プーチン大統領演説テキスト
Текст обращения президента России Владимира Путина(09:29 24.02.2022, РИА Новости)より抄訳
ドンバスの人民共和国はロシアに助けを求めています。
これに関して、国際連合憲章第7編第51条に従い、ロシア連邦院の認可を得て、本年2月22日に連邦議会が批准したドネツク人民共和国およびルガンスク人民共和国との友好および相互援助に関する条約を遵守するにあたり、私は特別軍事作戦を実施する決定を下しました。
その目的は、8年間キエフ政権による虐待や大量虐殺にさらされてきた人々を保護することです。そしてこの目的のために、我々はウクライナの非軍事化と非ナチ化に努め、ロシア連邦の市民を含む民間人に対する数々の血生臭い犯罪を犯した者たちを裁くことになります。
同時に、我々の計画にはウクライナの領土を占領することは含まれていません。
(中略)
親愛なる同志たちよ!
あなた方の父、祖父、曾祖父がナチスと戦い、我々の共通の祖国を守ったのは、今日のネオナチがウクライナで権力を握るためではないのです。あなたはウクライナ国民に忠誠を誓ったのであって、ウクライナから略奪し、まさにこの国民を虐げている反人民的な政権に忠誠を誓っているのではないのです。
その犯罪的な命令を実行してはなりません。すぐに武器を置いて、家に帰ることを強く勧めます。はっきりさせておきたいのは、この要求に応じるウクライナ軍のすべての隊員は、自由に戦場を離れ、家族のもとへ帰ることができるということです。
繰り返しますが、流血の可能性についてのすべての責任は、ウクライナの領土を支配している政権の良心にかかっていると私は主張します。
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【所感】
2月24日、プーチン大統領は演説で、ドンバスでの特別な軍事作戦を決定したと発表しました。
ドンバスからロシアへの住民の避難が続いており、すでに6万人以上が国境を超えたという21日の報道を昨日読み、非常に迅速で組織的な集団疎開に驚きました。
今日の報道を聞いて、自称人民共和国は、本格的な軍事作戦が予定されていることを事前に分かっていたからこそ、これほど迅速に民間人を避難させたのだろうな、と思いました。
演説で、プーチン大統領はウクライナの現政権をナチスに喩え、ネオナチと呼んでいました。その上で、ウクライナを「非ナチ化」しなければならない、と主張しています。
これまでも、大統領演説では悪の象徴としてナチスの喩えがよく使われていました。
ここで言うナチスやネオナチは、ファシズムやファシストと同じで、極右、民族主義者、人種差別主義者などを指しています。
2014年からロシアの大義名分は、ウクライナにおけるロシア系住民への迫害を阻止すること、ロシア系住民を守ることです。今回の軍事作戦も、ウクライナの領土を占領するためではなく、ドネツクとルガンスクの自称共和国を助けるためだ、と主張しています。
ウクライナ政権側が差別主義者で、自分たちは虐げられた側である、という理論なので、政権をナチスに喩え、「非ナチ化」しなければならない、という主張になります。
こういう論理なので、ウクライナのゼレンスキー大統領がユダヤ系ウクライナ人の家庭の生まれだということ(虐げられた側の出自を持つこと)は、プーチン大統領にとっては関係ないわけです。
ロシア側の論理は、第二次世界大戦において日本がアジア諸国を侵略することを正当化するために、侵略ではなく、欧米の植民地からの解放であると主張していたことと重なりますね。