"The Sustainable Development Goals"講義ノート

Week 1:SDG Interactions – One for All and All for One!
SDG Interactions – One for All and All for One!

(持続可能な目標の相互作用)


2030アジェンダの採択以来、SDGsの17の目標(169のターゲット)を相互にマッピングする研究が行われている。

最近、国際科学評議会(ICSU)が4つの目標間の相互作用を考慮した研究を行った。

目標2の「飢餓ゼロ」、目標3の「健康と福祉」、目標7の「安価でクリーンなエネルギー」、目標14の「海洋資源」という4つの目標の間には相互作用がある。これらの目標と他の目標の間にも、さらに無数の相互作用が存在する。


企業やその他の組織は、17ある目標の中から自分たちの製品や活動に最も関連があるものを選び出す傾向がある。ほとんどの場合は、自分たちの活動がポジティブな貢献をするものを選ぶが、一部の目標しか考慮していないため、異なる目標に対してはネガティブな影響を及ぼす可能性がある。

各国には、農業、健康、エネルギーなど、さまざまな部門を担当する省庁があり、法律はこれらの異なるセクター、またはシステムに関して作られる。そのため、SDGsを日常の意思決定と関連づけることが難しい。

異なるSDGs間の相互作用にはネガティブなものもあればポジティブなものもある。

SDGs全体に対して、プラスの相互作用を利用すると同時に、マイナスの影響を減らす努力をしなければ、持続可能な開発を達成することはできない。



専門家インタビュー

Bruce Campbell

国際農業研究協議グループ(CGIAR)の気候変動・農業・食料安全保障研究プログラムのディレクター

(CGIARとは、国際農業研究センターを束ねるグローバルなパートナーシップ。1971年に設立され、51年間活動を続けている。農村部の貧困を減らし、食料安全保障を高め、人々の健康と栄養を改善し、天然資源の持続可能な管理を行うことを目的としてる)


Q:食糧生産は人々が生存するために不可欠なものだが、目標3の健康以外に、SDGsとどのような相互作用があるのか?


A:まず第一に、貧困の撲滅である。農業開発は目標2の貧困削減の重要な部分を占めている。

また、目標6の水の問題にも関連している。農業は現在、地球の水資源(使用可能な水)の70%を使用している。

さらに、農業生産は、目標15の生物多様性の変化や目標13の気候変動の主な原因となっている。

水、生物多様性、気候変動は農業生産に関連する大きな問題だが、それ以外の問題にも関連性がある。例えば、目標5のジェンダーの問題である。発展途上国では、農業の大規模なfeminization(女性化)が進んでいる。つまり、男性よりも多くの女性が農業に従事しているのだ。そのため、農業開発においてもエンパワーメントアプローチが必要である。

このように、農業生産は、ほぼすべてのSDGsとの関連性を見出すことができる。


Q:SDGsはグローバルなビジョンだが、ローカルレベルでは異なる展開になる。同じ目標を達成するために、地域ごとにどのようなレバレッジをかけるか?


A:農家の畑から国レベルの政策、世界レベルの政策まで、あらゆるスケールで取り組む必要があり、それらすべてが一体とならなければならない。本当の解決策は、国や農場といったランドスケープレベルにあるのだ。

例えば、ガーナでは、農家に携帯電話を提供し、誰もがアクセスできるようにすることが解決策になるかもしれない。携帯電話があれば、次の季節の気候情報を入手し、どの種を栽培すればよいかを知ることができる。携帯電話で保険に加入することは、すでに世界のいくつかの地域で行われている。地域によっては肥料をより多く使うこと、それは別の地域ではより少なく使う実験もしている。

このように、解決策というのは非常に文脈に依存するものなのだ。トレードオフを地域レベルで理解し、解決策を地域レベルで対処する必要がある。


Q:食生活や文化についてはどう? 肉食を控えるべきだとよく言われているが。


A:世界のある地域では、肉食は健康問題と強い結びつきがあり、家畜が地球環境への悪影響の多くを引き起こしている。

しかし、別の地域では、人々は年に3、4回、儀式で肉を食べるだけである。彼らの食文化では過剰な消費は絶対にないし、畜産に依存した生活をしている。そのため、畜産をなくすことはできない。貧困問題に大きな影響を与えることになるからだ。


Q:持続可能な開発を行いながら、90億から100億の人々を養うことができると本当に信じているか?


