ミステリの欠片

001


 硫酸で文字を溶かしながら思う。どう考えても、もっと弱い酸にすべきだった。そもそも、ろくに知識もないのに酸で溶かそうなどと考えたのがいけなかったのだ。しろうと考えで「刺青が消えないなら溶かせば良い」なんて考えるから、こうなる。

「中指の文字は溶かすけど、薬指の指輪は本人を特定できるよう溶かさないように……」

 ソーセージのような指に食い込んだ安物の指輪は、偽物の宝石を光らせる。私は手首を掴んだトングをあれこれ動かした。

 手首から先は、もう溶けきって、無い。

2017/09/06 14:24

コメント(-)ミステリの欠片

コメントを受け付けない設定になっています。

プロフィール

更新中のテーマ

完成テーマ

完成テーマはありません

アーカイブ

ページトップへ