『頭狂ファナティックス』に登場するコンプレックスの名前の元ネタ紹介

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五十鈴凪子(いすずなぎこ)

コンプレックス:『クロイツェル・ソナタ』

 本来はベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第9番の題名なのだが、ここではそれを由来にしたレフ・トルストイの中編小説を念頭に置いている。

 男女の恋愛について、トルストイ一流の論理構築を展開していく小説なのだが、最終的に「結婚は悪である」とまで断言するため、極論の感は否めない。

 トルストイはこの小説に限らず、たびたび極端な論に走ることがあり、批判の対象となってきた。

 とはいえ、論理の展開の巧みさは他の作家の追随を許さないものであり、小説として世界屈指の出来である。

 ただし、その論理の極端さから、トルストイの中編小説の最高傑作は「イワン・イリノチの死」の方に譲っている。

源次郎助(みなもとじろすけ)

コンプレックス:『バック・イン・ブラック』

 オーストラリアのロックバンドAC/DCの代表曲から。AC/DCの最高傑作と見做されている。

 AC/DCからインスピレーションを受け、「バック・イン・ブラック」と名付けられた作品はいくつかあるが、ここではAC/DCを念頭に置いている。

 この曲は二代目ボーカル、ボン・スコットが急性アルコール中毒により死亡したことを受け、三代目ボーカル、ブライアン・ジョンソンとヤング兄弟が作詞作曲したもの。

 この曲を収録したアルバム『Back in Black』は世界で4900万枚のセールスとなり、世界で三番目に売れたアルバムとなった。

 AC/DCは男臭いパフォーマンスと曲調、歌詞を売りにしているが、この曲はボンへの追悼の意味もあり、象徴的で芸術性の高い出来となっている。

 筆者はAC/DCについて語ると長いので、ここで擱筆とする。

森重義生(もりしげよしお)

コンプレックス:『ミリオンダラー・ベイビー』

 アメリカの映画監督クリント・イーストウッドの作品から。

 イーストウッドは今作で第77回アカデミー賞作品賞、監督賞、主演女優賞(ヒラリー・スワンク)、助演男優賞(モーガン・フリーマン)を受賞した。

 イーストウッドは映画監督としてだけでなく、映画俳優、映画プロデューサーなど幅広く活躍しているため、非常に人気が高い。その作品も『許されざる者』『ミスティック・リバー』など多くのヒット作がある。

 『ミリオンダラー・ベイビー』について言えば、「アメリカン・ドリーム」をメイン・テーマに置いた堅実な作りをしているのだが、政治や宗教のデリケートな部分にも多少なりとも触れていたため、論争を巻き起こした。

『カッコーの巣の上で』が許されて、これが許されないのはなぜだ

間宮蘖(まみやひこばえ)
コンプレックス:『モダン・タイムス』
 イギリス出身の映画監督チャールズ・チャップリンの作品から。
 ”喜劇王”チャップリンの代表作と見做される映画。チャップリンはイギリス出身だが、アメリカのシカゴを活動拠点としていた。
 この作品を撮影したころから、チャップリンの作品には政治的な傾向が表れるようになる。『モダン・タイムス』のあとに撮られた『独裁者』『殺人狂時代』ではその傾向が顕著であり、チャップリンがアメリカから国外追放される原因となる。
 コメディ映画や平和主義で知られているチャップリンだが、その生涯は波乱に富んでいた。

赤藤詩音(あかふじしおん)
コンプレックス:『月は無慈悲な夜の女王』
 アメリカのSF作家ロバート・A・ハインラインの代表作から。
 第一部に登場した、詩音の妹である梨音と同じくハインラインの作品から名前を頂戴した。
 日本では『夏への扉』でハインラインの名前が知られているが、アメリカ本国ではこちらの方が代表作と見做されている。
 ただハインラインの作品でも特に長いので、読んだ人は意外と少ないかもしれない。
 原題は「The Moon Is a Harsh Mistress」だが、邦訳の『月は無慈悲な夜の女王』が名訳であるため、サブカルチャー界隈ではオマージュされることが多い。
 例を出せば、原作:岡本倫、作:横槍メンゴ「君は淫らな僕の女王」など。

