乳がん

放射線からちょっと離れます。

手術痕と引き攣れなどについて。

自分の身体に突然生じたダーツ。
もともと深く考えないたちなのもあり「たたまれた箇所、小さいけれど、洗うの大変だな」とか「ダーツだな。人工の肉襞だな」とか「ちゃうちゃうとかフレブルのお顔の一部みたいだな」とか考えながら手当をし、爛れが治ってからふと思う。

「固い。一部の肉がとても固い」

手術痕っていうんですかね。なんなんですかね。
色も放射線で焼けてしまって抜けないし……なんですが、どっちかっていうとこの肉の固さは手術のあとの癒着ですかね。

医師は特に指示をださない。

ある日、やっとそこに思い至って聞きました。

「これって、放置しといたらどうにかなるのですか。肉は柔らかくなったりするのですか」

「それ、術後からマッサージとかして柔らかくしないと、固いまま固定するよ」

「え……。ええええ。そうなんですか。はやく言ってよ!!」

医者は、治療計画でいっぱいいっぱいなので、健康に関係のない「美容」の観点のお話やアドバイスは一切しませんよ!

というわけで軟膏を処方してもらって、その日からせっせと自分の手術痕にマッサージをほどこす私。でもあまり強くマッサージすると、その横の「なくなってしまったリンパ」が腫れてしまうのだ。
左リンパがなくなったので、循環させてくれるものがなく、ないのにそこにリンパ液が集うので、脇腹が腫れる。そして、左手全体がだるくなり、肩も痛くなる。

「適度」なマッサージのコツに至るまではなかなか大変です……。

で、いまの私。
ダーツ的な部分はそのままですけど、肉質は少し柔らかくなってます。肉質とかいうと「肉塊の表面にローズマリーとローリエの葉を散らしてからマリネ液体につけ込みよく揉み込んで一日浸してからあらためて胸に収納」したみたいですが、もちん違います。普通にただマッサージしていますが、まあ、術後の該当箇所の「肉が固い」というのを「肉が固い」以外に表現できん。肉が固いと困るとがあるかどうかも正直わからん。固いままでもいいのかもしれません。「お好みで」みたいな?

ダーツになった引き攣れについては、これ、治すとしたら美容外科なんだよね。
私は、そこに価値をあまり感じられずそのままなのですが、もし自分がもっと若かったら悩んだし考えるだろうということだけは、わかる。

顔の美醜とか、肉体の美醜とか、そういうものに価値を見いだすかどうかの問題は、いろんな要素をはらんでいて、難しい。
ただ、若いということは、私にとっては「若い」だけでコンプレックスを抱えている時期だ。自分に自信を持って進んでいける無敵の若さを誇る人たちはもちろんいらっしゃるのでしょうが、私にとって「若さ」はそうではなかった。
いまの自分は、では自信があるのだろうかというと「人は中味だ」という部分での自信を持っている。中味だろうと思っているから、皮膚にダーツができていたら「あらまあ」とおもしろがれるだけの余裕は、ある。治そうとは思わない。
でも若かったら、この引き攣れはコンプレックスのひとつになっただろうなと思う。
別に誰に見せるわけではなくても、だ。

生きていくうえでコンプレックスになるものならば、治してしまったほうが未来のためにいいのだろうとも思う。
治そうとすると「モデルでも芸能人でもないのに」みたいに言われることもあるんじゃないかなと想像したりもする。でも治したほうがその人にとって生きやすいなら、治せばいいじゃないのかなーって思います。

これ、もうちょっとこの「術後の美容整形」については、安くなったりしないのかねえとも思う。

乳がんに限らず、病気についての体験記というのの主流は「泣かせ」であり、綺麗で悲しい体験記がおもに出版されていたりしますが、それ以外の人たちの、ささやかに「生きていく」ための知恵やら収支決算の会計的なものなどをまとめてくれる「なにか」があるといいのになーと思うのでした。


というようなことを手術痕から考えたりもしています。

が、とにかく、術後の肉のマッサージはお早めに!
医者は「いまからマッサージしなさい」とか「肌がざらざらしているのもすぐに手当したら一年でちゃんとつるつるになるよ」とかは、だいたい教えてくれないはずだ。

2017/07/26 09:39

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プロフィール

佐々木禎子(ささき ていこ)
作家。
札幌出身・東京と札幌を行ったり来たりしています。
1992年雑誌JUNE「野菜畑で会うならば」でデビュー。

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