今日で辞めさせてください!
事務所から階段で上がってきてすぐのところで作業していた。
朝から、ひそひそとお局様と取り巻きが話している。これはなんかあるな。と思ってたら、朝礼が終わって、お局様が、早く早くといわんばかりに取り巻きの手を取って事務所に降りて行った。
おさらいしておこう。
私の作業位置は、事務所から階段で上がってすぐ。事務所は、扉なんかない、ただ、応接セットがあるだけの2階フロアである。
当然、建物の構造は熟知しているのだろう。そのはずだ。何せ、何年も務めてるはずだからな。
ああ、でも、何年住んでても、左京区がどこにあるかも、左京区そのものを知らないやつだからなw 知らないかもなw
とぎれとぎれに聞こえてくる言葉の断片を繋ぎ合わせれば、意味の理解ぐらいできる。ざっくり、要約すると、
「かたっ苦しい言葉遣いの人とは一緒に仕事なんかできん」
それを、社長が一所懸命なだめている。
なんか、社長に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
歳なんか関係ない。
会社は経験がものをいうのだと、社会経験が浅いワタクシは、そう思ってるわけです。なので、先に入社してる人は、いくつであっても先輩なのです。
先輩は、それだけの経験があるのです。だから、敬意を払うのです。つまり、敬語です。
それが、徐々に付き合いを深くしていけば、お互いに気心が知れてくるわけです。
この人はこういう人だから、ここまでは許されるかな。
この話題は避けたほうがいいかな。
これを言ったら、きっとウケてくれるだろう。
そうして、言葉も態度も砕けてくるのです。
それを!
入社一日目からやれ! と言われても、無理だろ。
普通、それをやったら、ただの礼儀知らずだぜ?
さて。
一寸の虫にも五分の魂はあるのです。
すぐそこにいる営業さんに、犠牲になってもらいました。
「ここで作業したら、ダメでしたか?」
「ん? どこでもいいよ」
「いや、なんかちょっと、聞いちゃいけないかなって思って」
「?」
「以外に、下の声って通るんですね。いや! 聞いてるわけじゃないですよ! 聞こえちゃうから、移動したほうがいいかなって‥‥‥」
「‥‥‥」
「もしかして、ここ(加工部)、人足りてます?」
「いや、人は、足りてないね。やってって言われてすぐできるような仕事じゃないから‥‥‥」
と、ここで、電話。会話、終了。
まあ、こんなもんか。
よしよし。針とは言わなくても、礫の筵ぐらいにはなったかな。
ごめん。関係ない営業さんに嫌な思いさせて。だがしかし。この話は社長に通るだろう。ふっふっふ。
あたしゃ、正面切って立ち向かうことはしないんだよ。メンタル豆腐だからな。
強い言葉でガンガンやられると、泣いちゃうんだよ。
次の日。午後からお休みをもらって、面接に行き、その次の日。
「今日で退職させてください」
一瞬、言葉に詰まる社長。そして、
「ほんと、申し訳ない」
こちらが恐縮するほど、謝ってもらった。
社長の管理不行き届きってことになるのかもしれないけど、結局、お局様の人間性に問題があるのだから、如何ともしがたい。
お局様を切れば、仕事が立ち行かないし、雇用し続ければ、新しい人が皆辞めていく。
気の毒ではあるけど、思い切ったことをしないと、これは、もはやどうしようもない問題。
でもさ。
今日言って、今日退職がokって、あたしよりもお局様を選択したんだよな。
ふつうは、もう少しなんかありそうだし、いろんなことを想定してあれこれ考えて臨んだんだけど、肩透かしではあった。
あたし、そんなに期待されてなかったんだなぁ。