千ヶ谷絹人(ちがやきぬひと)
コンプレックス:『ガルガンチュアとパンタグリュエル』
 フランスのユマニスト、作家のフランソワ・ラブレーの作品から。
 仏文学者のあいだでは、フランス文学の最高傑作はこの作品か、マルセル・プルースト『失われた時を求めて』と相場が決まっている。
 近代文学の礎を作った、とする見方もあるが、小説としては内容がぶっ飛んでいるため、40年後に登場したミゲル・デ・セルバンテス『ドン・キホーテ』を近代文学の祖とする方が個人的には正しいように思える。
 日本では渡辺一夫訳のものが有名。もはやラブレー=渡辺と認知されているほどである。
 しかし宮下志朗訳も十分に原文の味を再現できていると思う。

切田善嗣(せったよしつぐ)
コンプレックス:『バナナフィッシュにうってつけの日』
 アメリカの作家J・D・サリンジャーの短編小説から。
 サリンジャーは『ライ麦畑でつかまえて』によって、現在でも世界中の若者から多大な支持を集めている。
 「バナナフィッシュにうってつけの日」は短編集『ナイン・ストーリーズ』に収められた作品の一つ。
 一応、作中でバナナフィッシュについての説明があるのだが、具体的にそれが何を暗示しているのかは不明。
 サリンジャーは多くの翻訳が出ているが、日本だとやはりサリンジャーは野崎孝訳、みたいな風潮がある。

桑折良蔵(こおりりょうぞう)
コンプレックス:『ペイント・イット・ブラック』
 イギリスのロックバンド、ローリング・ストーンズの代表曲から。
 ローリング・ストーンズは日本でも絶大な人気を誇るため、にわかの私よりもファンに話を聞いた方が早いと思う。
 代表曲は数え切れないほどあるが、一応挙げるとするならば、「(I Can't Get No) Satisfaction」、「Sympathy for the Devil」、「Start Me Up」、「Jumpin' Jack Flash」あたりか。
 特に「(I Can't Get No) Satisfaction」は多くのアーティストにカバーされている。個人的には、オーティス・レディングがカバーしたものが好き。
 これ、「Paint It Black」の話してないな。

立畑照葉(たてはたてりは)
コンプレックス:『鎖に繋がれた犬のダイナミズム』
 イタリアの未来派の画家ジャコモ・バッラの作品から。
 絵画・音楽におけるイタリア未来派、文学・映画におけるネオレアリズモは芸術の観点から言えば、重要な地位を占めるのだが、なぜか日本では知名度が低い。
 日本では未だにモダニズム、ポストモダニズムの紹介が遅れている気がしてならない。
 イタリアのモダニズム運動は結果的にイタリア・ファシズムに繋がったため、言及がしにくい、と見做す評論家もいる。
 個人的にはただ単にイタリア語とその文化を伝える権威が少ないだけだと思う。

一重柳子(ひとえりゅうこ)
コンプレックス:『ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー』
イギリスのロックバンド、ビートルズの曲から。
もはやビートルズの説明など、私がする必要があるのだろうか。
ジョン・レノンとポール・マーカットニーによる作詞作曲、いわゆるレノン=マーカットニー体制により、数々の名曲を生んだ。「Strawberry Fields Forever」もその一曲。
ビートルズの代表曲とされる、「Let It Be」「Yesterday」「Hey Jude」もレノン=マーカットニー名義だが、実は作詞作曲ともにポールが一人で行った。
ちなみにストロベリー・フィールドとは救世軍が運営した戦争孤児院のこと。

