効率と質
母が現役工員だったころ、コンベアの前に座り、流れてくる部品を組み立てるうしろで、ストップウォッチを握りしめた主任がウロウロしていたらしい。
数年前に連続テレビ小説「ひよっこ」に出てきたそんなシーンを、「同じだ」と懐かしがっていた。
現代、そんな上司がいたら、労基が出張ってくる案件である。
けど、確かに、効率というのは、仕事をするうえで大事なことで、これがいいか悪いかで、進捗が大いに変わってくる。
一時間かかって、着物の検品を3枚やるのと5枚やるのでは、6時間後、1.5倍ぐらいの差が出てくるのですだよ。
昔と違って、かなり個人の裁量にまかれている効率は、それが故に、出来高の差が大きい。
つまり。
お前と一緒にすんな(怒
海外縫製から上がってくる着物の検品は、輸入元の国によって、二人一組で二手に分かれている。これを、一元化したい上司は、出来るだけ輸出先を分散させるようにしているが、元々が、別々の部署だったことが災いして、なかなか、打ち解けられない。
別に、仲が悪いわけではない。こっちの仕事はこっちで、そっちの仕事はそっちでやって。というスタンスなのだ。
だから、いくらこっちの仕事が押して着ても、向こうから手伝おうか、とは、ならない。が、私が入社してから、大分、潮目が変わって来たらしい。私の業務範囲が、両方に食い込んでいるのも幸いして、融和が進んできたとでもいうか。
私の相方が、娘さんの出産で、1週間ほど休むことになった。パートだからね。そこらへんは結構融通が利く。
私ももうあれから1年経つし、少しは仕事の流れも覚えてきた。ざっくり見ても、現状のままでも、さほどお手伝いを必要とはしないし、自分一人でできるぐらいの検品量だと判断した。
だから、相方にどうしても納品しなければならない分を聞いて、あとは、その都度、切り替えていけばいいか。と、算段していた。ら。
「あ」
と、声が聞こえて「ごっそり減ってる!」と、本来のアタクシの割り振り分のお仕事を撤収されてしまった。
あれ? と思ったら、あっちチームを主導している若いお姉ちゃんが来ていった。
「直ししていいよ」
「?」
「優先して、って言われてた直し、してください」
「えー、直し、終わったんで」
「え。あー、じゃあ、そっち、検品してもらっていいですよー」
相方さんと顔を見合わせた。とりあえず、来週着荷の納品分を、と、棚の隅であれこれ教わっているついでに、しゃがみこんで、そっと耳打ちしあった。
『あたし、今日の仕事、もうないんですけど』
『箱、結構いっぱい入ってた分は?』
『わかんないけど、撤収されちゃった。今日、あたし、あと一時間、踊っとけばいいですかね』
『あー、なんか、勝手なことするよねー。こっちも、することないよ』
多分、あっちチームは、結構直しが多いので時間もかかる。だから、そのつもりで、気を回してくれたんだと思う。けど、わたしから言わせれば、そんな時間がかかるなら、口を閉じて仕事しろや( ゚д゚)<≪
今でさえ、仕事がなくて、直しの仕事をもらってるぐらいなのだから、相方が休んでその仕事が回ってくるぐらいが丁度いいんだよ。
そっちのペースとこっちのペースは違うんだよ!
そこんとこ、ヨロシクだよ!
世露四苦とか言っとく?