来住英俊『キリスト教は役に立つか』(新潮選書)
かねてから、信徒が信仰するキリスト教と、非信徒が知っていると思っているキリスト教は、本質的に乖離していると感じていました。その溝を、丁寧に埋めてくれる名著です。著者は東大法学部卒の神父。文章は知的で、かつ、平易なので、幅広い読者におすすめできます。私は5~6年前からこういう本を作りたくて、いくつかの出版社に企画を持ち込みましたが、宗教の話にフラットに応じられる編集者はたいへん少ないと感じました。その意味で、この本を実現させた新潮社の担当編集者は、市場のニーズを的確に把握して出版ビジネスを実行できる優れた人だと思いました。