乳がん

副作用から少し離れた話題です。

乳がんになったとき、家族が受けるショックのこと。
お母さんが乳がんになって、見た目が変化したり、治療でつらそうにしていたら、子どもたちはショックを受ける。友人の子どもは、ショックのあまり学校に手ぶらでいってしまったとか、あとは泣きだしてしまった子とか。
「大丈夫だよ」
と、母は、子を、勇気づけようとする。
そしてちょっとだけ申し訳なく思ったりすることもあるかもしれない。
「病気になって、ごめんね」という気持ち。
たいたいの母親は、病気をジョークで吹き飛ばす。そういう母親がまわりに多かったです。母ちゃんは強いね。
どんなスーテジでグレードのがんであろうと「子どもがいるから私は絶対に死なない」と、母たちはみんなそう言う。私のまわりの友人たちはみんなそうでした。

そしてパートナーたちもショックを受ける。これは何種類かにわかれるのだけれど「医者に対して怒りだす」とか「どうしても一緒に治療方針を聞きたいと診察室に入ることを希望し、細かく検討する」という人と「聞きたくない。見たくない。信じたくない」「たいしたことない病気なんだろう」とシャットアウトして目をそらす人などが、まわりにいました。平易で、淡々と、受け止めるということがわりと難しく、乳房がなくなったり髪がなくなったりと、見た目も変化するのもあって、ナーバスになってしまうのかもしれないですね。
それでも時間の経過と共に、普通に病気の人を、普通にパートナーが支えるという、普通の状態へとゆっくりと変わっていく。おそらくそのあいだにパートナーたちはいろんなことを考えてくれているのだなと思います。大人なので、子どもみたいに泣けないし、子どもみたいに母ちゃんに空元気だけ出してもらってる場合じゃないしね。

さらに親は。
親は子どもみたいに泣いたり、パートナーみたいに怒ったり。大変ですよね。なかには私の母親のように、電話で伝えたら「え、じゃああんたハゲるんだ。いつからハゲルの。もうハゲてるの? かわいそうだね。ハゲ」と即座にハゲについて質問してきた人もいますが……。毛なの? 私ががんになって、やたら毛にこだわったのは遺伝なの!?
うちの父はちょうど前立腺癌の治療中だったので「オレの癌のほうが強い!」と言いだして「うん。お父さんの癌は世界一だよ。癌選手権第一位だよ」と答えたけれど、強い癌ってなんだよ。でも笑ったので、いい。あれが父の精一杯の私に対しての励ましであったのだろう。
強い癌細胞を持つうちの父はその後、前立腺癌も完治し、元気に過ごしています。

本人も大変だけど、家族もみんな大変だ。


傷ついて悲しんでいらっしゃる皆さんのなかで、時間が、そっと、優しく、流れていくことを願っています。
家族たちもみんな大変なんだ……。ね。

2017/06/24 13:03

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プロフィール

佐々木禎子(ささき ていこ)
作家。
札幌出身・東京と札幌を行ったり来たりしています。
1992年雑誌JUNE「野菜畑で会うならば」でデビュー。

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