幸せに関する誤解
最近、Courseraで夫はポジティブ心理学を学んでいます。
受講中の講座は、
The Science of Well-Being
by イェール大学
講師 Laurie Santos(心理学教授)
なんと、世界に389万人も受講生がいる超人気講座なのです!
やっぱり誰もが幸せになりたいと思っていて、怪しげな自己啓発セミナーに通うよりかは、エビデンスに基づく話が聞きたいんだな。
well-beingというのは「良い状態」、つまり「幸福」を意味する言葉です。この言葉は、SDGsでも目標に掲げられています。
Goals 3:Ensure healthy lives and promote well-being for all at all ages
(あらゆる年齢層の人々の健康な生活と幸福の増進を確保する)
ただし日本では、誤解が生じるのを避けるためか、well-beingを「幸福」ではなく、「ウェルビーイング」とカタカナ語で表記したり、「福祉」と訳したりしていますね。
夫は毎回、視聴した講義の要点を教えてくれます。おかげで、わたしもポジティブ心理学について知見を広げつつあります。
今週、Week 2のテーマはぜひ覚えておきたい内容でしたので、メモしておきます。
Misconceptions about Happiness(幸福に関する誤解)
What do we think will make us happy?
(私たちは、何をすれば幸せになれると考えているのだろうか?)
これがあれば幸せになれる、と私たちが考えているもの。それは、
Awesome Stuff, True Love, Perfect Body & Good Grades
つまり、お金、良い就職先、良い物、真の愛、美容、良い成績(学歴)である。
これらの要素は、私たちがそれを手に入れるまでの間(就職試験や大学入試などで合否を待っている間)に想像していたほど、実際に手に入ったときには幸福度は上がらない。
しかし、これらが幸福度を上げてくれる、と私たちは信じ込んでしまっている。
なぜなら、年収や良い就職先、良い物(家、車、服飾品など)、美容、良い成績・学歴は、人と比較しやすいからである。
人と比べやすいものは、幸せの指標であると脳が錯覚しやすい。
良い就職先や良い学歴を手に入れたからと言って、人生に満足感を得られる、ポジティブな感情が増大するというわけではなく、さらに良いものを持っている人と比べてしまい、むしろネガティブな感情が増大することが、長年にわたる心理学の調査と実験によって分かっている。
一般的に、アメリカ人の幸福度は1940年代と現代とを比べると、ほぼ変わらず、むしろ現代の方が若干下がっている。
1940年代は、現代のような下水道も整備されておらず、給湯器も家電製品もなかった。
1940年代と比べれば、生活水準がきわめて高くなっているにもかかわらず、現代のアメリカ人の多くがうつ病になって、日常的に抗うつ薬を服用している。
現代では、特にSNSの登場によって、人との比較がかつてよりも格段にしやすくなってしまった。
したがって、何が幸福かに関する誤解は数十年前の人々も、現在の私たちも同じなのだが、人と比べやすい環境になればなるほど、幸福度は下がる結果になる。
特に美容整形を求める人々は、醜形恐怖症など、何らかの精神的な病が背景にある場合が多い。
もともと精神的な疾患のある人が、美容整形をした後に、病状がどのように変化したかを追跡した調査によれば、ネガティブな気持ちが増大し、むしろ病状は美容整形前よりも悪化していたことが分かった。
にもかかわらず、患者本人は美容整形によって幸福が得られると思い込んでしまっている。
ここにも、幸福に関する誤解がある。
私たちは、自分の思考のくせをrewiring(リワイヤリング、配線の組み換え)をしなければならない。
しかし、これらの幸福に関する誤解は、脳の錯覚と同じなので、それが間違いであると頭で理解しても、思い込みを変えるのは難しい。
二つの矢印を見て、両方同じ長さだと分かっても、どちらか片方が長く、もう片方が短く見えてしまう、目の錯覚と同じだ。