ツイッターに流した宣伝文転載「子買双紙」
突然母親から引き離されたキヨは、為す術もなく呆然と自動車に揺られていた。そんな彼女を森の陰から見つめるのは、青毛の馬にまたがった黒衣の青年――
人里離れた洋館に連れてこられたキヨは、生まれて初めて洋服を着せてもらった。
お似合いよ、と囁く如月の細く長い指が、キヨの肩に絡み付くーー
いよいよキヨは都路の一人娘、華子と対面する。純白の寝具に包まれたお姫様のような華子に、キヨは気後れを覚えてしまうが――
月光の下、佇む黒衣の青年は、挑戦的な目付きをキヨに寄越した――
見るもの聞くもの初めてづくしのキヨを、優しく根気よく教え諭す華子。巣の中の雛のように二少女は寄り添い、心を通わせてゆく――
日向ぼっこに興じるキヨと華子の優しい時間。お互いが出会うまで誰とどんな遊びをしていたか、微笑ましいはずの話題がキヨの心を曇らせる――
華子のもとからキヨを奪い去る、黒衣の青年。安全な所で全てを話す、と彼は言うが――
キヨを拐った怪青年の行く手を阻んだのは、如月だった。助けが来た!と安堵するキヨを余所に、怪青年と如月は剣呑な会話を始める。まるで旧知の仲のように――
如月の豹変も、自動車の後部座席に載せられたもののことも、考えまいとキヨは決める。何より大切なことは、華子との約束なのだから――
「君は、華子の為なら何でもすると言ったじゃないか」――都路は、地下室にキヨを閉じ込めて責めたてる――
如月をやり過ごした、黒衣の青年とキヨは地下室から脱出する。「二階へ」と彼はキヨの手を引いた――
「何人目だ」――華子の元へ行こうとするキヨの耳に入った、黒衣の青年のぽつりとした声。如月へと向けられたその問いは、キヨの足を止めるに十分な響きを持っていた――
黒衣の青年は背景を語りだした。期せずしてそれは、キヨの胸の内の深い深いところまでを顕にしてしまう――
二人の悪い大人達は警官達が連れ去った。華子も無事に保護されて、警察の自動車に乗せられる。空っぽになる館。それを黒衣の青年と共に見守っていたキヨは――
華子が目覚めたのは、病院のベッドの上だった。お伽噺は断ち切られども、物語はまだ続く――
夜、おじさんの運転で華子とキヨは新しい住まいへと向かう。野次馬達から身を隠すために――
隠れ家に来て十日余り。ようやく華子は、父親の罪について考えを巡らせることが出来た――
おかみさんが持ってきてくれた一冊の絵本。文字を覚えたキヨは大喜びで、それを華子に読み聞かせるのだが――