A:本当にそれが可能だと信じている。まず第一に、多くの発展途上国における生産量は潜在的な可能性を大きく下回っている。食糧生産量を増やすことは可能だが、sustainable intensification(持続可能な集約化)によって行う必要がある。


Q:目標14と15、海と陸の生物多様性についてはどうか?


A:農業は生物多様性に大きな影響を及ぼしている。陸上では、世界の森林減少の70%以上を占め、地球上の土地被覆変化の主な要因となっている。

私たちの多くは、その解決策としてsustainable intensification(持続可能な集約化)を考えている。このアプローチでは、基本的に、より少ないインプットでより多くの生産を行うことができる。森林ガバナンスを改善し、改良農業が森林地帯に広がらないようにする必要がある。


Q:森林破壊の70%は農業が原因だと言ったが、水についてはどうか?


A:農業は、現在使用されている淡水の70%を占めている。さらに、水系に肥料や窒素を投入し、世界の一部の湖では、大規模な腐敗を引き起こしている。肥料は強力な温室効果ガスにもなり得るので、その問題にも関連している。

農業の集約化とより的を絞った肥料の使用によって、これらの問題のいくつかを解決することができる。例えば、中国では肥料使用に対する補助金があるが、実際には肥料を過剰に使用している。肥料使用をたった5%下げるだけで、同じ量の生産、つまり食糧生産を維持することができるのだ。中国では、15億ドルの補助金を削減することができる。

言い換えれば、金融システムと環境システムとの間で、何年にもわたってトレードオフが行われてきたのである。


Q:つまり、経済的なインセンティブを実際に使って、農業に必要な変化をもたらそうということか?


A:その通り。例えば、補助金制度があるが、気候的にも環境的にもあまり賢明ではなく、撤廃されるべきものが多い。補助金であることに変わりはないが、より適切な配置にすることができるだろう。マイクロクレジットのパフォーマンスを向上させることもできる。保険制度を推進することもできるかもしれない。


Q:つまり、突き詰めれば、農業システムを変えない限り、持続可能な開発は不可能だということか?


A:それは間違いない。そのため、10年以内に農業システムを大きく変え、まったく異なる形態の農業に転換しなければならない。


Q:気候変動問題に対応するためには、エネルギーシステムを抜本的に変える必要があることを誰もが知っていることだ。しかし、農業のシステムも変える必要があることを知っている人はほとんどいない。なぜなのか?


A:それはとても残念なことだ。気候に依存しているため、気候変動によって最も影響を受けるのは農業である。農業は温室効果ガス排出量の30%を占めているのだから、それに対処しなければならない。

例えば、米の農家は、航空産業と同じ温室効果ガスの排出量を出している。航空業界は気候変動に対してある程度真剣に取り組んでいるようだが、米の農家はそうではない。例えば、5億人の小規模で高齢の農家である。小さな土地を持つ多くの人々を相手にしている。

民間でこの問題に対処するアプローチのひとつに、大企業がある。例えば、ケロッグ社は米の生産にとても興味を示している。この業界では大きなプレーヤーになる可能性がある。彼らは、ビジネスのやり方を変えようとする点で、多くのリーダーシップを発揮している。



(Katherine Richardson教授のまとめ)

SDGsは世界共通の目標だが、その達成は地域レベルで異なっている。食糧システムの持続可能な変革には地域ごとに異なるアプローチを使うことが必要だ。

社会にとって重要なエネルギー、輸送、市場などのシステムはすべて、SDGsのすべてとは言わないまでも、そのほとんどと相互作用があり、地域によってその展開が異なる。

つまり、SDGsはすべて相互に関連しており、三銃士の精神(全ては一人のために、一人は皆のために)で考える必要がある。そのようにして初めて、私たちが暮らす世界の実際のシステムの文脈の中で思考し、規制し始めることができる。


2022/04/20 20:27

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