ミステリの欠片

003


 呪文というのは言葉の呪いだ。当たり前のことだが、魔法の類を信じない人でも、言葉の力とやらは信じざるを得ないだろう。

「お前の言葉は、呪文だ」

 そう言われることは、目の前の女にとって、喜びになるのだろうか。

 口先だけで数多くの男を騙し、破滅させてきた女が、今、俺の前、扉の向こうにいる。

「俺は、呪文なんかにかからない」

 俺は自分で呪いをかけるようにつぶやくと、取調室の扉を開け放った。

2017/09/06 16:42

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