"The Sustainable Development Goals"講義ノート

Week 2:学習教材 要点⑤
Agriculture production as a major driver of the Earth system exceeding planetary boundaries (2017) 


5 気候変動

農業は、CO2以外の重要な温室効果ガスを大量に排出するだけでなく、農業のためのスペースを確保するための森林伐採によって、大量のCO2を放出している。

肥料の生産から食料品の流通にいたるまでの活動全体も、大量のCO2を排出している。

このように、農業は気候変動に影響を与える最も重要な人為的活動の一つである。

さらに、気候変動はそれ自体が農業の条件に影響を及ぼし、農業システム全体に大きな影響を与えることになる。


Rockströmら(2009a)は、地球規模の制御変数として大気中のCO2濃度と大気圏上層部の放射強制力の両方を用いて気候変動にアプローチし、350 ppm CO2と産業革命前レベルからの1 W m-2を惑星限界(PB)として提案した(US EPA 2011)。

これは、(i)温室効果ガス強制力に対する気候システムの平衡感度の分析、(ii)完新世より温暖な気候下での大型極地氷床の挙動、(iii)現在のCO2濃度約387ppm、純放射強制力+1.6W m-2(+0.8/-1.0W m-2)での気候システムの観測結果に基づいている。

Rockströmら(2009a)は氷床量の減少や、エアロゾルの冷却効果の消滅をPB設定時に考慮しなければならないと指摘している。

エアロゾルPBと気候変動PBの間には、もう一つ重要な相互作用がある(Mahowald 2017)。


100年の地球温暖化係数に基づくと、農業は1年間で約5.0~5.8GtのCO2を排出している。これは、農業による土地利用変化を除いた、人為的温室効果ガス排出総量の約11%にあたる(Smith 2014)。

発展途上国は世界全体で農業関連排出量の大部分を占めており、今後も発展途上国での農業生産を増加させる必要性があることから、排出量が最も速く増加すると予測される(Smith 2014) 

農業からのCO2排出量は、途上国では平均35%、先進国では12%を占めている(Richards 2015)。

生産から消費までの食料システム全体からの排出を含めると、温室効果ガス総排出量に占める割合は14~24%(農業による土地利用変化を含む)から19~29%へと増加する(Vermeulen 2012)。

この数字には、サプライチェーン全体、肥料製造、農業生産そのもの、加工、輸送、小売、家庭での食品管理、廃棄物処理などが含まれる。


Wollenbergら(2016)は、人為的な地球温暖化を産業革命時の平均気温の2度以下に抑えるという目標内にとどまると同時に、より豊かになった人口を養うためには、農業は2030年までに年間で1 Gt CO2の排出を削減しなければならないと推定している。

1t CO2あたり最大20USドルの価格を設定した場合でも、必要な削減量のうち21〜40%しか達成できないと試算している。

これは、技術的な農法の普及と効率向上を伴う作物と家畜の増産を含む。


望ましいCO2削減量と妥当な成果との間に大きなギャップがあるため、より変革的な技術・政策オプションが必要であることがわかる。

例えば、メタン生成の少ない家畜品種や土壌有機物の土壌への保持を強化するなどのハイテク解決策が考えられている。

同時に、農業のための開墾による土地利用の変化を減らし、食品の損失と廃棄を減らし、食生活のパターンを転換することも必要だろう。




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【メモ】

Radiative forcing(放射強制力)とは?

気候変動の自然または人為的要因によって引き起こされる大気中のエネルギーの変化を放射照度  W m-2(ワット毎平方メートル)によって測定したもの。

地球のエネルギーバランスに変化をもたらす外部要因を定量化して比較するために使われる科学的概念。

正の放射強制力とは、地球が太陽光から受け取るエネルギーが宇宙へ放射するエネルギーよりも多いことを意味する。このエネルギーの正味の増加が、温暖化を引き起こす。

負の放射強制力とは、地球が太陽から受け取るエネルギーよりも多くのエネルギーを宇宙へ失うことを意味し、これは冷却を生み出す。


Rockströmら(2009a)は気候変動に関して、大気中のCO2濃度のPBだけでなく、放射強制力もPBを設定することで、二重のアプローチをしている。

CO2濃度のPBが350ppmと設定されているが、2019年のCO2濃度は500ppm(NOAA年次温室効果ガス指数より)であるため、すでにPBを越えている。

放射強制力のPBは1 W m-2 と設定されているが、2019年の総放射強制力は3.140 W m-2(NOAA年次温室効果ガス指数より)であり、すでにPBを越えている。

放射強制力の要素のうち、2000年と比べるとCO2とCH4(メタン)およびN2O(亜酸化窒素)は増加しており、CFC(クロロフルオロカーボン)は減少している。


2022/05/29 12:13

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