也則允彦(なりのりまさひこ)
コンプレックス:『ボーン・トゥ・ラン』
アメリカのロック・ミュージシャン、ブルース・スプリングスティーンの代表曲から。
ブルースは「ボス」のあだ名で知られている。しかし日本では「We Are The World」の二番のサビですごいしゃがれ声を出している人、と言った方が伝わるかもしれない。
ブルースはそのしゃがれ声とともに、パフォーマンスも特徴の一つとなっている。なのでそのど派手なパフォーマンスを見るために、是非とも映像つきで。
サービス精神が旺盛で、カバー曲も頻繁に歌う。しゃがれ声から繰り出される、ビートルズ「I saw her standing there」、AC/DC「Highway To Hell」は一度聴いていただきたい。

犬童影千代(いぬどうかげちよ)
コンプレックス:『パルプ・フィクション』
アメリカの映画監督クェンティン・タランティーノの作品から。タランティーノはこの作品で1994年のパルム・ドールを取った。
しかしタランティーノは芸術よりもエンターテインメントよりの映画監督だと認知されており、さらにはこの作品自体、下品な演出があったために授賞式ではブーイングが飛んだ。
そのB級映画感から、日本では多大な人気がある。おそらく視聴層はマーティン・スコセッシ『タクシードライバー』、デヴィッド・フィンチャー『ファイト・クラブ』のファンと被っていると思われる。

毒島慈(ぶすじまめぐむ)
コンプレックス:『目=気球』
フランスの画家オディロン・ルドンの作品から。
19世紀の画家だが、当時の主流であった印象派とも象徴派とも違う独自の作風を確立した。
気持ち悪い作品を書くことが多かった。またアメリカの作家エドガー・アラン・ポーの作品を好んでモチーフに取った。
ちなみに押見修造の漫画『惡の華』ではルドンの作品から多くのモチーフを取っている。

天目小桜(てんめこざくら)
コンプレックス:『若きウェルテルの悩み』
ドイツの大文豪ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの作品から。
ゲーテの作品のなかでも、『ファウスト』に並び有名な作品。構成は登場人物の手紙を連ねるという、書簡体小説の形式を取っている。
発売当時からベストセラーであり、ウェルテルを真似て自殺する人間がいるほどだったという。
日本でも青春小説の代表作、という立場を占めているが、ゲーテの作品のなかでも突出した出来栄えかと聞かれると微妙なところ。
やはり詩劇『ファウスト』に比べると、クオリティは落ちる。

吾妻奈純(あずまなずみ)
コンプレックス:『ライト・マイ・ファイア』
アメリカのロックバンド、ドアーズの代表曲から。
1967年にリリースされた曲だが、当時としては異例なことに演奏時間が七分と長い。またサイケデリックやジャズが融合しており、ロック全盛期において異彩を放った作品の一つ。
ドアーズのボーカルであるジム・モリソンはジミ・ヘンドリクス、ローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズ、ニルヴァーナのカート・コバーンと同じく27歳で死んだため、ロック界の伝説となった。
本編ではコンプレックスの名前が登場しないのだが、設定としては決まっているために、一応記しておく。

常盤七星(ときわななほし)
コンプレックス:『美しき水車小屋の娘』
オーストリアの作曲家フランツ・シューベルトの歌曲集から。この作品は歌曲集であり、「美しき水車小屋の娘」という曲はないことに注意。
「冬の旅」「白鳥の歌」に並び、シューベルトの三大歌曲集とされる。
20曲からなり、演奏時間は60分ほど。
物語としては、一人の旅人が水車小屋の娘に恋をするが、狩人に奪われてしまい、その嘆きを川に語りかけ、死を決意する、というもの。いわゆる青春譚の一つ。
作者はロック・ミュージックには精通しているが、クラシックはあまり聴かないので、実は何を書けばいいのかわからない。

