たり前だが、黙示録が書かれた古代ローマ帝国時代に、銃は存在しない。



キリスト教を宗教的源泉とする新宗教と言えば、モルモン教、エホバの証人、シェーカーなどが有名だ。

統一教会とその過激な分派であるサンクチュアリ教会も、キリスト教系新宗教に分類される。


ローマ・カトリック教会、正教会、プロテスタント教会などは伝統的なキリスト教派に分類される。

プロテスタントはルーテル教会、聖公会、バプテスト教会、長老派教会、改革派教会、クエーカーなどがある。

ルーテル教会はその名の通りルター、長老派はカルヴァン、改革派はツヴィングリを指導者とする。


日本では、プロテスタント諸派の合同教会として日本基督教団がある。

日中戦争中、政府の宗教統制に基づいてプロテスタント33教派が合同で、1941年に日本基督教団を設立した。

戦後は教団に残る教派と離脱する教派に分かれた。


伝統的な教派と新宗教は大きな違いがある。

新宗教では、新しい宗教的な教えを説く人物(教祖)を神の啓示を受けた預言者とみなす。

これに当たるのが、モルモン教だ。

ジョセフ・スミスが1830年に設立したモルモン教(末日聖徒イエス・キリスト教会)は、神の啓示を受けた預言者を自称し、教典である『モルモン書』を授かったと主張した。


新宗教では、教祖をキリストの再臨、超越的存在、神そのものであると称する教団もある。

統一教会はこれに当たる。

番組の中で、サン・ミョン・ムーンの息子で、ショーン・ムーンの異母兄サミュエル・パクは「父は人類のメシアであると公言していた」と取材に答えている。

ショーン・ムーンは父親を「キリストの再臨」であると主張し、「王の中の王」の息子で後継者である自分自身は「第二の王」であると自称している。


番組の中で、元統一教会信者のテディ・ホースが「サンクチュアリ教会はキリストを語るが、キリスト教の組織ではない」と語っていたのは、こういう理由だ。


具体的に言えば、現在のカトリックの指導者であるフランシスコ教皇は、自らを「メシア」だとか「キリストの再臨」と公言したことは一度もないし、今後もないだろう。

ルターもカルヴァンもツヴィングリも同様で、彼ら自身が信仰対象の超越的存在、というわけではない。


教皇はもともと、イエスの弟子ペテロの後継者という位置づけである。生まれつきの血統による世襲制ではない。


日本の天皇位が世襲制なのは、神の子孫と称する血筋が代々引き継がれるべき神聖なものとして位置付けられ、信仰の柱だからだ。

戦後、いわゆる「人間宣言」で昭和天皇は自分が現人神であることを否定したが、そもそも昭和天皇が「自分は神である」と公言したことはない。

しかし、この詔書は天皇が神の子孫であることを否定しなかったし、歴代天皇を神として崇める祭祀も廃止されなかった。


「神の子孫」と「弟子の後継者」では、全く意味が異なる。

そのため、天皇と教皇は立場が似ているようで、全く違う存在だ。


新宗教に話を戻すと、統一教会の創始者サン・ミョン・ムーンは、亡くなる前にショーン・ムーンを後継者として指名し、2008年にショーンの戴冠式を執り行い、力を継承する儀式をした。

統一教会は、教祖の神性を血によって継承する世襲制の教団と言える。

自らを「イエスの再臨」であり「メシア」であると公言したサン・ミョン・ムーンの立場は、宗教分類としては天皇に近い存在であると言えるかもしれない。


ジョセフ・スミスが亡くなってから170年以上経つが、教祖の死後もモルモン教の勢力は衰えず、世界中に信徒は増え続けている。

500年後もすれば、伝統的な教派に位置づけられているにちがいない。

サン・ミョン・ムーンは2012年に亡くなったばかりだ。このままモルモン教のように、勢力を維持しつづけるのだろうか。


2022/07/18 12:33

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