乳がん

おじいちゃん先生から紹介できる病院をいくつか教えてもらい、場所がわかって徒歩でいける病院を選択し紹介状をいただきました。
あらためてその病院に予約をし「また最初から」スタートです。

紹介状もらって通院するからといって検査結果がまるごとスライドして「ではその地点から」というわけではなく「あらためて当院でも正式な検査をさせてください」になるのが面倒でしたがそこは仕方ないですね。

どういう理屈によるのかの理解はしてないけど「そういうものだ」ならそれはそれでよい。従う。

予約して検査して検査結果を見ての診断結果。

「ほぼ良性腫瘍でしょう」
「でも念のため検査もしておきましょう」

おじいちゃん先生の診断と同じです。

ただし検査方法に選択肢が出ました。

「穿刺(せんし)吸引細胞診にしますか」
「日帰り手術で腫瘍を切除してそのついでに細胞診にまわしますか」

ゆっくり考えてくれていいと言われたのですが、そもそも私は「部分麻酔で意識がある状態で手術をしてみたいものだ」と思って病院をかえたのです。

即答です。

「日帰り手術で腫瘍とっちゃってください」

そのまま手術の日を決めて血液検査をしたりまあいろいろと手術のためのことをこなして手術当日。

手術室がやたら明るいこととソフトで軽やかな音楽がずーっと流れてることと現れた担当医がいきなりアロハシャツ着てたことが衝撃でした。

「なんでアロハなんですか」
「患者さんがリラックスしてくれるように執刀医は全員アロハシャツなんです」
「へえーーーーーーーーーー」

どうなん!?
リラックスする!?
大きな怪我とか病気で執刀医ずらーっとアロハシャツで現れたら「大丈夫なのこのお医者さんたちにまかせて……」と迷わない!?

とはいえフフンフンフンフフンフンみたいな感じで手術は終わり、顔の上には布が載せられてて状況はよくわかんないけど血がどびゅっどびゅっと飛んできて飛沫が私の顔の上の布とかビニールを濡らすし先生の声は聞こえるしカチャカチャと金属の音もきこえるけど部分麻酔なので特に痛くもないという良い経験を得た。

「取れましたよー。ほら。つるっとして丸いでしょー。綺麗な形だねえ」

切除した腫瘍をいきなり見せてくれるご機嫌な医師に

「綺麗な形なのかどうかの判定基準が欠片もわかんねーよ」

と思ったのだが「そうですねー」と答えた。

今後、腫瘍を見る機会がどれほどあるかわからないけれど、私のなかでの「綺麗」の基準はうちの胸から生まれた可愛い「しこりちゃん」ということになり、そこを基準にして「腫瘍として形がいまいちですね」とかあらゆる腫瘍に対してなにかしらの評論と感想を加えていきたい。
素人腫瘍評論家にちょっと毛が生えた程度にはもの申せる立場にいきたいですね。
せっかくなので。


その日私は財布を家に忘れ、手術時間が午後最後だったため、会計がしまる時間がひしひしと迫ってきていて「すみません。財布忘れました。家戻って取ってくるのでちょっと待っててください。逃げませんし戻ってきますし」と伝えて往復かるく走った。なんで部分麻酔が抜けきってない術後すぐにランニングしてんだろうハアハアと思いながら少しずつ電飾の灯火が点いていく町並みと暮れていく空の狭間をおばさんは走ったんだよ! あんなにちゃんと走ったのこの十年以内であのときくらいじゃないだろうか。

その日は無事に会計をすませて終了です。

次、細胞の検査結果がでるよーという日程で予約を入れて診察室に入る。

「佐々木さん、検査の結果、あなたの腫瘍は悪性でした。
 乳癌です」


えー!?

「綺麗な腫瘍だったのにですか」

「はい」

綺麗ってなんだかどんどんわかんなくなってますけど、医者たちからの刷り込みもあり、うちのしこりちゃんは私のなかではとても綺麗で美人ということになってしまっていたので「綺麗で悪いって悪女かよ」というキャラが立ちました……。

そんなわけでここから治療がはじまるわけなんですが、その前に。

「良性だと思って腫瘍を取るだけの手術したのですが、悪性だともっと周囲のガン細胞ごと切除しなくてはならないので今度は全身麻酔で入院してもらって手術をすることになります」

再手術の決定により、仕事のスケジュールのやりくりの連絡をばたばたとはじめたような気がするなあ。このあたりあまり記憶になくてメモとかもとってなかったけど、まあそんな流れだったはずです。
仕事先に伝えるかどうかは考えたけど、伝えないで「〆切りのばしてください」とか「この時期は不在で連絡がとれません」っていうのをうまく言える気がしなかったので、にごさずそのときに仕事していた相手には「乳癌だったんで。でもまずしばらく死にそうにもないのでそこは安心して。余命とかそういうのもついてないですし元気です」みたいに言ったような……。
おおざっぱな私の性格からしてそんな報告だったのではないでしょうか……。


関係ないけど「穿刺(せんし)吸引細胞診」はとても痛いらしいですね……。
その検査が痛いということだけはあちこちのブログで読みました。
乳癌の検査はマンモもそうですが痛いのが多いよね。
もっと痛くなく検査できるようになるといいですね……。

2017/06/12 12:45

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プロフィール

佐々木禎子(ささき ていこ)
作家。
札幌出身・東京と札幌を行ったり来たりしています。
1992年雑誌JUNE「野菜畑で会うならば」でデビュー。

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