酵母を入れないパン 小麦vs.大麦
現在連載中の『バイブル・フード・レシピ』のために、過越の祭りのための酵母を入れないパンを作りました。
作中で紹介したレシピは、現代のカシュルート(ユダヤの食物規定)の厳格なルールに従ったもので、18分以内で焼き上げることにもチャレンジしました。
作中では、大麦を使った過越のパンのみを紹介しましたが、実際には小麦でも作りました。
材料はとてもシンプルです。
石臼挽き全粒粉(小麦または大麦) 1.5カップ
水 0.5カップ
オリーブオイル 大さじ1
北海道産小麦「キタノカオリ」石臼挽き全粒粉で作ったのがこちら。
なんか茶色いし、粒感がありますよね!
これは焦げているのではなく、全粒粉だからです。
味はですね、作中で書いたとおり、無味です。
パン作りの基本の材料は、粉・水・塩・油・酵母です。
このうち、塩と酵母を抜いて作っているのですから、味が無いのは当然ですね。
全粒粉100%のパンって、スーパーやコンビニでは見かけませんよね。
成城石井の「アーモンドと胡桃のフランス産全粒粉カンパーニュ」の全粒粉配合比率は15%以下だそうです。
商品名のわりに少ないですよね。
実際、全粒粉100%で作ると、上の写真の通りで色味が茶色くなるし、けっこう雑味があるので、精白粉で作ったパンの方が普通においしいです。
聖書の話題からそれますが、国の麦品種緊急開発プロジェクトというのがあってですね、北海道や東北、九州などの農業研究センターで育成に取り組んでいるのです。
その成果として、北海道産「キタノカオリ」「春よ恋」、岩手・宮城・福島県産「ゆきちから」、秋田県産「ハルイブキ」、九州産「ニシノカオリ」などの新品種の小麦が栽培されています。
研究報告を読んでみますと、今回使った「キタノカオリ」は、精白粉を製パンした際の色味が黄色っぽくなる特徴があるようです。
精白粉で作った食パンに黄色みが出る品種なんだから、全粒粉ではもっと茶色かったわけですね。
「春よ恋」と「ゆきちから」は白度が高いそうです。
本題に戻って、
福井県産六条大麦「ファイバースノウ」石臼挽き全粒粉で作ったパンがこちら。
え、白い! 本当に全粒粉なの? と疑いたくなる白さですね。
小麦粉と同じ分量で作りましたが、大麦粉で作ったパンの方が小さくなってしまいました。(小麦パンと同じ皿にのせて撮影しています)
大麦粉の方が粘り気が少ないので、麺棒で伸ばしても、あまり薄くできなかったから(無理に伸ばそうとすると真っ二つになりそう)です。
「ファイバースノウ」も麦品種緊急開発プロジェクトで育成された新品種です。
これも農水省の海外持出禁止種子(改正種苗法)に指定されていますね。
「ゆきちから」は白度が高い品種で、この「ファイバースノウ」も見ての通り、白度がとても高いです。
となると、雪的な名前がつけられた品種は、白度が高いのが特性ということなのかも?
全粒粉入りパンやライ麦入りパンは、健康志向のお店でちょくちょく売っていますが、大麦粉配合のパンって見たことないですよね。
ましてや大麦粉100%パンなんて、初めて食べました。
大麦粉自体、大きなスーパーでも製菓材料専門店でも取り扱っていないです。麦ごはん用の丸麦は健康食品の売り場で見かけますが……。
それで、自社製粉している大麦倶楽部さんから買いました。
注文を受けてから製粉するそうで、本物の挽きたての大麦粉が届き、生まれて初めて見た大麦粉の白さに感動したのでした。
聖書では、イエスが五千人に食べものを与えるエピソードで「五つのパンと二匹の魚」が登場します。
マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネと四つの福音書に共通して描かれる重要なお話です。
そのうち、ヨハネでは「大麦のパン」とはっきり書いているんですよね。
次は平たいパンではなく、酵母を入れた大麦パンを作ってみたいですね。
粘り気が少ない大麦粉100%で、ちゃんとふくらんだパンになるのでしょうか……?