守門恒明(しゅもんつねあき)
コンプレックス:『重力の虹』
 アメリカのポストモダン作家トマス・ピンチョンの代表作より。
 ピンチョンの代表作はやはり『重力の虹』だが、識者によると最高傑作は『メイスン&ディクスン』。
 90年代以降、ノーベル文学賞の有力候補とされているが、その作風から受賞はありえないとされていた。しかし2015年から審査員が世代交代した結果、ボブ・ディランやカズオ・イシグロが受賞したため、今後は予測ができなくなった。
 『重力の虹』が全米図書賞(アメリカで最高の文学賞)を取ったとき、ピンチョンは友人のコメディアンを授賞式に送り込んで、マスコミを混乱させた逸話がある。

埜切秋姫(のぎりあきひめ)
嘘のコンプレックス:『ダンサー・イン・ザ・ダーク』
 デンマークの映画監督ラース・フォン・トリアーの作品から。2000年に第53回カンヌ国際映画祭にてパルム・ドールを受賞。
 主演にアイスランド出身の歌手ビョークを起用したことで話題になった。
 ジャンプカットの多用や作中に何度もミュージカルが挿入されるなど、特異な技法が目立つ。そのために賛否がわかれる作品でもある。
 主演のビョークとイギリスのロックバンド、レディオヘッドのボーカルであるトム・ヨークのコンビで作詞作曲をした主題歌「I've seen it all」は映画音楽でも屈指の評価を受けている。
 一貫して凄惨な作風から、後味の悪い映画の話になったとき、必ず挙げられる作品の一つ。

第一のコンプレックス:『フルメタル・ジャケット』
 アメリカの映画監督スタンリー・キューブリックの作品から。「フルメタル・ジャケット」は日本語に訳せば、「完全装甲弾」になるか。
 前半部のハートマン軍曹と「微笑みデブ」の話が有名。しかし後半部のスナイパーとの対決も戦争映画としては珍しい構図であり、見所となっている。
 ラストシーンで主人公たちの小隊が「ミッキーマウス・マーチ」を歌いながら行進するあたりは、キューブリックの性格が良く出ている。

第二のコンプレックス:『地獄の黙示録』
 アメリカの映画監督フランシス・フォード・コッポラの代表作から。1979年度のパルム・ドール受賞。同時にギュンター・グラス原作、フォルカー・シュレンドルフ『ブリキの太鼓』も受賞しており、この年はカンヌ国際映画祭史上でも稀に見る激戦になった。
 コッポラは二度のパルム・ドールとアストゥリアス皇太子賞を受賞しており、受賞暦だけならば、オーソン・ウェルズとスティーヴン・スピルバーグを超える。
 映画の内容はジョゼフ・コンラッド『闇の奥』を原案にしているとのことだが、実際はまったく別物になっている。『闇の奥』ではそもそもアフリカの奥地が舞台だし、ベトナム戦争も起きていない。

清美一暁(きよみかずあき)
コンプレックス:『私の名は赤』
 2006年度のノーベル文学賞を取った、トルコの作家オルハン・パムクの代表作から。トルコ語の作品。
 本作は二度邦訳されており、『私の名は紅』『私の名は赤』と表記が異なる。拙作では新訳になる『私の名は赤』を採用した。
 新訳はハヤカワepi文庫から宮下遼訳が出版されている。
 旧訳は藤原書店から出版されているが、絶版になっており少々手に入れにくい。

大室綴(おおむろつづり)
コンプレックス:『バベルの図書館』
 アルゼンチンの作家ホルヘ・ルイス・ボルヘスの短編小説から。ボルヘスは1960年代のラテンアメリカ文学ブームにおいて、ガブリエル・ガルシア=マルケスと並び、最大の作家と見做されている。
 ボルヘスは生涯で短編小説しか書かず、「バベルの図書館」はその中の代表作。短編集『伝奇集』に収録。『伝奇集』は岩波文庫から鼓直訳が出ているので手に入れやすい。
 ちなみにボルヘスが編纂した短・中編集にも「バベルの図書館」の名が冠されている。

プロフィール

株式会社アウフェンギ 代表取締役
1993年生まれ。千葉県千葉市出身。



好きなアニメ:「がくえんゆーとぴあ...

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