"The Sustainable Development Goals"講義ノート

Week 2:学習教材 要点①
Agriculture production as a major driver of the Earth system exceeding planetary boundaries(2017) 

by Bruce M. Campbell, Douglas J. Beare, Elena M. Bennett, Jason M. Hall-Spencer, John S. I. Ingram, Fernando Jaramillo, Rodomiro Ortiz, Navin Ramankutty , Jeffrey A. Sayer and Drew Shindell

(地球システムの惑星限界を超える主要な推進力としての農業生産)


2009年、Rockströmら(2009)は、「惑星限界」(PB)と「人類の安全な活動空間」という概念を導入し、最近Steffenら(2015)により改訂された。現在認識されている9つのPB(Steffen 2015)は以下の通りである。


1 土地 - システムの変化

2 淡水の利用

3 生物地球化学の流れ - 窒素とリンの循環

4 生物圏の完全性

5 気候変動。

6 海洋酸性化

7 成層圏のオゾン層破壊

8 大気エアロゾル負荷

9 新規物質の導入


気候変動、土地システムの変化、生物地球化学の流れ、生物圏の完全性の少なくとも4つのPBがすでに超過しているか、不確実性のゾーンにある。

淡水利用PBが超過しているかどうかについても、かなりの議論がある(Gerten 2015)。

PBの概念は、農業が地球システムに及ぼす影響を評価するための有用な基礎を提供し、食料・農業部門の緊急の変革を促すために利用できる。



1 土地 - システムの変化

Rockströmら(2009a)は、地球の氷のない表面の15%以上を農地に転換すべきではないと提案した。彼らはその限界を75%(熱帯林、温帯林、北方林の境界の加重平均)とし、54〜75%(元の面積に対する森林の残存率)を不確実性のゾーンとし、現在の値を62%と計算している。


2000年には、地球上に1500万km²の農地と2800万km²の牧草地があり、それぞれ氷のない地表の12%と28%に相当した(Ramankutty 2008)。

2050年までにさらに1000万km²の土地が伐採されることが予想される。これは、Rockströmらが設定したPBを越える。


農業用地の拡大は、過去300年間に700万から1100万km²の森林の純喪失を引き起こした(Foley 2005)。

地球規模で見ると、1980年から2000年の間に温帯落葉樹林の約30%が耕作地に転換された。

1990年から2005年の間に森林破壊が起こった地域では、農業が森林破壊の75%を引き起こしたと推定される(Blaser and Robledo 2007)。

肯定的な見方をすれば、熱帯の貧しい国々では森林の損失が続いているものの、高緯度と豊かな国々で森林の増加が起こっている(Sloan and Sayer 2015)。


気候目標を達成するための重要な要素として、炭素回収・貯留を伴うバイオエネルギー(BECCS)が提案されることが多くなっている。

しかし、これは食料生産との競合を増やし、大規模な土地利用の変化を誘発する可能性がある。

最近の研究では、BECCSはより小規模でしか実現できない可能性が示唆されている(Boysen 2017、Smith 2016)。

農業収量の大幅な増加と集約化を行ったとしても、人類が食糧とバイオ燃料に対する将来の需要を満たすためには、農業の正味面積を拡大しなければならず、重要な生物群にさらなる圧力がかかることになる。




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【所感】


BECCSとは?

Bioenergy with carbon capture and storage(回収・貯留(CCS)付きバイオマス発電)

大気中のCO2を除去・減少させる技術をネガティブエミッション(NETs)あるいはCDRと呼び、研究が進んでいるが、BECCSはその代表的なもの。

エネルギー利用のためバイオマスを燃焼させたとき、CO2は排出されるが、バイオマスのライフサイクル全体での排出量は変わらないため、CO2排出量としてカウントしない(カーボンニュートラル)。

このバイオマス燃焼時のCO2を回収・運搬し、地中に貯留すれば(CCS)、大気中のCO2は純減となる、という理論である。

パリ協定のCO2の排出を実質ゼロにするという長期削減目標実現のために、BECCSの実用化が期待されている。

2021年現在、北米ではエタノール発酵で発生するCO2を対象として、CO2回収量100万t/年規模のBECCSが稼働中である。

しかし、 Campbell(2017)らはBECCSが食料生産と競合し、食料生産とバイオマス燃料生産の両方の需要を満たすためには、惑星限界を超える森林伐採と農地拡大を引き起こすと予想している。

気候変動問題に取り組むためには、バイオマス燃料は有効な技術の一つであるが、決して銀の弾丸ではないのだな、と感じた。


2022/05/14 13:29

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