『バイブル・フード・レシピ』第1章完結
昨年8月末から書き始めた『バイブル・フード・レシピ』、入院・手術のため10月半ばに連載をいったんお休みしていましたが、今年の4月末から連載再開し、本日の更新でようやくひと区切りがつきました。
途中、長期休載をはさんだにもかかわらず、最後までお読みいただき、どうもありがとうございました!
コンテスト審査期間も終わったということで、連載再開以降のお話では過越祭や受難節の歌の動画を挿入してみたりと、自由に書きました。
作中の過越祭のパンのレシピ(材料の分量や手順、時間の決まりなど)は、Natzarim Yahshua Family Fellowshipというアメリカの教会が公開しているレシピを参考にして書きました。
このレシピに付記されている注釈がすごくて、聖書に書かれた五つの穀物のうち伝統的に使われていたのはどれか?、18分というタイムリミットはなぜか? などの議論を聖書を引用しながらすごく詳しく書いてあってですね。
ちなみに、そこで提示されていたレシピはフライパンで焼く場合とオーブンで焼く場合があり、オーブンを使う場合は「セラミックピザストーンをオーブンで1時間以上予熱しておくこと(華氏500度で)」と指示されていました。
ピザストーンというのは、ご家庭のオーブンを石焼窯にしてくれる便利アイテムですが、日本人でお持ちのかたは少ないのではと思います。
そのレシピでは興味深い注釈がもうひとつ書いてありました。作中ではマニアックすぎるので取り上げませんでしたが、面白いのでここで紹介しますね。
現在、ユダヤ教徒向けに市販されているマッツァー(過越のパン)は、大きな四角いクラッカーかウェハースのような見た目をしています。この四角いクラッカーは、東京のユダヤ教会の中にあるユダヤ食料品店でも箱入りで買うことができるんです。
でも、作中で作った平たいパンは、四角いクラッカーじゃなくて、柔らかく厚みがあり円形状でしたよね。
マッツァーが四角いクラッカーになったのは、実は歴史が浅くて、1800年代以降のことなのだそうです。
アシュケナジム(民族離散後にドイツ語圏や東欧諸国に定住したユダヤ人)たちが、保存性を高めるため、硬くて薄いクラッカーのようなマッツァーを作るようになったという話でした。
セファルディム(南欧諸国やトルコ、北アフリカに定住したユダヤ人)たちは、昔ながらのレシピ(つまり作中のレシピ)でパンを焼いていたそうで、昔ながらのパンは日持ちしないため、過越祭の期間中、毎日パンを焼いていたのだとか。
過越祭という伝統は今も昔も守られていますが、長い年月を経て、定住した土地の文化にあわせて、過越のパンの形も変化していったという歴史は、面白いなと思いました。
Natzarim Yahshua Family Fellowshipという教会は、メノーラー(七枝の燭台)をシンボルマークにしていて、律法を遵守し、ヘブライ語で礼拝をささげると書いてあったので、アメリカにあるユダヤ教会だと思ったんですよ。
しかし、よくよく説明書きを読んでみると、「創世記から黙示録まで、聖書を完全に信じる」、「イエスをメシアとして信じる」とはっきり書いているんです。
最初、ユダヤ教会だと思っていたので、「え!?」と思いましたね。
もしかして、この教会、Messianic Jew(メシアニック・ジュー)の集まりなのかも……? と思い至り、めちゃくちゃ驚きました。
この教会はアリゾナ州とミズーリ州の二か所で活動しているそうです。
当然のことですが、ユダヤ教徒にとって聖書とは旧約聖書のみを指します。そしてイエスはラビの一人にすぎないと考えており、メシアとして認めていません。
一方のメシアニック・ジューは、ユダヤ教徒としてのアイデンティティを持ちながら、イエスをメシアと信じるユダヤ人たちです。
アメリカ国内では17万5千人~25万人程度、イスラエルでは1万人~2万人のメシアニック・ジューが暮らしているそうです。