いまさらだけど、映画『怪物』
もう二ヶ月近く経ちますが、映画『怪物』を観てきたのでした。
(えっ、時間経つの早すぎません???)
ネタバレせずに感想を書くのがとても難しい作品で、ああでもないこうでもないと考えたあげく、とにかく思ったことをシンプルに簡潔に書くことにしました。
あらすじはこちらの記事に写真や動画付きでわかりやすく書かれていましたので、興味のある方はどうぞ。
https://www.fashion-press.net/news/96110?utm_source=line&utm_medium=social
主人公はだれ、と聞かれると、思わず一瞬考えてしまうのですが、なぜかというとこの物語は、とある三人の人物それぞれの視点で展開していくためです。
シングルマザー。
担任教師。
小学生の男の子。
たとえば複数の人物が、あるひとつの同じできごとを観測したとしても、それを見る人間の視点は同じではなく。そのときの状況判断から、それぞれが異なる印象を抱くのは往々にして起こりうることです。
そして、自分は被害者側だと主張する人間が、それが果たして事実かどうかもわからないような噂話を鵜呑みにし、面白おかしく吹聴することで、自分もまただれかにとっての加害者側に立つ、という立場の反転、危うさも、日常のなかには普通にあって。
タイトルの『怪物』や、物語のなかに出てくる
「怪物だーれだ?」
という印象に残るフレーズから、
「いったいだれが怪物なのか」
とつい考えてしまいますが、実際は
「怪物を生み出すのはだれなのか」
あるいは
「そもそも怪物とはなんなのか」
を問いかけているように感じられました。
実は、映画を観に行く前にレビューをいくつか覗いてみたのですが、わたしが見た時点では、賛否両論、評価は真っ二つに割れていました。
おそらく、その原因は、この映画のラストにあるのではないかと思います。
映画のラストからエンドロールが終わり、劇場内に明かりが灯されるまで、わたしはなすすべもなく呆然としていました。不意打ちを食らったような心持ちで、正直いうと、少し泣きました。
感動したとか悲しいとか、そういうのではなく。
あまりにまばゆく、美しい映像を目の当たりにして、ああこれは、と。
わたしの感じたこと、その解釈が正しいかどうかはわかりません。
この作品のラストは、これを観たひとりひとり、それぞれの感じ方に委ねられるのではないかと思いました。
エンディングは坂本龍一さんの曲でした。
まばゆく、美しい映像からの、心に沁み入るメロディ。
謹んで哀悼の意を表します。